コロナ禍で迫りくる世界規模の食糧危機?【前編】
幸福実現党党首 釈量子
◆コロナ感染拡大で予想される食糧の危機
今回のテーマは、今後予想される食糧危機とその対策をお伝えしたいと思います。
現在、中国発の新型コロナウイルスが世界に広がっており、これ自体、人類にとって大変な脅威ですが、いま別の危機も迫っています。
4月1日、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)の3機関の事務局長が次のような共同声明を発しました。
「各国の新型コロナウイルス封じ込めのための行動が、食料供給に影響を与えないよう、輸出制限などの措置を取らずに協調する必要がある。」
「食料品入手の可能性への懸念から輸出制限のうねりが起きて国際市場で食料品不足が起きかねない。」
◆未曾有の食糧危機の要因:(1)コロナで農業に従事する労働者たちが働けなくなる
こうした声明が出された背景として考えられるのが、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるために、国境や都市を封鎖して人の移動を制限したことで、農業分野の人手不足が深刻になっていることです。
米国では、野菜や果物の収穫などはメキシコなどからの外国人労働者に大きく依存しており、この1年間に25万人の外国人に、農業に従事することを認めるビザが発給されていました。
ところが、コロナ騒動で、米国ではビザの発給が停止され、外国人の労働者がアメリカに入国できなくなってしまいました。
欧州でも東欧からの出稼ぎが止まり、農作業に支障が出ています。
日本でも、事実上の働き手になっていた「外国人技能実習生」が、日本に戻って来られないために、収穫が滞っているという悲鳴が上がっています。
◆未曾有の食糧危機の要因:(2)バッタの襲来(蝗害)
次にバッタの襲来で、蝗害(こうがい)と言われます。
今後の食糧危機を引き起こすものとして、労働者不足だけでなく、東アフリカ、アラビア半島周辺で発生した「サバクトビバッタ」が前例のない規模で大量に発生し、食糧を食い荒らしているという実態があります。
増えた理由ですが、2018年から本年まで、東アフリカでサイクロンが発生し、広範囲で雨が降ったことで緑化、豊富なエサの供給源となったことが直接的な原因とされています。
バッタは草だけではなく、人間の食糧も食べ尽くしながら移動し、成虫となったら卵を産んで、増殖していきます。
東アフリカでは、ケニアやエチオピア、ソマリアで前例のない発生があり、幾つかの群れがウガンダにも移動していると言われており、ソマリアでは「国家非常事態宣言」が出されています。
現在、バッタはパキスタンやインドに到達し、特にパキスタンでは壊滅的な打撃を受けて、食糧価格が高騰、全土に緊急事態宣言を発令し、国際社会に緊急援助を要請しています。
さらに、報道によると、「第1波」の次の「第2波」が繁殖地から飛び立って、既にウガンダなどアフリカ東部で壊滅的な被害をもたらしており、十分な対策をしなければ、第1波の20倍にもなるとの指摘もあります。
対策として各国は農薬を散布しているのですが、神奈川県ぐらいの面積で飛んでいるとされる大群にはとても追いつきません。
そして、このサバクトビバッタがいま中国に迫っています。
◆未曾有の食糧危機の要因:(3)ヨトウムシの大量発生
更に、中国では「ヨトウムシ(夜盗虫)」という蛾の幼虫で、極めて危険な農業害虫が大量に発生し、深刻な被害が出ています。
昼間は物陰に隠れていて、夜になって活動し、一晩で作物が食べられてしまうと言われており、既に被害面積は九州と四国を足した面積よりも大きい6660平方キロメートルにも達しています。
このヨトウムシはトウモロコシを食べますが、既に農薬に対して抵抗性が付いていて、農薬が効かないという話です。
このヨトウムシ被害の後、もしもサバクトビバッタの大群が中国に入ってきたら、中国で生産している穀物に非常に大きな被害が出ることは明らかです。
◆未曾有の食糧危機の要因:(4)食料生産国の輸出規制
以上のような労働力不足、害虫等の大量発生の理由から、各国は自国民の食糧を確保するために「輸出規制」を設け始めています。
世界最大の小麦輸出国のロシアは国内供給を優先し、4~6月の穀物輸出量に制限を設けており、ウクライナも小麦の輸出制限を設定しています。
更に、世界最大のコメの輸出国であるインドも、コメや小麦の輸出を制限していますし、世界3位のコメ輸出国であるベトナムも、3月下旬に新たなコメ輸出の契約を停止しました。
冒頭にお伝え通り、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)、WTO(世界貿易機関)は、過度な輸出制限をしないように各国に求める共同声明を出していますが、今後どうなるか分からないのが実態です。
(つづく)