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第6回米中戦略・経済会議の成果をどう見るか

HS政経塾部長 兼 政務本部部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ

◆第6回米中戦略・経済会議をどう見るか

北京で開催された第6回米中戦略・経済会議が10日閉幕しました。米中戦略会議とは、アメリカと中国の二国間問題や外交、経済など幅広い課題について議論をすることを目的として、2006年ブッシュ政権時代に提案されました。

2009年のオバマ大統領が就任してからは、年に1度米中の首都で交互に開催されており、今回で6回目となりました。今回の会議の成果をどう見るかについては、様々な観点があろうかと思いますが、南シナ海などの外交分野のスタンスは米中間で平行線でした。経済分野では一部進展も見られましたものの、小粒の印象です。

中国はこれまで同様、海洋進出を緩めることはないことが、はっきりしましたし、アメリカは中国の南シナ海での行動に対して非難を表明しており、日本としては、現行の防衛力の強化路線は淡々と進めていくべきです。

◆今回の米中会議の主な議題

今回の米中会議の議題として以下の5つを紹介します。
1)中国の東・南シナ海の海洋進出
2)中国のサイバーセキュリティの改善について
3)アメリカの量的緩和の出口戦略
4)人民元介入
5)米中投資協定について
(7/10産経、7/10日経など)

1)中国の南シナ海の海洋進出
南シナ海問題では、中国は「領土主権と海洋権益断固として護る」としてアメリカに不介入を要求しました。中国の主張する核心的利益への不介入の主張は一貫して変わっていません、「相変わらず」です。

2)サイバーセキュリティの改善について
アメリカ司法省は、5月にサイバー攻撃による産業スパイ容疑で、5名の人民解放軍を訴えた経緯もあり、中国側のサイバーセキュリティの改善を要求していますが、この点について大きな進展はなかったようです。

3)アメリカの量的緩和の出口戦略人民元介入
アメリカはFRB議長にイエレン氏が就任して以来、量的緩和政策の出口戦略を進めてきました。国債などの購入規模を2013年12月から100億ドルずつ減らしています(現在350億ドル)。中国側は、アメリカの金融政策は、国際的な資本の流れに大きな影響を与えるため、「秩序だった出口戦略」を中国側は求めました。

ただ、FRBは、6月に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨を公開し、量的緩和策を10月に終えることでほぼ合意したことが明らかにしており(7/10読売夕刊)、今後もアメリカの金融政策への動向は注視する必要がありそうです。

4)人民元介入について
アメリカ側は、中国政府の人民元への過度な介入を批判しており、「著しく過小評価された状態」と指摘しています。しかし、不透明な資本の動きの中で、政府の関与は不可欠との立場は変わらず、為替政策について、中国が譲歩する気配はなさそうです。

5)米中投資協定について
今までは、外資の投資に関しての禁止項目の調整が難航していましたが、年内に協定の骨格を固め、来年の早い時期に個別分野の規制の交渉に移る段取りを目指しており、進展が見られました。

◆アメリカのリーダーシップの低下

その他には、アメリカと中国とも気候変動問題について協調することが同意されました。温暖化問題は、オバマ大統領やケリー国務長官は力を入れており、今年の11月に行なわれるアメリカの中間選挙に向けての、アピールも意図に入っているかもしれません。

いずれにせよ、アメリカは、中国に対して踏み込んだ方針変更を求めておらず、当たり障りのないところで会議を終えたという印象です。中東情勢に加えて、パレスチナとイスラエルが衝突しており、アメリカの抱える外交課題は山積みです。

第6回米中戦略・経済会議の結果を見る限り、アメリカのリーダーシップの低下は隠しようもなく、日本は自主防衛に向けての施策を一層進めるべきことが明白であると言えるのではないでしょうか。

吉井 利光

執筆者:吉井 利光

HS政経塾部長(兼)党事務局部長

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