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台湾人の不安と希望に満ちた新たなる船出

文/幸福実現党・兵庫県本部副代表  みなと 侑子

◆2016年 最初の革命 台湾にて

台湾において総統選挙が1月16日に行われました。

民進党の蔡英文氏が大勝し、国民党から民進党への8年ぶりの政権交代が決まりました。蔡氏は5月の政権交代時に、台湾初の女性総統となる予定です。

◆「台湾人」としての意思決定

この度の民進党の勝利には、台湾人意識の高まりがあると言われています。

台湾の政治大学選挙研究センターによれば、台湾住民の自己認識調査において、「自分は台湾人である」と考える人間が年々増えており、現在は全体の59%になっています。

「自分は台湾人であり中国人である」と考える人は34%、「自分は中国人である」と考える人は3%しかいません。

民進党はこの台湾人意識を前面に打ち出し、「我是台湾人(私は台湾人です)」のキャッチコピーを何度も使いました。中国にすり寄る国民党を批判する言葉が台湾人なのです。

特に若い世代は、2014年におきた「ひまわり運動」を通し、中国の意図がよく分かっていました。

台中サービス貿易協定を結べば、出版や印刷に関わる分野に中国企業が進出可能になります。そうなると検閲や偏向がおきて台湾の言論の自由がなくなってしまう。

これは経済的な問題だけでなく、台湾という国の存続に関わる重要な問題なんだ、と大学生が答えてくれたのです。

事実、香港においては、中国共産党を批判する書籍や新聞を発刊する出版社社長や作家・ジャーナリストらが数年前から暴漢に襲われたり、行方不明になる事件が起きています。

2015年10月以降5名以上が行方不明になっており、ここ最近また締め付けがひどくなっているようです。

また、昨年香港で起きた雨傘革命も、台湾人に大きく影響を与えました。

以前であれば、「いくら中国であっても同じ民族に手は出さないだろう」と考えていた台湾の若者たちでしたが、香港警察を使っての若者に対する仕打ちを見て、台湾の中国接近に恐怖を覚えたといいます。

台湾は今後、香港を注視せざるをえないでしょう。

◆「中国は一つ」なのか

蔡英文氏は92年コンセンサスに対して、この考え方を受け入れるとは言っていません。

92年コンセンサスとは、「中国は一つ」という認識です。中国には、「中華人民共和国」と「中華民国(台湾)」の二つの意味が含まれています。

即ち、「それぞれに考え方は違いますが、中国は一つ」ということを習近平と馬英九は確認しあっていました。

この考えに則れば、中国にとって自国の中に台湾が含まれているので、他国が台湾に関して意見したとしても内政干渉として退ければよかったわけです。

蔡氏は現在、併合でも独立でもない、現状維持を訴えています。台湾人の9割が現状維持を望んでいるからです。

もしも台湾側が「中国と台湾は国と国との関係である」、とする二国論を出してきた場合、台中関係はややこしくなります。

こうなった場合、中国は台湾と国交を認める国々に対して、チャイナマネーを使ってアプローチをかけるはずです。現在台湾を国と認めるのは22か国ありますが、南米やアフリカ、オセアニアの小さな国ばかりです。

ひっくり返すことはそう大変ではなく、中国共産党機関紙の環球時報はすでに、「台湾と国交のある一部の国はすでに、台湾と断交し中国と国交を結びたがっている」と報道しています。

この流れが始まれば、台湾が世界のほとんどから国として認められてない状況をまざまざと見せつけ、誰も手出しするなよと日米を脅し、まずは一国二制度に、そしてゆくゆくは併合していくと予想されます。台湾の運命は中国の掌の上にある現状は、現在も変わりありません。

◆台湾は生き残るためのパートナー選びを間違えるな

台湾はどのような道をとればよいのでしょか。

台湾が国際社会で生き残っていくために、日米の力添えは不可欠です。特に日本との関係が台湾の命運を担うといっても言い過ぎではありません。

現在、中国に進出した企業家は60~100万人。台湾と中国を行き来している台湾ビジネスマンは200万人以上と言われています。人口2300万人の台湾で、約10人に1人が中国と深く関わっているのです。

現在、台湾の経済は中国に依存しきっています。

輸出に関しては、香港を含める中国が40%近くになり、第一の貿易相手国です。GDPの6割が輸出によって成り立っている輸出立国ですが、中国経済の不調を受けてGDP成長は1%を切っています。

今後は国内消費の拡大と、リスク分散が欠かせません。

この中国依存を脱却するために、台湾は以前よりTPP加盟、そして遅れている日本との自由貿易協定(FTA)締結も望んでいます。日本側も台湾のTPP参加の橋渡し役になることも検討しています。

一朝一夕には解決できない経済問題ですが、確実に手を打っていかねばなりません。

日台連携を強化するために、蔡氏は馬英九総統のように、首相の靖国参拝批判や、台湾におけるいわゆる従軍慰安婦問題などを出してはなりません。

中国の戦略に乗り、日本との絆を断ち切ってはいけないのです。

日本統治下、日本は台湾に後藤新平や新渡戸稲造をはじめとした当時国家の一級の人物を多く送り込みました。

台湾で流行っていたアヘンを段階的に取り除き、平均寿命が30歳であったところから衛生・医療・教育に力を注ぎました。

台湾総督府庁舎を始め、日本統治時代の遺産はいまも台湾を支えています。日本統治時代につくられた烏山頭ダムは当時アジア一の規模を誇り、今も変わらず台湾の大地を潤しています。

新しい船出に際し、台湾の皆さまにはいま一度本当に大切なパートナーは誰なのかをしっかりと考えていただき、長期的視点で国と守ることを心からお願いしたいと思います。

みなと 侑子

執筆者:みなと 侑子

HS政経塾1期卒塾生

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