成長戦略インサイト(5)コロナショックにどう立ち向かうか
幸福実現党成長戦略部会長 西邑拓真
――5日、日中両政府は、習近平国家主席の国賓来日を当面延期すると発表した
新型コロナウイルスの感染拡大の状況を見れば、当然の判断とも言えますが、中国政府による強まる覇権主義、人権弾圧に鑑みて、本来は日本として、「中止する」と断言すべきだったでしょう。
また、安倍晋三首相は同日、感染拡大を防ぐための新たな水際対策として、中国、韓国からの入国者に対し、指定場所での二週間の待機を要請するなど、実質的な入国規制を実施することを表明しています。
特に中国に関しては、習氏の国賓来日や、中国経済に大きく依存する日本経済への配慮などがあったのでしょう。米国は2月上旬より、中国全土からの入国禁止措置をとっていたことを考えても、日本政府の措置は、遅きに失したと言わざるをえません。
――6日、自民、公明両党は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための、新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案を了承した
これは、既存の「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の対象に、新型コロナウイルス感染症を新たに加えようというものです。
改正法に基づいて、首相が「緊急事態宣言」を行えば、対象となる地域の都道府県の知事は、学校や興行場の使用を制限したり、催し物を中止するよう指示することができるようになります。
政府はこれまで、全国の小中高校などへの臨時休校、大規模なイベントの自粛を要請するなどしてきましたが、特措法の改正により、これらの措置に法的根拠を持たせることができるようになるわけです。
ただ、緊急事態が宣言されれば、上記の点や、臨時の医療施設の開設に向けて土地や建物の収用が可能になるなどの点から、個人の権利に一定の制限が課されることへの懸念もあります。
一般論として、安全保障や危機管理の観点からは、国民の生命・安全を確保するため、一定の範囲内で行政府に権限が集中するというのはやむをえない面もあるでしょう。
ただしこれは、政府や自治体が適切な対処を行うほか、その際、むやみに私権の制限が行われることなく、これが最小限に留められてこそ正当化されるものと言えます。これには、万全な情報収集体制が整っていることなどが前提となるでしょう。
今後、緊急事態の宣言や対象地域で然るべき対処を行うべき事態に至る場合、政府や自治体は、迅速な対応が必要となるのは言うまでもありませんが、それに加え、私権を制限するとの性格を有する以上、明確な論拠と情報に基づいた適切な判断が求められると思います。
――また、10日にも、政府による緊急対策第2弾が打ち出されるとされている
中国製部品の供給滞りによるサプライチェーンの破綻や、国内消費の減退など、感染症の拡大が日本経済に需給両面で大きな影響を及ぼしています。
中小企業の資金繰り支援や生産拠点の国内回帰の後押しなどについて、政府として万全を期す必要があるのは言うまでもありません。
また、3日、FRB(米連邦準備制度理事会)が緊急利下げを行ったことで現在、為替相場は円高に振れていますが、これと感染症拡大による外需の縮小と併せ、日本の輸出関連企業が今後一層、大きな苦境に陥らないとも限りません。
こうした意味でも今、日本政府ができることとして、適切な内需拡大策を図ることは不可欠でしょう。
総務省は6日、1月の2人以上世帯の家計調査で、1世帯あたりの消費支出が前年同月比3.9%減(物価変動を除いた実質値)となったことを明らかにしました。
マイナスは4か月連続となりますが、これは、昨年10月の消費増税により、感染症の拡大の影響が本格的に出る前の段階で既に、国内消費が大きく冷え込んでいることを意味します。
今、増税と感染症のダブルパンチが日本経済に与えるダメージを考え、前回号(2月21日号)でも申し上げたように、消費税の標準税率を8%に戻す、ないしは5%に引き下げることが肝要と考えます。