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田中角栄氏の『日本列島改造論』を読み直す【1】

文/HS政経塾第二期卒塾生 曽我周作

◆田中角栄氏の『日本列島改造論』の特徴

昨今、田中角栄氏を題材とする著書がベストセラーになるなど、田中角栄氏に改めて注目が集まっています。

田中角栄氏といえば『日本列島改造論』が有名でありますが、そこでは一体どのようなビジョンが描かれていたのでしょうか。

『日本列島改造論』の特徴として、まず一つ目に挙げられるのは、東京などの大都市への過密を地方に分散させようというビジョンを提示しているところです。

それは「都市とくに大都市の住民を住宅難、交通戦争、公害から解放する」という意思の表れでもあったでしょう。

そして「国民がいまなによりも求めているのは、過密と過疎の弊害の同時解消であり、美しく、住みよい国土で将来に不安なく、豊かに暮らしていけることである」)とし、田中角栄氏は都市における過密も、地方における過疎も人々にとって苦しみになっていると考えました。

特に都市部の大気汚染の問題や、水質汚濁、電力需給の逼迫、車社会でのひどい渋滞、公園の少なさ、木造密集地の危険性、地価の上昇と狭い住宅の問題等、様々に指摘しています。

田中角栄氏は当時の都会での生活を人間的で豊かな生活だとは考えられなかった部分があったのでしょう。また、過疎による地方の将来の不安も指摘しています。

◆田中角栄氏が考えた「移動時間の短縮」

田中角栄氏は、そこで都市と地方の距離を縮めることをもって、都市に集中せざるを得ない状況を解消しようと考えました。

「産業や人口の地方分散の障害となるのは、人びとの心理的な距離感であり、情報伝達の落差である。しかし、航空網の整備、全国新幹線、高速自動車道の建設、情報ネットワークの形成によって地域間の時間距離が縮まれば、それも解消する。」

「九千キロメートル以上にわたる全国新幹線鉄道網が実現すれば、日本列島の拠点都市はそれぞれが一~三時間の圏内にはいり、拠点都市どうしが事実上、一体化する」

ここで述べられていることのなかには、私たち幸福実現党が考えている移動時間の短縮をはかる「交通革命」の思想が含まれています。

(もちろん幸福実現党としては交通革命を、単純に「地方への分散」を目的としているわけではありません。)

◆新幹線網の「未来ビジョン」

例えば田中角栄氏は同書の中で当時から見た新幹線網の「未来ビジョン」を提示していますが、いまだにその計画は完成していません。

現在の新幹線網と、田中角栄氏の『日本列島改造論』で示された新幹線網の構想を比べて見ても明らかなとおり、現在整備されている新幹線は「網」のようにはなっておりません。

太平洋側、特に太平洋ベルト地帯はそのメリットを享受していますが、日本海側はまだまだ中途半端な整備状況です。

田中角栄氏は「人、物、情報の早く、確実で、便利で、快適な大量移動」が可能となることが大切で「効率的な輸送手段があれば、工場と市場との距離は大きな障害とはならない。(中略)航空網の整備、全国新幹線、高速自動車道の建設、情報ネットワークの形成によって地域間の時間距離が縮まれば、それも解消する。」と考えました。

◆高速道路網の整備

そこで考えられたのが、上記の新幹線網の充実であり、また高速道路網の整備です。

田中角栄氏が示したビジョンと、現在整備されてきた高速道路網は非常に似ています。40年ほど前につくられたビジョンが、今やっと日の目をみてきたわけで、先見性を感じるところですし、ビジョンの大切さを改めて感じます。

しかしこの新幹線網の整備も、高速道路の整備も現状としては非常に中途半端な形でしか完成しておらず、まだまだ改善すべき点があります。

新幹線網に至っては、40年前に建てられたビジョンが、いまだに「夢の未来ビジョン」のままです。

◆空の交通網の充実

今後、田中角栄氏の列島改造論を参考に、空の交通網の充実も加え、さらにバージョンアップした「未来の構想」を立て、その実現を図るべきでしょう。

もちろん日本の強みとして、太平洋ベルト地帯に直線状に大都市圏が連なることの強みを認識し、それを活かす方向で繁栄を創りだすべきです。リニアの建設もこの日本の強みをさらに強化することにつながるものです。

しかし、日本海側の過疎の問題にも同時に想いを馳せなければなりません。

また観光立国を目指すにあたっても、国際空港から地方都市への「距離」を縮める必要があります。魅力ある地方の観光都市へのアクセスが向上を果たすことが非常に大切だと思います。

◆「距離」「時間」を縮める交通革命

日本中の都市の魅力を高めるものこそ、「距離」「時間」を縮める交通革命です。

地方都市としては「ヒト・モノ・カネ・情報」の集中する大都市とのスピーディーなアクセスを可能にすることで、時間的距離の短縮によって地方都市の魅力を引き上げることになります。

一方大都市としても、自らの都市圏の人口集積や、資本集積などが進むことになり、都市としても魅力が増すことになります。

特にサービス産業など、大きな人口集積が必要な産業においては、アクセス向上は非常に大きなメリットを産みます。

いずれにしても、交通革命の必要性を説き、具体的な構想を示したことは田中角栄氏の政治家としての大きさを感じるところです。

田中角栄氏が明確に意識していたのは、「ヒト・モノ・カネ・情報」という経営資源にあたるものの重要性だと考えられます。

この付加価値の源泉である経営資源の移動速度を上げることは経済成長にとって非常に重要であり、今後の日本の経済成長にとっても見落とせない視点だと思います。

そが 周作

執筆者:そが 周作

政務調査会 都市計画・インフラ部会長・HS政経塾第2期卒塾生

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