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パウエル氏の「核、無用論」は責任ある発言か?

◆パウエル氏の「核、無用論」とは?

「核、軍事的には無用」というアメリカのコリン・パウエル元国務長官のインタビュー記事が、7月10日の朝日新聞の一面に掲載されました。(7/10 朝日「核兵器『軍事的には無用な存在』パウエル元米国務長官」)

11日の朝日新聞の15面には、インタビュー記事の詳細が掲載されています。

「なぜ核兵器が不必要だと思うのでしょうか」という記者の質問に対して、パウエル氏は「極めてむごい兵器だからだ。まともなリーダーならば、核兵器を使用するという最後の一線を踏み越えたいとは決して思わない。使わないのであれば、基本的には無用だ」と答えています。

英語の原文がないため、邦訳がどこまで正確か分かりませんが、「まともなリーダーならば、使いたいとは決して思わない」という一文と「使わないのであれば、基本的には無用だ」という一文の間には大きな飛躍があります。

◆原爆投下は必要だったのか?

世界には核兵器を「使いたくない」けれど、「使った」国家が存在します。他ならぬ、パウエル氏がいるアメリカ合衆国です。

私は、「第二次世界大戦の終結のために、核の投下が必要だった」とは、決して思いませんが、アメリカ政府としては「やむなく使った」と言うことでしょう。

そうでなく、「使いたくて使った」ということであれば、当時のアメリカのリーダーは「まともではなかった」ということになります。

パウエル氏は、「核は無用である」と主張するのであれば、第二次世界大戦で、アメリカは日本に核を投下する必要はなかったということを論証し、アメリカ国民に広く伝えるか、「基本的には無用」という「基本」から外れる基準は何であるのか、当時の情勢は、どこが「基本」から外れていたのか、明確に示す必要があります。

どちらもできないということであれば、アメリカは原爆投下が間違っていたことを認め、日本に対して正式に謝罪すべきでしょう。

参照:『原爆投下は人類への罪か?公開霊言 トルーマン&F・ルーズベルトの新証言』(大川隆法著、幸福実現党発刊)

◆「核抑止」のための核保有を肯定するパウエル氏

さらに、核が無用であるのであれば、そもそも、なぜ米国は核を保有しているのか、パウエル氏の明確な説明がありません。

パウエル氏自身、アメリカに関しては「核の削減」という言葉を使い、「アメリカが保有する核をゼロにする」とは言っているわけではありません。

先ほどの発言に続いて、パウエル氏は「軍事的な意味で無用」であり、「政治的に見れば、核には抑止力がある」と発言しています。

軍事兵器としては「使えない」が、他国からの核攻撃を防ぐ「抑止力」にはなるという認識のようです。

アメリカが削減するべき核兵器の数に関しても、「危機に対応するための備えとして持つ抑止力としては、ずっと少ない核兵器数で十分なのだ」と発言しており、「抑止力として必要な数は確保しておきたい」という本音が見えます。

アメリカが単独で核を廃絶すれば、アメリカは他の核保有国の言いなりになるしかありません。万一、テログループの手に核兵器が渡った場合、アメリカがテログループの要求をすべて呑まなければならなくなります。

朝日新聞がセンセーショナルに報じている、「核不要論」とは裏腹に、パウエル氏は「核抑止のための核保有」を肯定しているのです。

現在、核を保有している国は「核の先制不使用」を原則としており、全ての核保有国は「兵器としての核」ではなく「抑止力のための核」の保有を前提としています。(今年4月に中国の国防白書から「核の先制不使用」の記述を削除したことが問題となりましたが、その後、中国国防省から「先制不使用」政策を堅持すると発表がありました。)

したがって、パウエル氏の「核の不使用」発言は、(少なくとも建前上は)どの国も言っている当たり前のことに過ぎません。

朝日新聞が「反核」キャンペーンの一環として、パウエル氏の話を誇張して利用したのが実態といったところでしょう。また、アメリカとしては、北朝鮮の核ミサイル開発に伴い、日本国内で噴出しつつある「核武装論」を沈静化させる思惑があるのかもしれません。

◆「北朝鮮の核」と「アメリカの核」は何が違うのかを説明すべき

パウエル氏の話には、「抑止のための核保有」が認められているのであれば、なぜ、北朝鮮の核保有は許されないのか、説明がありません。

「北朝鮮の核」と「アメリカの核」の違いは、「独裁国家の核」と「民主国家の核」の違いです。

90年代を通じて、北朝鮮国内の餓死者は300万人を超えているといわれています。

自国民が数人でも亡くなれば問題になる民主主義国家と、100万人単位の死者が出ても何とも思わない「独裁国家」では、核保有の意味が全く違うのです。

自国の国民を餓死に追いやりながら、核開発を続ける北朝鮮に対し、対話路線だけでは、北朝鮮が核開発を止める日は永遠に来ないでしょう。

◆「最悪の事態」に備えるのが政治家の使命

「中国が核兵器を使用しようとしたらどうするか」という質問に対し、パウエル氏は「そんなことは起きないだろうから、考えたこともない」と回答するなど、楽観的過ぎる部分が多く見られます。

常に最悪を想定し、最悪の事態が起こったとしても、被害を最小限に食い止める道筋を考え、実現していくことが政治家の仕事です。

「北朝鮮も、中国も『平和を愛する諸国民』であり、核兵器を使うことは絶対にない」という楽観的な予測に、1億2千万人の日本人の人命をゆだねるわけにはいきません。

幸福実現党は参院選の最大の争点として、「憲法9条改正」を中心とした早急な国防強化策を訴えていますが、それは国民の生命・安全・財産を守るという強い使命感ゆえであります。(幸福実現党 東京都第1区支部長 伊藤のぞみ)

伊藤 のぞみ

執筆者:伊藤 のぞみ

HS政経塾1期卒塾生

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