このエントリーをはてなブックマークに追加

朝鮮半島における紛争で、日本は「国家主権」を守れるか

文/静岡県本部副代表 江頭俊満

◆集団的自衛権の行使は必要

日米両政府は10月8日、17年ぶりに見直す「日米防衛協力の指針(ガイドライン)」の中間報告をまとめましたが、日本の集団的自衛権をどう反映させるのか、有事には至っていないグレーゾーン事態に両国でどう対応するのかは、日本側が関連の法整備を遅らせたため、具体的な記述は最終報告まで見送られることになりました。

さて、朝鮮半島の紛争拡大は、避けなくてはならない事態ではありますが、現実的に考えなくてはならない事案であり、朝鮮半島で戦争状態、あるいはそれに近い緊張状態が起こるなら、日本は米軍の最前線基地と後方支援基地にならざるを得ません。

「米軍を支援すると日本が戦争に巻き込まれるから、集団的自衛権の行使を認めない」ということは、きわめて独善的であり、日本は世界から孤立し、国民の生命さえも危険にさらされる結果となるでしょう。

日本は、現在の「安全保障」体制のままでは「朝鮮半島有事」という激震に対して何も対応できず、国際的貢献はおろか、「国家主権」を守ることさえもできず、外的環境にただ右往左往するだけになります。

◆「邦人救出」という大きな課題

必ず想定しておかなくてはならないことは、朝鮮半島から大量の難民が日本に押し寄せてくるということであり、その時に日本は、人道上の理由から全力を挙げて支援が求められることになりますが、それと同時に「邦人救出」という大きな課題もつきつけられるはずです。

ここで、考えておかなくてはならないことは、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)においては、米軍が「邦人救出」をすることは明文化しておらず、大量の難民が発生している状態で、米軍が日本人だけを区別して救出してくれるということは期待できないということです。

日本政府が、「周辺事態」が発生した際の「邦人救出」に関する対策を何も講じていないというのは、全くの責任放棄と言わざるを得ません。

現行法では、自衛隊の平和維持活動のための海外派遣はできても、「周辺事態」発生時の「邦人救出」のための自衛隊の海外派遣は想定されていません。

「周辺事態」発生時における「邦人救出」のための自衛隊の派遣に関する「自衛隊法の改正」と、具体的な自衛隊の「行動基準」を整備するとともに、「自衛隊と民間との協力」体制も策定しておかなくてはなりません。

◆朝鮮半島有事に際して

1952年の朝鮮戦争下になされた「李承晩ライン」の設定は、公海上における違法な線引きであるとともに、韓国による竹島の占拠は、国際法上何ら根拠がないまま行われている不法占拠であることは、周知のことです。

しかし、1949年、韓国政府が「対馬」領有を宣言し、連合軍占領下で主権が制限されている日本から「対馬」編入を要求した歴史があることはあまり知られていません。

日本は、朝鮮半島における紛争の混乱の中で、領土の一部が他国に占拠される可能性も想定した「安全保障」体制を整えておくべきでしょう。

また、日本は、「朝鮮半島有事」の終息後を視野に入れた「安全保障」体制も考えておかなくてはなりません。

「朝鮮半島統一」が実現したあとで、民族としての結束を高めるため、外部に緊張を作り出すという政治的手段が選択される可能性があり、社会的に不安定な状態が続く場合、「統一朝鮮政府」が国外に緊張を生み出す相手として、日本を選ばないとは限りません。

◆「朝鮮半島統一」後の安全保障体制

「朝鮮半島統一」が達成されたとしても、それは直ちに「日本周辺の安定」につながらないという現実を覚悟しておくことが必要です。

国際関係において、いかなる問題が起きる可能性があるかを研究し、それが「顕在化」しないように他国との外交問題にあらゆる手段を講じることが「安全保障の基本」となります。

アメリカのオバマ大統領と安倍首相が4月24日、東京・元赤坂の迎賓館で首脳会談を終えて共同記者会見を開いた際に、オバマ大統領は冒頭のあいさつで、「日本の施政下にある領土は、尖閣諸島も含めて日米安全保障条約の第5条の適用対象となる」と述べました。

しかし、知っておかなくてはならないことは、「領土問題」に起因する紛争では、「日米安全保障条約」は基本的には機能しないということです。

また、「統一朝鮮」においては、「核武装をした大規模な軍隊ができる」可能性があり、それを想定した「国土防衛体制」を構築しておくことも必要でありましょう。

朝鮮半島で戦争が起きた場合、その終結のあり方が、アジア・太平洋地域の安全保障環境に大きな影響を与えることは間違いありません。

今、アメリカが「世界の警察」としての役割から降りようとしているなかで、日本は大局的な観点をもって、世界のリーダー国家への道を大きく踏み出すべき時です。

江頭俊満

執筆者:江頭俊満

静岡県本部副代表

page top