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マナーばかりの集団的自衛権の議論~決断できる日本へ

文/HS政経塾部長 兼 政務本部部長 幸福実現党東京都第9選挙区支部長 吉井としみつ

集団的自衛権について本格的な議論が27日から29日の3日間行われました。
これまでの経緯を整理して、今後の方向性を考えたいと思います。

◆27日:安全保障法制整備に関する与党協議会

自民党と公明党の間で「安全保障法制整備に関する与党協議会」が開催され、政府は15事例と1参考事例を示しました。

示された事例は、大きく3つのカテゴリーに分かれます。

・武力攻撃に至らない侵害への対処(3事例)←グレーゾーン事態に関わる事例
・国連PKOを含む国際協力等(4事例)
・「武力の行使」に当たり得る活動(8事例)←集団的自衛権に関わる事例

与党会議の目的は、公明党側の理解を得て、6月22日の通常国会終了までに、集団的自衛権行使に関わる憲法解釈の見直しを含めた方向性を閣議決定することです。

そして、秋の臨時国会と来年の通常国会で、グレーゾーンに関わる事例と集団的自衛権の行使につながる法改正の準備を整えていきたいという希望が、政府にはあります。

今回の与党協議会では、公明党側の質問攻めで、15事例あるうちの1事例に時間が集中し(「離島等」の定義について)、議論が大きく進んだとはいえません。

次回の協議は、6月3日に行われ、集団的自衛権に関わる8事例の説明をすることになっていますが、与党協議は、今のところ週1回でおこなわれており、通常国会までの開催はあと3回で、公明党の慎重さにやきもきする状況が続きそうです。

◆28日:衆院予算委員会での国会答弁

衆院予算委員会で、集団的自衛権の集中審議がおこなわれました。

邦人を輸送している米艦を防護は、現行の憲法解釈では行えず、集団的自衛権の行使が必要であるという立場を示しました。

邦人が乗船していない場合にも米艦が集団的自衛権の対象になるとして、「日本人の乗船の有無を前提に、(米軍と共同の)非難計画を立てるのは現実的ではない」(5/29毎日1面)と理由を挙げています。

◆29日:参院防衛外交委員会での集中審議

安倍首相は、審議の中で、米国を攻撃した国に、武器を提供した船舶への臨検や、日本のシーレーンを守るためにも機雷除去を、集団的自衛権に基づいて対処する必要があること、年末の日米防衛協力のガイドライン改定に間に合うように、集団的自衛権の行使容認の議論が与党内で合意を目指す意向を示しました。

◆本当に日本の防衛のことを考えての議論なのか?

「集団的自衛権の適用が拡大している」、「日本は戦争に巻き込まれる」といった理屈で、集団的自衛権の行使をするべきではないという批判があります。

しかし、ここ最近、東シナ海と南シナ海で起こっているトラブルと、集団的自衛権の議論が必ずしもリンクしておらず、本当に日本の防衛のことを考えての議論なのか疑問に感じます。

・4月28日:フィリピンは、なぜわざわざ、アメリカと軍事協定に署名し、一度追い出した米軍に再び戻ってきてもらうことにしたのでしょうか?

・5月24日:日本の防空識別圏と中国が一方的に設定した防空識別圏の間で、中国軍機による自衛隊機への異常接近がありました。

・5月26日:ベトナム漁船1隻が中国海南省東方市所属の漁船と衝突して沈没した事故がありました。ベトナムの抗議を聞かず、中国側は西沙諸島で石油の採掘を進めています。

この1ヶ月を振り返ってみても、日本は、もはや自国の安全のみならず、アジアにおけるリーダーシップを取るのか、取らないのかという判断を迫られています。

◆アメリカを戦略的に出し抜く中国

こうした一連の中国の動きを、フィナンシャル・タイムズ紙では「China is stealing a strategic march on Washington(アメリカを戦略的に出し抜く中国)」と題した記事が出ており(2014/05/29 Financial Times Page.9)、シリア問題でもアメリカの毅然としない判断を読み込んで、東アジアで、紛争をいくつか演出することで、アメリカをアジアから手を引かせる戦略をとっているのではないかという主旨の分析をしています。

日本国内の集団的自衛権の議論は、国家防衛のマターの議論ではなく、マナーの議論に終始していますが、海外情勢を十分に勘案して、「日本人の生命・安全・財産」と「アジアの平和」のために、日本が何をなすべきかを決断するべき時がきています。

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吉井 利光

執筆者:吉井 利光

HS政経塾部長(兼)党事務局部長

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