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「パリ協定」の曲解で国を滅ぼすことなかれ【前編】

文/幸福実現党・政務調査会 佐々木勝浩

◆万雷の拍手で迎えられた「パリ協定」

12月12日、フランス・パリで開催されていた国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で、2020年以降の温室効果ガス削減に関する新たな国際枠組みである「パリ協定」が、196の国と地域の賛成で採択されました。

パリ協定は、京都議定書(1997年)以来18年ぶりに採択された法的拘束力のある国際枠組みであり、各国代表はスタンディングオベーションで採択を歓迎しました。

また、日本政府代表団の事実上のトップであった丸川珠代環境大臣の尽力もあり、これまでの日本の主張が概ね反映されたことから、安倍総理や政府も歓迎を表明しています。

◆パリ協定で決まったこと

パリ協定では世界共通の長期目標として、産業革命以前からの地球の温度上昇を2℃より十分下方にとどめ、さらに1.5℃以下にとどめるよう努力すること(パリ協定 第2条)、世界全体の排出のピークをできるだけ早めること、21世紀後半に人為的な排出と森林による吸収をバランスさせること(パリ協定 第4条)などを決定しました。

先進国が途上国に温暖化対策の資金を提供することを義務付け、中国などの途上国も自主的に資金を提供することが奨励されます(パリ協定 第9条)。

また、世界の排出量の55%以上を占める55か国以上の批准が、パリ協定の発効要件として決まりました(パリ協定 第21条)。

これは、一部の主要排出国が批准しない場合に協定が法的拘束力を持たないようにするためであり、丸川大臣の発言が反映されました。

◆パリ協定に基づく削減目標を達成する義務はない

パリ協定では、全ての国が自主的な削減目標を5年ごとに提出・更新し、その実施状況を報告し、レビューを受けることが決まりました(パリ協定 第4条)。

この点は、国連が先進国だけにトップダウンで削減義務を割り当て、中国を含む途上国には削減義務がなかった京都議定書とは決定的に異なるものであり、日本や米国の主張が反映されています。

各国は削減目標の達成に向けて国内で削減措置を講じる義務がありますが、削減目標を達成することは、京都議定書と異なり、どの国においても国際法上の義務ではありません。

例えば、日本が7月に提出した約束草案「2030年度に2013年度比26%削減」(「日本の約束草案」2015年7月17日 地球温暖化対策本部)は、達成できなかったとしても、パリ協定には違反しません。

◆日本の削減目標を実際に守ればバカを見る

パリ協定で全ての国が自主的な削減目標を提出することになったことは、公平性の観点から一定の評価はできますが、現時点で各国が提出している削減目標(約束草案)を比較すると、その厳しさには大きな差があります。

政府は「欧米と遜色ない約束草案を提出した」と説明していますが、これは基準年を2013年に揃えれば欧米の数字と大差はないという意味であり、石油危機以降に既に世界最高水準のエネルギー効率を達成していた日本と、効率が悪い東欧の旧共産圏諸国を含むEU、シェールガス革命で排出が減った米国とは、大きく事情が異なります。

地球環境産業技術研究機構(RITE)は最新の研究の中で、各国が約束草案を達成すると仮定した場合に、1トンの二酸化炭素(CO2)を追加的に削減するために必要な費用(限界削減費用)を比較した結果を示しています。

※我が国および世界各国の約束草案の排出削減努力の評価
(2015年12月18日 地球環境産業技術研究機構)
http://www.rite.or.jp/news/events/pdf/akimoto-ppt-kakushin2015.pd

それによると、CO2の限界削減費用は、日本の378ドルに対して、スイスだけが380ドルとやや高いですが、EUは210ドル、韓国は144ドル、米国は85ドル、オーストラリアは33ドル、ロシアは4ドル、中国とインドに至ってはゼロという、ほぼ日本だけが突出して高い結果となっており、相当なコストをかけなければ、約束草案は達成できないことがわかります。

一方、例えば中国の約束草案は、「2030年に2005年比でGDPあたり60~65%削減」というものであり、実質的に削減目標ではないため、容易に達成できます。

このような中で日本が無理に削減目標を達成しようとすれば、莫大なコストがかかり、決定的な経済のダメージを受けることになってしまいます。

(つづく)

佐々木 勝浩

執筆者:佐々木 勝浩

幸福実現党政務調査会 課長代理

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