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「イスラム国」人質事件――自衛隊派遣の法整備を!

文/HS政経塾部長 兼 幸福実現党事務局部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ

◆予断を許さない「イスラム国」との交渉

日本政府は、ヨルダン政府と連携して、イスラム系過激派組織「イスラム国」と交渉を続けており、緊迫した状況が続いています。こうした中、日本としてどのような外交スタンスをとり、安全保障法制を考えていくべきでしょうか。

◆「みんなにいい顔はこれ以上続けられない」問われる日本のスタンス

フィナンシャルタイムズでは、「岐路に立つ日本外交(A Tipping point for Japan’s foreign policy)」という見出しの論説で、今の日本の動きを報じています。大まかに2点、概要を紹介します。

1)日本は、積極的平和主義を標榜し、同盟国への武器輸出や、尖閣諸島での防衛強化を目指している。防衛をアメリカにアウトソーシングする一方で、全方位外交で特定のスタンスをとることを避けてきたが、日本独自の立場を示しつつある。しかし、今回の人質事件の行方に応じて、これからの安倍政権の外交方針も影響を受けるだろう。

2)中国は日本に対して(尖閣諸島の)領有権の主張をし、アメリカはもしもの時に本当に頼りなるかは分からない。石油の依存をしている中東はイデオロギーの対立で渦巻いている。(こうした国際情勢の中、)日本はいつまでも(中立と称してどちらの側にもつかずに)フェンスに座っていることはできない。
(Financial Times, “A Tipping point for Japan’s foreign policy”, Jan 29th)

この論説では、日本は、「みんなにいい顔をしようとしている」と見ているようです。しかし、変動する国際情勢の中、「あいまいで中立な態度」は許されなくなっていることを指摘しています。

◆平和的な関与であったとしても、判断責任は発生する

「たとえ武器を持たない間接的な人道支援でも、有志国連合に関わり、中東に来ているリスクを理解することが大切だ」というヨルダン人の識者のインタビューが報道されています(1/29毎日夕刊8面)。

平和的な関与であるとしても、判断責任が発生することを、日本人として認識するべきことだと思います。

日本として考える正しさの基準は何か?どのような価値判断に基づいて行動しているのかということを国際社会において問われているのです。

◆議論が深まらない自衛隊の邦人救出のあり方

日本政府のイスラム国への対応について、時事通信の世論調査では、約6割の方が、良く対応していると回答しています。

しかし、今回の人質事件でも判明している通り、日本としてできることは、情報収集と、現地の政府と協力することに限られています。この状況に手を打たずしては、根本的な問題への対応とは言えないのではないでしょうか。

昨年7月の集団的自衛権の行使容認の閣議決定の折に、「武器使用を伴う在外邦人の救出についても対応する必要がある」という方針は打ち出されていますが、その場合の自衛隊の活動範囲は領域国政府の「権力が維持されている範囲」と限定されており、今回のように国家ではない「イスラム国」の支配地域から人質救出については想定されていません。

26日からはじまった通常国会で、4月の統一地方選挙の後に、集団的自衛権の行使に基づく安全保障関連法案が審議される予定となっていますが、自衛隊の邦人救出を可能にする法案については、踏み込んだ議論には至っていないようです。

◆自衛隊の後方支援のあり方についての議論

今、安全保障関連法案について、ようやく自民党と公明党の中で議論されているのが、自衛隊の多国籍軍への後方支援のあり方についてです(1/29朝日朝刊4面)。

今までは、自衛隊を海外に派遣するためには、特別措置法を個別に成立させてきました。しかし、これでは多国籍軍からの要請に対しての迅速な対応ができないため、恒久法の成立を検討するべきではないかという議論されています。

自民党側は、自衛隊派遣の根拠になる恒久法を成立させるべきという立場です。一方、公明党側は、これまで通り個別に特別措置法で作ることが、自衛隊派遣の「歯止め」になるという立場です。

◆在外邦人救出へ踏み込んだ自衛隊派遣の法整備を!

「歯止め」ということが、いかにも耳心地のいい言葉となっていますが、これまで述べてきたように、「歯止めをかけて日本としては、出来るだけ価値判断をしないでおこう」という態度は、もはや許されなくなっています。

日本として考える正しさに基づいて行動していくことが必要です。その一環として、在外邦人の生命・安全・財産を守れるよう、もう一段踏み込んで、「イスラム国」のケースにも対応できる自衛隊派遣の法整備を推し進めるべきです。

吉井 利光

執筆者:吉井 利光

HS政経塾部長(兼)党事務局部長

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