2016年、台湾総統選について考える
文/幸福実現党・兵庫県本部副代表 みなと 侑子
◆2016年 台湾総統選に向けての各党の動向
台湾総統選が来年2016年1月16日に実施されます。
昨年11月に行われた統一地方選挙では、新北市以外の主要都市で野党民進党候補が当選。最大都市の台北市においても、民進党が推す無所属候補が当選し、国民党は民進党に惨敗しました。
この責任をとって、馬英九総統は兼任していた国民党主席を辞任しています。
馬英九の後に主席を引き継いだのは、新北市の市長の朱立倫氏です。
低迷する国民党支持率回復の責任を担っていますが、「2016年の総統選には出馬しない」と言っており、主席であっても総統選までの1年未満で党のイメージを回復させ、国民の支持を得ることは難しいと考えているようです。
現在二期目をつとめる馬英九氏は再再任が憲法において規制されているため、他に何人かの名前は上がっているものの最終的には朱氏が総統選候補になると考えられます。
総統選まで1年を切った今でも、候補者が決まっていないことからわかる通り、与党国民党の準備不足とリーダーの不在は深刻な問題です。
一方で、民進党は2012年の総統選で馬英九に負けた蔡英文氏が再度出馬することが決まっており、準備は整っているようです。
昨年の統一地方選での大勝利も祭氏の手腕によるものが大きく、党内での信任も集めています。
このままいけば、来年の1月には与野党がひっくり返り、民進党が8年ぶりに与党になる可能性があります。同時に、台湾における初の女性総統が誕生するかもしれません。
◆民進党は政権与党に相応しいか
しかし、民進党が与党になるためには、乗り越えなければならない問題が何点か存在します。
一つは反原発政策です。
四方を海に囲まれ、九州ほどの面積しかない台湾では、エネルギー安全保障は最重要課題です。
1987年には原発が電力の48%を占めていましたが、現在では18.4%にまで減少しています。
台湾では芸能人がテレビを通じて反原発の意思を表明。反原発デモの先頭に立っています。そして、民進党の蔡氏もその横に立って活動しています。
与党は原発推進ですが、高まる反原発運動に屈した形で、ほぼ完成している龍門一号機の密閉管理と同二号機の建設凍結を発表。と同時に、現在稼働している6基の原発を順次閉鎖していく予定をしています。
エネルギー自給率が1%以下の台湾においては原発こそが、他国の政治情勢に左右されない唯一の安定的な電力供給源であるはずですが、民進党はその選択肢を放棄してしまうのでしょうか。
二つ目は、中国の圧力による他国との関係悪化した場合の対応策についてです。
台湾独立を目指す民進党の陳水扁氏が総統をした8年間、台湾は中国共産党との関係悪化はもちろんのこと、中国からの圧力を受けた国々とも関係が悪化。
結果、外交に時間とお金を取られ、国内経済・政治に支障をきたしました。
現在、蔡氏は対中政策については「両岸(台中)の現状維持が原則だ」とし、独立運動を前面に出すことはありません。
ただ、現在の国民党と中国は「中国は一つ」とし、双方がその主体であると主張しつつも台湾は独立しない、という92年コンセンサスを基礎として交流を行っていますが、民進党はこの考え方を認めていません。
考え方の基礎を明示し、中国圧力に対する解決策を示すことが必要ですが、曖昧なまま与党不人気に乗じて総統選に突入していくでしょう。
◆台湾にも必要な、新しい道
これら以外にも、所得の再配分や、過剰な人権擁護政策など、“反国民党”かつ寄せ集めた左寄りの政策が散見されます。
与党を目指すにあたり、見直すべき項目が多々あるはずです。
昨年、台湾で起きた立法院占拠と大規模なデモ活動「ひまわり運動」は、政治家や大人を頼らない若者たちによる、第三の道の模索運動でした。
彼らは、中国共産党に台湾が呑み込まれることも否定しつつ、民進党が提示する未来にも満足していませんでした。ここに未来への希望があります。
台湾はアジアの安全保障の第一です。台湾に対して、日本が重要視していることを伝え、連携を強化しなければなりません。
2016年の台湾総統選に注目しつつ、アジアの安全を共に守っていきたいと思います。