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シリア問題にみる、米国の影響力低下と、ロシア外交の重要性

◆シリアへの軍事介入に見る米英のきしみ

8月27日、ブルネイで米国のヘーゲル国防長官がシリアへの軍事介入について、「われわれの準備は整っている」と述べ、早ければ29日にもミサイル攻撃がなされる可能性が報道されました。

シリアへの軍事攻撃開始は「秒読み段階」と見られ、日本でもマスコミ報道が活発化して来ました。

しかし、軍事行動を共にするとみられていたイギリスでは、8月29日、軍事介入についての是非を議会に諮ったところ、反対が多数となり、キャメロン首相が「国民の意見を反映した議会が、英国の軍事行動を望まないことは明らかだ。政府はこれに従って行動する」と述べ、軍事介入不参加を表明しました。(8/30 朝日夕刊)

これに対して、オバマ米大統領が8月31日に軍事介入を決断したことを発表しましたが、これに先立ち、フランスのオランド大統領とは電話会談を行ったのに対して、英国のキャメロン首相は事前に連絡を受けていなかったと言われています。

また、英国キャメロン首相は議会の同意がなくても介入を決断することも可能だっただけに、オバマ大統領とキャメロン首相の信頼関係にも疑問符が残ります。

そもそも、「キャメロン首相は本気で軍事介入に参加する気があったのだろうか」という疑問の残るところであります。

◆オバマ大統領のシリア攻撃先送りへの批判

しかし、オバマ大統領は8月31日に突如、「軍事介入について決断した」と述べると同時に「議会の承認を求める考え」を示しました。

軍事行動を共にするとみられていたイギリスが不参加を表明し、ロシアが強硬に軍事介入に反対する中、これまで「化学兵器の使用は許さない」と言い続けたオバマ大統領としては、米国のプレゼンス維持のためにも「軍事介入の決断はせざるを得ない」と考えたものと思われます。

しかし、イギリスと同様、軍事介入を行うためには、本来は議会の承認は必要ありませんが、オバマ大統領は、米国世論の半数が軍事介入に反対する中、「議会の承認による後押し」が必要だと考えたのでしょう。

また、化学兵器使用疑惑について調査した国連調査団の報告書が約2週間後に作成される見通しであり、9月5~6日にG20首脳会合がロシアで開催されることもあり、ロシア説得のための時間稼ぎが必要だと考えたのかもしれません。

ロシアは地中海に展開する艦艇を増強する見通しや、情報収集艦1隻を地中海に派遣した事が明らかになるなど、欧米への圧力を強めており、これは米国などに対して非常に大きな「抑止力」になっているものと思われます。

ロシアはシリアのアサド政権に対して対空ミサイルの輸出が指摘されているように、シリアの防空システムの能力向上はロシアの支援で行われてきており、アサド政権とロシアは友好関係にあるため、簡単にアサド政権転覆を許すとは考えられません。

このオバマ大統領の姿勢に対して、1日付シリア政府系紙アッサウラが「米国の歴史的後退の始まりと、世界の指導的立場からの撤退」を意味すると論評するなど、今回のオバマ大統領の決断が、今後の米国の影響力低下を決定的なものにしてしまうかもしれません。(9/1 産経「『米国の歴史的後退』シリア政府系紙が論評」)

米国内でも、オバマ氏の攻撃先送りの決断に対し、共和党のキング下院議員が「軍最高司令官としての責任放棄だ」と非難。民主党関係者も「大統領がこんなにふらふらしてはならない」と述べるなど、非難が高まっています。(9/2 共同「米、シリア攻撃先送り 土壇場の迷走 重圧感じたオバマ氏」)

◆米国の影響力低下を見据えた外交・国防の再構築を!

今後、日本としては、外交・国防を考える上で、オバマ大統領の姿勢と、ロシアの影響力については非常に参考になる事例になると考えられます。

今後、いかなる推移をたどるかは不明ですが、仮に米国議会の承認が得られず、オバマ大統領が軍事介入を断念するような事態になれば、「化学兵器を使用したアサド政権に対しても軍事介入を決断できなかった」ことになり、これはイランや北朝鮮、さらには中国に対するアメリカの「抑止力低下」を意味します。

そもそも、シリアに対しては限定的で短期間のミサイル攻撃が行われるものと見られ、アサド政権を終わらせるための軍事介入は否定されてきました。

これに対して、マケイン米上院議員らが「戦闘の流れを変え、アサド大統領を権力の座から降ろし、この紛争を終わらせるべきだ」という内容の声明を発表し、オバマ大統領の戦略が不十分だと指摘されてきました。

このように、オバマ大統領の「決断力」には非常に大きな懸念を感じざるを得ない状況の中、日本は独自の抑止力強化を急ぐべきです。

また今後、対北朝鮮や、対中国防衛を強化していくにあたり、ロシアが日米の側につくか、それとも中国や北朝鮮と連携するかは、戦略的に非常に大きな影響を及ぼします。

少なくとも「ロシアが日本や米国の敵にはならない」という状況を作っておかなければ、現在のシリア情勢を見る限り、「米国が日本を護ることをためらう」という状況になることが容易に予測されます。

日露外交を活発化し、日露友好を進めていくべきだと考えます。

今後のシリア情勢については、日本の安全保障を考える上でも重要であると考えますが、サリンなどの猛毒の化学兵器などでシリア国民の方々が苦しむ姿が連日報道されております。

一刻も早く、国際社会が団結し、事態が打開されることを願うばかりですが、日本としても、もう一段高い気概を持ち、「地球的正義とは何か」を考え、行動できる国へと成長しなければなりません。(文責・HS政経塾第二期生曽我周作)

そが 周作

執筆者:そが 周作

政務調査会 都市計画・インフラ部会長・HS政経塾第2期卒塾生

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