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今こそ日本は「円国際化」の国家目標を掲げよ!

文/HS政経塾2期生 川辺賢一

◆「金融版CIA」米財務省の活躍

3月2日の日経朝刊には、イランで米欧と対話を望むロウハニ大統領を誕生させ、同国を交渉の場に引きずり出した影の立役者として、「金融版CIA」というべき米財務省の活躍に焦点を当てたコラムが載せられています。

当記事の要点としては、(1)05年北朝鮮への金融制裁は予想外の効果を発揮し、イラン制裁の雛形になったこと、(2)基軸通貨ドルによる国際決済網によって米財務省はドル決済に関わる不審な取引を次々と暴くことができること、(3)金融制裁の効力は対象となった国だけでなく、世界中の銀行もドル決済が出来なくなることを恐れるため、波及的に広がることです。

このように基軸通貨ドルによる国際決済網は米国最大の情報源の一つであり、外交評論家の岡崎久彦氏も指摘するように、基軸通貨国による金融制裁は国際政治の中で使える軍事力以外の有効な手段です。

参照:「金融制裁の効果」岡崎久彦氏
http://blog.canpan.info/okazaki-inst/archive/166

◆矛盾を抱えつつ国際化を目指す中国人民元

さて中国では2011年、中国全土での元建て貿易決済が解禁され、2013年1~6月の人民元建貿易決済額は前年度比で64%も増加しています。さらに先月21日、上海自由貿易試験区が始動し、試験区内での資本取引の自由化が解禁されました。

このように中国は人民元の取引規制を段階的に緩和し、ドルやユーロ、円、ポンドに並ぶ人民元の国際化を推し進めていく戦略です。

一方で中国は急速な資金流入による元高を恐れ、先月26日には大幅な元売りドル買介入に乗り出しました。中国は試験区内で外国から資金を受け入れつつ、別のところで資金を吐き出す、矛盾した政策をとっていると言えるでしょう。

つまり上海自由貿易試験区での資本取引解禁といえども、人民元の為替レートを政府が人為的にコントロールできる範囲の自由化であり、人民元の本格的な国際化にはさらなる中国経済の成熟が不可欠であるということです。

しかし中国は矛盾を経済成長で解消してしまおうという戦略です。私たちは中国の人民元国際化戦略を軽視すべきではありません。

もしもアジアが人民元の海になってしまえば、アジアの国々は貿易決済をするにも元が必要になり、文字どおり中国に生殺与奪の権を握られてしまいます。さらに米国の金融制裁にも抜け穴ができてしまいます。

◆元襲来を打破し、日本は「円国際化」の国家目標を掲げよ!

さて米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は先月11日の議会証言で米国内景気の後退のみが金融政策の方向性を左右すると述べ、新興国の通貨不安やインフレについて配慮する姿勢を示しませんでした。

現在アジア地域の貿易や投資においてはドル建ての取引が圧倒的なウェイトを占めており、何らかのショックや米国の政策転換によって世界でドルへの需要が高まると、アジア新興国では輸入代金支払いや借入金返済のためのドル資金がひっ迫し、危機へとつながります。

今回の量的緩和縮小が示すように「過度なドル依存」はアジア新興国経済に危機を呼び込みます。アジア地域と緊密な関係にある日本経済にとっても、アジア新興国の「過度なドル依存」問題は他人事ではありません。

アジア新興国経済の安定化のためにも、日銀は米連銀に代わって追加金融緩和を打ち出し、日本政府はアジア地域での円建ての国際決済を増やしていくべく「円国際化」の国家目標を掲げるべきです。

既述の通り、中国は矛盾を抱えながらも着々と人民元の国際化に向けた取り組みを進めております。

今こそ日本政府は元襲来の危機に備え、円でアジア太平洋地域を一つにしていく、21世紀の対外経済戦略を構築していくべきです。

川辺 賢一

執筆者:川辺 賢一

HS政経塾2期卒塾生

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