自称「世界最大級の緊急支援」より本気で中小企業を守れ!【後編】
幸福実現党外務局長 及川幸久
◆アメリカの膨大でスピード重視、「100%政府保証」の支援策
前編で述べたエイミー・ライトが経営するコーヒーショップの雇用を支援したPaycheck Protection Program (PPP)は、アメリカのコロナウイルス支援・救済・経済安全法(CARES法)の中心的柱でした。
そのために確保した予算枠は莫大で、法律が通った3月27日当初の予算額は、3,490億ドル(約40兆円)です。
この法律が決まってすぐに募集が始まり、予算はあっという間になくなりました。
さらに、4月には3,100億ドルが追加になり、合計6,590億ドル(約70兆円)の融資枠が設けられました。
この融資の最大の特徴は「100%政府保証」です。普通、銀行の融資は必ず審査があって企業の財務内容によっては融資が通らない場合があります。
これが政府保証になるとほぼ通るのです。緊急だからとにかく通すというのが政府保証です。
最終的に5月時点で5,122億ドル(約54兆円)、440万件の融資が成立しています。総額70兆円の融資枠をつくりましたが、申込者も減ってきているので54兆円分でほぼ終わりのようです。
3月に最初に借りた企業は返済を始めています。見事にニーズをカバーしたのです。
もちろん申し込んでもなかなか融資がおりないなど問題もありました。過去のアメリカの年間融資は5兆円ぐらいでしたが、いきなり54兆円もの融資をやったので無理はありません。
◆「100%政府保証」がない日本の支援策
これと日本を比較してみると、日本は自称「世界最大級の緊急支援」で、売りは「無利子・無担保の融資」ということです。
例えば、「日本政府金融公庫」の新型コロナウイルスの特別貸付です。申し込みから3~4週間で融資するスピード重視のものです。これは非常にいい内容だったと思います。
しかし、面談が必要で予約が入るまで待たされ、相談が77万件ありましたが申し込みが49万件、融資は約9兆円でした。
最終的にローンが通った企業は31万件、融資は5.1兆円でした。アメリカの54兆円の10分の1です。
もう一つ「信用保証協会」のセーフティネット保証4号があります。もともとあった信用保証協会のセーフティネット保証をコロナウイルスにも適用したものです。
良い点は、金融機関と取引がなかった中小企業や、主に個人事業主・フリーランスの方々も使えるという点です。
問題は、売り上げが減っている証明が必要です。その証明は市町村でとらなければなりません。その証明書をとるのに2~3週間、もっとかかるという話もあります。
相談ベースで約46万件ありましたが申し込みは32万件、承諾されたのは24万件、融資は5.3兆円。結局、申し込んでも通る場合と通らない場合があるわけです。
それはなぜか。実際には安倍総理が最初に言っていた無利子・無担保無は1.3兆円分しかないのです。
結局は、中小企業が特別融資をもらおうと思っても通らない。しかもすごく時間がかかって待たされ、通ってもいつお金が入るかわからない。これが現状です。
問題は、日本は「政府保証」がないからです。アメリカの PPPは「100%政府保証」です。
アメリカで54兆円分も融資がされた理由は「政府保証100%」で、申し込んだところはほとんど通っているのです。
日本も11年前のリーマンショックの時、「政府保証100%」の緊急支援をやったことがあります。その時は申し込んだところはほとんどが通っています。今回は、それをやっていません。
◆「事業を継続させる支援」が必要
「ゴーイングコンサーン」という言葉があります。「企業の事業が継続すること」という意味です。
「事業を継続させること」が大事な考え方です。
幸福実現党の創設者、大川隆法総裁は、近刊書『松下幸之助の霊言 大恐慌時代を生き抜く知恵』で、大恐慌時代になるかもしれない、その中を生き抜く知恵として非常に重要なことを言っています。
「トランプさんは、ウイルスはどこかで止まるから、その時に経済インフラがなかったら、もう終わりだと思っている。企業はゴーイングコンサーン、続けることが大事。」
「潰さないでください。もう1回作るのはすごく大変だから。銀行が融資をすれば、まだ潰れないでもつものが、放置すれば銀行も潰れ、会社も潰れ、ゼロになる。この判断を間違えたら終わり。」
この判断をするのは為政者、政府です。
日本の自称「世界最大の緊急支援」、それよりも本気で中小企業を守ることをあらためて政府関係者の皆さんにお願いしたいと思います。
2次補正、3次補正、枠は何でもいいのですが、アメリカの PPP を一つモデルにして、「政府保証」の経済支援をあらためて検討していただけないでしょうか。
執筆者:及川幸久