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政調会ニューズレターNo.18「首相による消費増税表明について」【概要版・後編】

http://hrp-newsfile.jp/2018/3452/

幸福実現党 政務調査会

*ニューズレター全文は、党HP(https://info.hr-party.jp/2018/7564/#_No18)に掲載しております。

安倍首相は、先月月15日臨時閣議で2019年10月に消費税率を8%から10%へ引き上げることを改めて表明しました。

今回は、増税と連動して行われる経済対策について、ポイントを整理します。

◆経済対策の罠

安倍首相は増税表明の際、「あらゆる政策を総動員し、経済に影響を及ぼさないように全力で対応する」と述べ、増税が個人消費に与える影響を抑えるための万全の対策を急ぐよう指示しました。

今回、経済対策として幼児教育・保育の無償化のほか、軽減税率の導入、中小店舗でキャッシュレス決裁を行った時のポイント還元、住宅購入時のポイント還元・住宅ローン減税の拡充などが検討されています。

このような一連の経済対策が行われるのであれば、「何のための増税なのか」というのが率直なところでしょう。

期間限定の経済対策については、駆け込み需要とその後の反動減を少しでも抑えようという狙いがあると思われますが、消費増税の影響は中長期に及ぶため、増税前後の短期的な現象が経済に与える影響を少しでも抑えようとするのは筋違いと言えます。

いずれにせよ、バラマキによる増税や複雑な税制の導入は、経済活動の自由の領域を狭めさせるほか、経済の歪みにもつながっていき、国の発展の阻害要因そのものとなります。

やはり、小さな政府・安い税金を心掛けるとともに、シンプルで公平な税制の構築を志向すべきです。

以下、補足点を列挙します。

★軽減税率

増税で標準税率が10%になるのに対し、軽減税率は、酒類や外食を除く飲食料品、定期購読の新聞については税率を8%に据え置くとする制度です。

「スーパーやコンビニで買う食料品を持ち帰れば軽減税率が適用されるが、イートインコーナーなど店内で飲食する場合には適用されない」といった例があるように、どのような商品や消費形態が軽減税率の対象になるかが非常にわかりにくいと指摘されています。

そのほか、標準税率、軽減税率のどちらを適用するかを恣意的に判断できるようになるという意味で、政府は新しい権限を手にすることになり、この点にも非常に大きな問題を見出せます。政府による「恣意性」を排すには、消費税は一律5%に戻すのが得策と言えるのではないでしょうか。

また、消費税は事務手続き上、非常に複雑な税であると言われています(注2)。現在、軽減税率に対して準備を行っている中小企業は約8割に留まるとされていますが(注3)、来年、税率変更に加えて軽減税率が導入されることになると、企業は一層の負担を強いられることになります。

同様の制度を実施している欧州では、すでに課題が大きいとして制度を廃止すべきとの議論もあるようです。今、日本があえて軽減税率を導入する合理的な理由は見当たりません。

(注2)企業が行うすべての取引に消費税がかかるわけではないため、企業は消費税の納入に際しては、仕入れ、売上含めた全取引を「課税取引」「非課税取引」「不課税取引」に分類しなければならない。企業にとって多大な事務的負担を要している。

(注3)日本商工会議所「中小企業における消費税の価格転嫁および軽減税率の準備状況等に関する実態調査(第5回)」(2018年9月28日)より

★キャッシュレス決裁時のポイント還元

商店街の小売店など資本金の少ない中小店舗を対象に、クレジットカードなどのキャッシュレス決済を行った際に、期間限定で2%のポイント還元を行うとする支援策も検討されています。

ここには「キャッシュレス経済」の普及促進の狙いも垣間見られますが、クレジットカードや電子マネーなどに対応するレジを導入するための企業側の費用負担は大きいものです。政府が設備投資を行う企業に補助を行うとしても、そこに血税を使う正当性はあると言えるでしょうか。

キャッシュレスになじみのない高齢者などを考慮して「プレミアム付き商品券」を発行すべきとの意見も政権与党にはありますが、これも本質的な議論とは言い難いものがあります。

★防災・減災対策

増税による需要喚起策の一環として、防災・減災対策に向けたインフラ整備費用が、第2次補正予算案、2019年度当初予算案に計上される見込みとなっています(注4)。

わが国では、高度経済成長期に建設されたインフラが「使用期限」を迎えており、修繕・補修の必要に迫られていますが、これまで、社会保障の財政予算が拡大する中で公共投資に対する予算が削減される傾向にありました。

防災・減災対策などをはじめとするインフラ整備に対して積極的な姿勢がとられていることについては評価できますが、インフラは国の資産になるほか、経済成長にもつながるものであることから、その整備に向けては増税実施の有無にかかわらず、国債発行をためらうことなく積極的に実施すべきと考えます。

(注4)今月15日には、西日本豪雨への対応など、今年相次いだ災害からの復興関連の歳出を中心とした第一次補正予算(9,356億円)が閣議決定されている。

(終わり)

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執筆者:webstaff

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