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「防衛計画の大綱」を見直し、日本版トランスフォーメーションを構築せよ!

迅速さを欠く「防衛計画の大綱」見直し作業

政府は1月25日の閣議で、民主党政権下で策定された防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」の見直しと、人員や装備品などの整備計画「中期防衛力整備計画」の廃止を決定しました。(1/25 産経「民主政権下の防衛大綱見直し 中期防衛力整備計画廃止を決定」)

これを受けて、小野寺防衛大臣は省内に検討委員会を設けて具体的検討を進め、参院選前の6月に中間報告を公表し、年内の大綱改定を目指す予定です。

更に民主党政権下における「動的防衛力」の概念について、小野寺防衛大臣は計画を根本概念から再検討していく考えを示しています。

民主党政権が作成した大綱は問題があり、見直し自体は歓迎しますが、見直しのスピードは迅速さを欠いていると言わざるを得ません。

自民党は下野した期間が三年以上あったにもかかわらず、なぜ改正に一年もの時間がかかるのでしょうか。

2012年から2013年にかけての安全保障環境は非常に緊迫したものがあり、この間、なぜ自民党は政権奪回を見据えて、改定準備作業を進めてこなかったのでしょうか。

今回の記事では、現行の大綱にはどのような問題があるのか、そして、どう改めるべきかについて提言したいと思います。

「防衛計画の大綱」の問題点

民主党政権下において策定された「防衛計画の大綱」(http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/2011/taikou.html)の問題点として、以下の3点が挙げられます。

(1)戦略性の欠如

そもそも日本の国益はどこにあるのか、日本の国益を守るために軍事力をどのように使うのか、安全保障政策をどのようにマネジメントするのか、ということについて考えが不足しています。

民主党政権下における数々の外交的失策や中国の軍事的行動と領空・領海侵犯を招いたこと自体、その事実を裏付けています。

(2)「動的防衛力」の概念を政策的に突き詰め、実行することができなかったこと、

「動的防衛力」の概念については、現行の大綱には「軍事科学技術の飛躍的な発展に伴い、兆候が表れてから各種事態が発生するまでの時間が短縮されていることから、事態に迅速かつシームレスに対応するためには、即応性を始めとする総合的な部隊運用能力が重要性を増してきている」とあります。

しかし、民主党政権が行ってきた南西諸島を巡る防衛を振り返ると、とても「即応性を始めとする総合的な部隊運用能力」が向上しているとは言い難いものがあります。

1982年の英国とアルゼンチンのフォークランド紛争の事例でも分かるように、有事における「時間」と「距離」を克服することができなければ、甚大な損害を受けることは避けられません。

(3)新たな安全保障上の脅威への対応の欠如

現行の大綱には、新たな安全保障上の脅威である「宇宙空間の防衛」や「サイバー空間の防衛」について、「情報収集及び情報通信機能の強化等の観点から、宇宙の開発及び利用を推進する。また、サイバー空間の安定利用のため、サイバー攻撃への対処態勢及び対応能力を総合的に強化する」と明記されています。

しかし、早期警戒衛星や偵察衛星などの開発は低調に推移し、サイバー空間を防衛するための実戦部隊の創設については民主党政権下では遂に行われることはありませんでした。

新しい「防衛計画の大綱」の提案

そもそも、安全保障戦略とは「国益」を達成するために、いかに軍事力を使うのかという計画と、国の資源をどのように使うのかという計画、それを実行する手順そのものです。

また、安全保障戦略は外交・対外政策と密接な関わりを持っています。すなわち、安全保障戦略は外交・対外政策の延長線上にあります。

例えば、中国・北朝鮮の脅威に立ち向かうために、どの国と結ぶのかを定めておく必要があります。

日本の場合は、中国の脅威に対応するためにロシアとの協商関係を構築したり、北朝鮮の脅威に対応するために韓国と結ぶなど、臨機応変に対処する必要があります。

具体的には、ロシアと結ぶことによって、北方シフトから南西諸島へのシフトを円滑に行い、南西諸島への侵略に対する備えを万全にすべきです。

更には、米軍海兵隊のような「即応兵力」を創設し、侵略行為を即座に叩き潰す体制を確保すべきですし、そのためには、自衛隊組織を改革し、必要な装備を整える必要があります。

新しい安全保障上の脅威については、幸福実現党が従来主張してきたとおり、早期警戒衛星や偵察衛星の生産と配備を進め、サイバー戦の実戦部隊を早急に創設すべきです。

そのためにも、具体的な安全保障政策の実施要領である「防衛計画の大綱」を早急に見直すべきです。(文責・黒川白雲)

黒川 白雲

執筆者:黒川 白雲

前・政務調査会長

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