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COP21:日本はしたたかに国際交渉をリードせよ!【後編】

幸福実現党神奈川県本部副代表/HS政経塾第4期生 壹岐愛子

◆エネルギーミックスは「絵に描いた餅」

約束草案の根拠になっているのは、今年7月に政府が発表した2030年度における長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)であり、その達成状況によっては、日本の温室効果ガス排出量は大幅に上振れするリスクがあります。

長期エネルギー需給見通しでは、実質経済成長率を1.7%と仮定したうえで電力需要は大幅には増加せず、さらに徹底した省エネが進むと仮定する一方、供給についてはCO2を発生しないゼロエミッション電源44%(原子力20~22%、再生可能エネルギー22~24%)と、火力発電56%(LNG(液化天然ガス)火力27%、石炭火力26%、石油火力3%)を見込んでいます。

しかし、現実にこれほどの省エネが進むとは到底考えられません。

また、国民負担のこれ以上の増加を防ぐために再生可能エネルギーの導入はある程度抑制せざるを得ず、一方で原発の再稼働は遅々として進まず、原発新増設の目途も全く立っていないことから、このままではゼロエミッション電源の比率が想定ほど増えない可能性があります。(2015.03.29 HRPニュースファイル「電源構成――原発の新増設に道をひらけ!」)

現在、原子力規制委員会の安全審査が大幅に遅れており、再稼働したのは川内原発1、2号機だけです。さらに民主党時代に導入した原発40年廃炉規制が追い打ちをかけています。

現行制度では40年を迎える原発は事前に20年延長申請が1度だけできますが、審査中に期限が到来した場合には延長が不可能となることから、事業計画が立てられないことを理由に電力会社は次々に40年廃炉を選択しています。

このまま全ての原発が40年で廃炉された場合、震災前に54基稼働していた原発が18基まで減り、設備容量は震災前の4割に減少します。電力需要がエネルギーミックスの想定どおりになった場合に、2030年度の原発比率は最大でも13%程度にしかなりません(稼働率85%を仮定)。

◆一定量の石炭火力発電を確保せよ

政府は再稼働だけでなく新増設にも着手すべきですが、地元との調整を含む準備期間の長さを考慮すると、今すぐに始めても2030年度までに運転開始できる原発は限られています。

原発の不足を補う電源として、不安定な再生可能エネルギーは現実的ではないため、当然に火力発電が増加します。CO2排出が比較的少ないLNGは、価格が高く、多くが中東で産出されるためシーレーン封鎖等の国際情勢の変化に対して脆弱です。

このため、経済性や安全保障の観点から、価格が安く生産地が世界各国に遍在する石炭を、発電用の燃料の比率として一定量確保しなければなりません。

しかし、CO2排出がLNGよりも多いことから、環境省や環境NGOが石炭火力の使用を制限しようとしています。

米国オバマ政権が、地球温暖化を理由に、発展途上国での石炭火力発電所の建設に融資することを禁止するよう、世界銀行やOECD(経済協力開発機構)に要請しています。

米国ではシェールガスが石炭よりも安価に産出するようになり、これを背景に他国の石炭火力を抑制する戦術に出ていますが、石炭火力が重要な電源である途上国や、東欧の石炭産出国は反対しており、中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)も石炭火力向けの融資は止めないと明言しています。

こうした一部の石炭火力に反対する国内外の動きも踏まえて、環境省は日本国内での石炭火力の建設や運転を規制しようとしています。

しかし、原発が不足する中で石炭火力を減らせば、電力コストが上昇し、電力の安定供給にも支障をきたす可能性があります。

エネルギーミックスを根拠とした約束草案を金科玉条の如く守ろうとすれば、CO2対策によって国民負担の増大を招き、エネルギー多消費産業の国外移転を誘発し、結果として国民の生活水準の低下を招きます。

また、中国軍の南シナ海への進出や不安定な中東情勢に鑑みると、CO2対策に固執するあまり、LNG依存を高めて日本の安全保障を脅かしかねません。

◆「地球の神」の願いは自由と繁栄

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2014年に発表された第5次評価報告書の中で、「気候システムに対する人為的影響は明らかであり、近年の人為起源の温室効果ガス排出量は史上最高となっている」と述べています。これが現在の温室効果ガス削減に関する国際交渉のベースになっています。

しかし、幸福実現党は宗教政党として、「地球は高次な意識を持った生命体であり、CO2の濃度だけで気候が変化するような、単純な機械のようなものではない」という事実を申し上げたいと思います。

大川隆法・幸福実現党総裁はその著書の中で、「温暖化は、CO2などの温室効果ガスの影響で起きるのではなく、地球自体の天然現象として、温暖化と寒冷化が起きる。地球は、そういう周期を持っている」と述べています(大川隆法著『幸福維新』)。

地球は過去にも何度も気候変動を繰り返しており、人類はそれに適応してきました。気候変動よりももっと恐れるべきは、CO2削減を理由に社会主義的な統制経済を正当化し、創意工夫と自助努力による発展・繁栄の機会が奪われ、ひいては国民の自由と安全が脅かされることです。

「地球の神」の願いは、CO2削減などではなく、地球文明の飛躍的な発展・繁栄にあるということを断言いたします。

◆技術開発によって世界に抜本的なエネルギーシフトを起こせ

日本は外交上の理由で、今後もある程度は地球温暖化の国際交渉に関与せざるを得ないことは確かです。

また、地球温暖化問題の存在によって利益を得る業界もあり、直ちにこれを全否定することは得策でないでしょう。

しかし、その場合にも日本は、経済成長や安全保障を阻害されることなく、これらを確保しながら技術開発によって長期的にCO2削減を目指す道を主張すべきです。

日本が得意な技術の一つは省エネルギーや高効率化ですが、義務を負わずに経済合理性の範囲内で導入を進めることが重要です。

もう一つは、核を取り扱う技術です。原子力技術の持続的発展はもちろんのこと、核融合に関する技術開発によって、無尽蔵にエネルギーを生産することを目指すべきです。

再生可能エネルギーでは、やがて人口100億人に達する世界を支えることは不可能ですが、エネルギーの供給が化石燃料から核にシフトすれば、エネルギー供給とCO2の問題はほぼ解消します。

今年のCOP21では、日本からは安倍晋三首相や丸川珠代環境大臣の出席が検討されていますが、日本の国益を著しく損ねるCO2削減を約束するような発言を絶対に行わず、日本の得意分野の技術開発によって、世界の抜本的なエネルギーシフトを長期的に推進していくことを主張していただきたいと思います。

壹岐 愛子

執筆者:壹岐 愛子

幸福実現党政調会エネルギー部会長 神奈川統括支部長 HS政経塾第4期生

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