30万給付解説――本当に大切なのは雇用を守ること【後編】
https://youtu.be/aRPJLGxldFY
(4月の7日収録)
幸福実現党外務局長 及川幸久
◆30万円給付の基準――世帯主の収入
前編で、一世帯当たり30万円給付の以下2つの条件を説明しました。
(1)「住民税非課税世帯」
(2)「月収半減以下で、かつ住民税の非課税レベルの2倍以下」
さらに、この給付金案の根本的な問題としてある基準が「世帯主の収入」です。
夫婦共働きの場合は世帯収入があるはずですが、あくまでも世帯主の収入だけを基準にしています。
例えば、奥さんが正規の仕事で収入が保障されていたとしても、世帯主のご主人が非正規やバイトで収入が低く、2つの条件を満たしていれば、給付金の対象になるという不思議なものです。
いったい一世帯あたり30万円給付の根本にある考え方が全くわかりません。
◆アメリカの緊急支援策
ここで比較したいものがアメリカの緊急支援策です。
トランプ政権と米議会は、緊急で総額220兆円という超大型の緊急援助法案を3月末に決めました。アメリカの GDP10%規模です。
総額220兆円の中に日本と同じような給付金があります。その給付金は、世帯ではなく1人当たり1200ドルです。12万円か13万円くらいです。
夫婦の場合でしたら2400ドル、24万円か25万円ということになります。つまり一世帯あたりにすると、24万円か25万円です。
日本の一世帯あたり30万円給付より少ないですが、日本政府はこれを意識したのでしょう。アメリカの経済政策よりも日本の方が上だということを示したかったのだろうと思うのです。
ただ条件が日本とは全然違います。
給付の条件は、年収が7万5000ドル以下です。例えば一人だけの年収で800万円くらい、それから夫婦二人で共働きの場合は、年収は2倍ですが、それでも対象になります。
年収800万円のいわゆる中間層がみんな対象になるわけです。日本とは全く対象が違います。
さらに子供がいたら子供1人当たり500ドル。約5万円が加算されます。
この支給は、2月27日に法案が決まり、3週間以内に対象者全員に行うことになっています。日本とは全然スピード感が違います。
日本は今までいろいろと対策案を言っていながら、4月の後半までかかり、実際に支給は5月中旬くらいだと言っています。日本は全く緊急になっていません。
さらに、アメリカはこのウィルスの危機がその後6週間以上続いたら2回目の支給を同額で行うということも入っています。
しかし給付金があっても、会社から解雇されてしまったら給料がなくなってしまいます。そういう人たちはすぐに失業保険の申請をします。
この失業保険に関しても、今回の緊急支援法案の中では、週600ドルを追加で上乗せしています。月に2400ドルで約25万円ぐらいです。これが今の失業保険にプラスされるわけです。
そのようにアメリカは徹底的に中間層以下の生活を守ろうとしている考えが良く見えます。
◆日本政府の給付金の考え方
2009年の時の定額給付金もそうですけども、日本政府が給付金の考え方は、辛辣な言い方ですが「国民の足元を見てニンジンや飴で釣れる」と思っているような考え方です。
日本のような1回限りの中途半端な給付金では、多くの人々は「生活保護」の方がいいと思うでしょう。
アメリカの支援策であれば、職を失った人たちは「失業保険」の方に行きます。
失業保険と生活保護はセーフティネットという意味では似ていますが、日本の支援策では多くの人は仕事ができなくなって、「生活保護」の方に走ります。
言わば福祉国家の方向に向くしかないと思います。
◆給付金で大切なことは、「雇用を守ること」
現金給付も含めて、どういう考え方で政治をやるべきなのか。ここで大事な基本的な考え方があると思います。
二宮尊徳の「勤勉の精神」、日本的な「資本主義精神」です。
日本の国家のリーダーたるものは、国民に勤勉の精神、勤労の意欲を起こさせることが一番大事なことだと思います。
この国の国民が、この勤勉の精神、勤労の意欲を失ってしまったら国が滅びます。
国が滅びる方向に持っていくようなリーダーシップは間違った政治です。
そのために、今回の30万円給付で大切なことは、「雇用を守ること」です。
そういう意味で経済の原理には倫理が必要です。この倫理が経済政策の中にいなければ国が滅んでしまいます。
今まさに、日本はコロナによって滅ぼされるのではなくて、間違って政治のリーダーシップによって滅ぼされるかもしれない危機の中にあります。
執筆者:及川幸久