LCC苦戦に見る、日本の空の問題点――空の「交通革命」の実現を!
◆日本の空をより身近に――LCC時代の到来
2012年、日本の空に新たな形態の航空会社が参入しました。
日本の既存の航空会社においては、手荷物受託サービスや機内ドリンク等、様々な付帯サービスが含まれることが一般的でした(一部の航空会社では、機内ドリンクサービスなどが有料の場合もありました)。
しかし、その分、日本の航空券の代金は世界的に見ても割高であると言われていました。
そうした中、「LCC(Low Cost Carrier)」と呼ばれる格安航空会社3社(ピーチ、ジェットスター・ジャパン、エアアジア・ジャパン)が日本の空に登場し、空の交通をより身近なものにしました。
「LCC」とは、サービスの簡素化や業務の徹底的な効率化によって、既存の航空会社よりも低費用を実現し、低価格の運賃で航空輸送サービスを提供する航空会社を指します。欧米やアジア諸国ではメジャーな航空会社です。
日本においても2010年、国際線において、日本と中国を結ぶ格安航空会社である「中国春秋航空」の参入が話題となりましたが、こうした航空会社も「LCC」と呼ばれる航空会社の一つです。
国内線にもLCCが登場したことで、日本の空がより一層、身近になったと言えます。
◆格安なLCC運賃
このLCCは、従来の日本の航空会社、特に大手航空会社と言われるANAやJALの運賃と比べて、三分の一から十分の一程度の価格で搭乗することができます。
例えば成田―新千歳線は約5千円程度と、長距離バスや新幹線等とも価格的に勝負でき、従来の日本の航空運賃と比べれば「破格」と言っても差し支えない価格です。
LCCの運賃は予約時期や季節等によって大きく変動し、「バーゲン運賃」では更に安い価格となっています。
ところが2013年に入り、日本に就航した3社のLCCの内、2社については思ったよりも業績が芳しくなく、その内の1社であるエアアジア・ジャパンについては、本国マレーシアのエアアジアが撤退を決め、ANAとの提携を解消しました。
その後、ANAが完全子会社化し、新ブランド「バニラ・エア」として路線の見直しを含めて再出発することとなりました。(8/20 産経「新ブランドは『バニラ・エア』 ANAHD傘下のLCC」)
LCCは価格の安さが最大のポイントですが、LCC就航後一年を経て、低価格を維持するのが容易ではない現状が見えて来ました。
そこには大きく2つの問題点があると言えます。
第一は、航空に関わる税金等の問題。第二は、LCCの拠点とする空港の問題です。
◆航空に関わる税金等の問題
日本は欧米等と比べて、航空における税金が高い水準にあると言われています。
航空券の価格には、航空会社が政府に納める税金が含まれており、この税金が「公租公課」と呼ばれるものです。
この公租公課にあたるものは、主に空港使用料や航空機燃料税等です。
中でも、空港使用料の中に含まれる着陸料は、国際水準の2~3倍と言われ、航空会社の大きな負担になっています。
こうした課税は「利用者負担の原則」によって、利用者が支払う航空券代に上乗せされています。
この原則は、航空機の利用がまだ一部の富裕層に限られていた時代の名残と言われており、航空利用者のための設備費用は、利用者自身が拠出すべきとする考えに基づいています。
こうした税金等は、安い価格を維持して運航しているLCCにとって、経営を圧迫する「死活問題」であると言えます。
◆LCCの拠点とする空港の問題
現在、国内線に就航しているLCCは、ジェットスターとエアアジアは成田空港を拠点に、ピーチは関西国際空港を拠点としています。
いずれも都心に近い、羽田空港や伊丹空港ではなく、少し離れた場所にある空港を利用していることが特徴です。
こうした都心に近いメイン空港ではなく、「セカンダリー空港」と呼ばれる都心から離れた空港を利用するのがLCCのビジネスモデルです。
LCCがセカンダリー空港を選択する理由として、空港での駐機時間の問題があります。
航空機の駐機時間を短くし、多頻度で航行した方が空港使用料のコスト削減、並びに一機あたりの稼働時間を長くすることで無駄な費用を減らすことができるためです。
ところが、成田空港などは騒音の問題等から、24時間、空港を使用することができません。
すると、空港の使用可能時間内に飛行機が到着できない場合、着陸できないため、LCCのコスト削減法でもある「多頻度航行」ができません。その他、代替便の保証の問題等も発生します。
紙幅の関係上、詳しく述べることはできませんが、大きくは以上のような問題点が存在します。
◆空の「交通革命」の実現を!
しかし、海外においても、日本においても、LCCは今まで航空機を利用してこなかった層を新たな顧客として開拓しているとされています。
幸福実現党は、航空分野の更なる活性化を含めた「交通革命」の実現を経済成長政策の柱の一つに掲げています。
その実現には多くの方々が気軽に利用できる「空の交通」が必要であり、そうした土壌を作ることが喫緊の課題であります。(HS政経塾3期生 瀬戸 優一)