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中国の戦略を分析し、日本よ、戦略を持て!

◆米国防総省が尖閣を巡る動きで中国をけん制

米国防総省は5月6日、「中国の軍事力に関する年次報告書 2013年版(※)」を発表しました。

※“Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2013

報告書は、中国政府が尖閣諸島を「中国領」として扱えるよう昨年9月に設定した独自の直線基線について「不適切で、国際法に合致しない」と批判。尖閣周辺で中国が繰り返す挑発行為は日中の偶発的な衝突を起こしかねないと危惧を表明しています。(5/7 日経「尖閣周辺の中国の基線『国際法に合わず』米報告書」)

米政府高官は今回の尖閣を巡る記述に関して「尖閣は日本の施政下にあり、いかなる一方的な行為にも反対する」と説明。中国に冷静な行動を呼び掛けるのが狙いとの考えを示しています。(同上)

その他、トピックスとして、(1)2012年に起きたサイバー攻撃の一部は中国政府・軍が直接関与、(2)産業スパイ活動で軍の近代化を支援、(3)2020年ごろまでに初の国産空母が就航、(4)対艦弾道ミサイル「東風21D」(射程1500キロメートル以上)の配備等を掲載しています。(5/6 日経「米、中国の動きけん制 国防総省報告書 弱腰批判を払拭」)

◆「中国の戦略」を知れば、中国が分かる

本報告書で特筆すべきは、第2章の「Understanding China’s Strategy(中国の戦略)」についてです。

トウ小平氏以降の中国の指導者は、「2020年」を念頭に置き、経済力と軍事力を「一定の水準」にまで押し上げることを戦略目標にして来ました。

「一定の水準」とは「成長を維持し、かつ安定を促進するために中国経済を立て直すこと」と「中国人民解放軍を近代化させ、戦争または地域紛争に勝つ能力への到達」を指します。

特に日本が注意すべき点は、中国の指導者が「中国人民解放軍の成長こそが、中国の大国としての地位を確立する」と考えていることにあります。

中国の指導者は「近代化された軍事力」を持つことで、「中国の国益を侵す勢力から国益を守る」、または、「国益を守るために直接行動に出る」ことができると考えています。

すなわち、中国政府が「自国の国益が犯される」と判断した場合には、「戦争に訴えることも躊躇しない」ことを認識しておくべきです。

実際、中国の歴史を振り返ると、中華人民共和国が1949年に成立するや否や、中国は50年にチベット、54年に台湾、59年にインド、69年にソ連、79年にベトナムと国境をめぐり争っています。

さらに、74年に西沙諸島でベトナムと争い実効支配を始め、92年にフィリピンが米軍基地を撤去すると、その3年後には南沙諸島に軍事施設を建設、次々と他の島も実効支配しています。(参照:The Liberty Web「幸福実現党Q&A」)

◆中国の軍事力増強に警戒を高めるアメリカ

その他、米国防総省は本報告書で、新鋭の短距離・中距離の通常戦力弾道ミサイル、地上攻撃・艦艇攻撃両方の巡航ミサイル、宇宙攻撃兵器、接近拒否、地域拒否の能力強化を意図した軍事サイバー能力の増強等を指摘しています。(5/15 JB PRESS「中国のすさまじい軍事力増強を米国防総省が警告」)

本報告書全体を通じ、米国防総省が中国に対して「警戒感」を強めていることは明らかです。

日本としては、米国の「警戒感」がわが国の安全保障に対して、いかなる影響を及ぼすかについて推測していく必要があります。

「中国への警戒」を強めるアメリカは、自国の戦力を守るべく、在日米軍を日本から徐々に後退させる方向で動いています。

このような事態が進めば、日本は窮地に立たされることは明らかです。座していれば死を待つのみです。

しかし、これは同時に、「米国依存の安全保障」に安住して来た日本にとって、「自主防衛」「憲法9条改正」を進めていくチャンスでもあります。

残念ながら、自民党は5月24日、7月の参院選に掲げる政権公約で「憲法96条改正」を明記することを見送ることを発表しました。(5/24 ブルームバーグ「自民:憲法96条の先行改正、政権公約明記は見送りへ」)

憲法改正の絶好の好機が来ているというのに、憲法改正から逃げた自民党は、「自主憲法の制定」という党是を踏みにじり、自己の存在否定へと陥っています。

◆日本よ、戦略を持て!

米国防総省が分析するように、中国は長期戦略に基づき、経済力を急成長させ、軍事大国を築いて来ました。

日本も早急に「最悪の事態(侵略される危機)」を想定した「戦略」を作り上げていく必要があります。

「戦略」とは、あらゆる事態を想定し、日本の国益をいかにして守るか、そのために日本の国が持つ資源をどのような形で使うのかをあらかじめ考えていくことです。

幸福実現党は国難を乗り越え、「世界のリーダー国家」としての日本を築くために、中長期戦略に基づいた経済、教育、国防、外交政策を打ち出しています。

今、「中国がアジアの盟主になるのか」「日本がアジアのリーダーになるのか」――世界が注目しています。

中国は捏造された「歴史認識」を持ち出してまで、「日本が強国になることの危険性」を世界にアピールしています。

今こそ、日本は「正しい歴史認識」を打ち出し、この国の「誇り」を国内外に発信すると共に、戦略に基づいた国家再建を進めていくべき時です。

(文責・幸福実現党政調会長 黒川白雲)

黒川 白雲

執筆者:黒川 白雲

前・政務調査会長

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