トランプ大統領の対中報復開始!日本はどうする?【前編】
https://youtu.be/rr2mI57hFfs
(5月19日収録)
幸福実現党党首 釈量子
◆米トランプ政権が進める対中制裁
今回は、トランプ政権が中国に対して新型コロナウイルスの感染拡大の責任を取らせるために進めている対中政策についてお話をしたいと思います。
5月5日、米国のムニューチン財務長官は、「トランプ大統領が情報機関と共に中国の新型コロナウイルスに関するデータを精査している。そして中国を罰するための選択肢を検討している」と述べました。
そして、5月半ばトランプ政権が「対中報復の3連打」を繰り出しました。
(1)「金融制裁」の動き
これまで、米中は関税や輸出の禁止などの貿易分野で「つばぜりあい」を行ってきましたが、アメリカはいよいよ資本規制に踏み出しました。
5月13日、アメリカの「公務員年金基金」が中国株への運用を無期延期すると発表しました。
アメリカには「連邦退職貯蓄(FRTIB)」という連邦職員や軍人の年金運用の基金があり、2017年に利益を拡大するため今年2020年半ばから中国株をより多く買う方針を決めていました。
しかし、直前に延期することになったというのが今回の方針決定です。
例えば、昨年からマルコルビオ上院議員のような対中強硬派は、中国の監視カメラ大手「ハイクビジョン」(杭州海康威視数字技術)や軍需企業などに公的年金を投資するのはいかがなものかと強く主張していました。
当初の予定では500億ドル(約5兆3000億円)を中国株に運用することになっており、そのまま運用していたら中国株に約50億ドル(約5,300億円)のお金が流れたはずでした。
(2)中国への断交宣言予告
5月14日にはトランプ大統領が「FOXニュース」に出演して爆弾発言を行いました。
「中国とのすべての関係を断ち切ることもあり得る」と。これは「断交宣言の予告」ともれるような発言だったと思います。
その時、「中国企業がアメリカの会計基準の採用を義務付けられれば、上場先を米国以外の市場に移す公算が大きい」と発言し、これもかなり踏み込んだ発言でした。
中国企業はアメリカの企業に比べ情報開示が甘く、これまで問題視されていたのです。
中国の企業は財務諸表やガバナンスなど、中国共産党との結びつきが明らかになるのが嫌なこともあるのか、これまでアメリカの会計基準に厳密には従ってこなかったのです。
トランプ大統領の発言は、ずばりウォール街から中国企業を締め出すのが狙いです。
もちろん、決定したわけではありません(5月19日現在)が、選択肢の一つに入っているのは間違いありません。
(3)ファーウェイの生命線を断つ
翌日15日も大きな動きがありました。
米中貿易戦争の主戦場であるハイテク分野で、ついに「ファーウェイ」(HUAWEI)の生命線を断つ動きがありました。
アメリカ商務省が「ファーウェイがアメリカの技術を活用して海外で半導体を開発することを制限する」と発表しています。
トランプ政権は、ファーウェイを「エンティティリスト」、つまり「禁輸措置対象のブラックリスト」に入れ、米国企業、あるいは海外企業でもアメリカ製品が25%以上含まれた製品を輸出することを禁止しました。
ところが抜け道があり、ファーウェイは台湾の半導体受託製造会社であるTSMC(台湾セミコンダクタ・マニュファクチャ・カンパニー)などに生産を委託して、台湾で製造した半導体を自社製品としてスマホやタブレットなどで使ってきました。
台湾のTSMCは、アメリカの技術やソフトを利用して製造された半導体製造装置を使って、ファーウェイ向けの半導体を生産していましたが、今回これもダメだということになりました。
ファーウェイはこれを予想しており、中国のシンセンを本拠地とする子会社のハイシリコンという会社で半導体の自前化に力を入れてきましたが、技術的にはTSMCのような最先端のレベルまでは到達していません。
今回の新しいルールの導入で、ファーウェイに半導体を供給するためには、アメリカ商務省の事前の許可が必要になるので、TSMCはついにファーウェイからの受託を停止しました。
さらに、アメリカは極めて戦略的な取り組みもしています。最近、台湾TSMCは、アリゾナ州に、建設費120億ドル(約1兆3000億円)の工場の計画を発表しました。
TSMCの半導体は、ステルス戦闘機F-35にも使用されているのですが、なんとコロナウイルスよりも小さい超微細な製造プロセスの半導体を製造する予定です。
TSMCレベルの半導体製造工場は、台湾以外ではアメリカが初めてです。
アメリカは中国への技術流出を防ぐとともに、自国内に経済と安全保障のカギとなる分野の供給網を確立しようとしているのです。
ちなみにTSMCレベルの最先端半導体を製造できるのはサムスンぐらいで、今後中国がサムスンを取り込むのか、韓国の動向も注目されます。
(つづく)