「健康・病気予防」と、テーラーメードな医療保険のあり方を考える
幸福実現党・青年局部長(兼)HS政経塾部長 吉井としみつ
◆かつても「メタボ健診」で医療費削減を目指した
医療政策においても、「予防」に重点を置くことで健康を増進して、「医療費の伸びも抑制」しようという政策が徐々に進められています。
2006年の小泉政権下でも、いわゆるメタボ健診が始まりました。生活習慣病を予防することで、医療費を2兆円抑制することを目指していましたが、これは実現できませんでした。
メタボ検診の受診率が低い場合は、健康保険に対してペナルティを課すことができなかったこと、そして、日本人は肥満率が各国と比較して低いこともあり、「そもそもメタボ検診の指標に妥当性があるのか?」ということで、この改革は進みませんでした。
「何をもって病気の予防とするか」「健康の指標とするか」については、なかなか決めきれないことが現状の課題といえます。
◆健康維持推進に向けての事例
データ収集と分析をすることで、健康維持に効果的なサポートをしようという取り組みもあります。
例えば、厚生労働省では「予防・健康づくりインセンティブ推進事業」のプロジェクトでは、レセプト・健診データの分析により健康分布図を作成することで、「非肥満だが高リスク者が多いという集団の特徴」を把握して、保険加入者の健康維持に役立てようという事例もあります。
【参照】厚生労働省「予防・健康づくりインセンティブ推進事業」 データヘルス計画推進シンポジウム(http://pari.u-tokyo.ac.jp/event/201603/hpm/1850/report)
◆「これが健康の指標」と決められるのか?
2015年度の法改正を受けて始まった、健康で医療費の利用が少ない人を優遇する「インセンティブ制度」の具体的な成果についてはこれからですが、この方向性は医療費の適正化に向けても必要なことだと思います。
ただ、国として「これが健康の指標」と決めきれるかといえば、様々な健康法が出ている今、極めて難しいのではないでしょうか。
医療保険の適用範囲も広げ続けることはできません。
むしろ、国としてのサポートは最低限に絞り込み、公的医療保険の適用範囲を限定し、追加で、その方のライフプランに応じた民間の医療保健を選ぶ流れを検討するべき時かもしれません。
◆個人の生き方に応じた医療保険
今のまま医療費を抑制できない状態が続くと、国の財政としてどうしようもなくなり、突然、「医療保健の適用範囲を縮小します」ということにもなりかねません。
これこそ、一番困るパターンです。
公的医療保険の負担は軽くする代わりに、保険適用範囲を狭める。
追加の選択肢として、民間の医療保険を選ぶ。
「病気の予防」や「健康の増進」と合わせて、医療保険制度のあり方にも踏み込んでいくことが、本当に安心して子供たちにもバトンタッチできる医療政策のためにも必要ではないでしょうか。
そして、身体の健康だけではなく、「生きがいのある仕事」など、生涯現役で心身ともに健康で、誰もが生きがいを持てる社会を目指すべきだと考えます。