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安倍内閣、この1年間の通信簿

2012年の衆院選からちょうど1年が過ぎるに当たり、各メディアでは、「第2次安倍内閣への通信簿」がつけられていました。

◆アベノミクスは成功するのか

まずは、「アベノミクス」が、ユーキャンの新語・流行語大賞は受賞しなかったものの、世間を賑わせました。

日経平均株価は、野田内閣解散前2012年11月14日の8600円台半ばから、2013年12月現在、15000円超にまで回復しています。

今年の9月25日には、ニューヨーク証券取引所において、「バイ・マイ・アベノミクス(Buy My Abenomics)」の3単語を含めた演説をし、取引所のクロージング・ベルを鳴らしましたが、その姿には、第2次政権の経済政策への自信と確信が漂っていました。

◆アベノミクスと同時に、増税も

しかし、その後10月に入り、幸福実現党の13万6147名にも及ぶ署名活動や、全国各地でのデモ活動にもかかわらず、2012年6月になされた自民・公明・民主の三党合意の通り、消費税を増税する決断をしてしまいました。

景気対策として5.4兆円の補正予算案が組まれていますが、これまでの景気回復が腰折れしないかが非常に懸念されます。

この1年を見る限り、減税反対・増税志向の財務省が、アベノミクスの阻害要因になっています。

来年の1月からは、株式譲渡益(キャピタルゲイン)課税の税率が、現在の10%から、2倍の20%に引き上げられます。

また、12月6日の与党自民党の税制調査会では、国家戦略特区内の、法人税減税や固定資産税免除を含む優遇税制の来年度実施を見送ることとなりましたが、このままでは国家戦略特区法案などを柱とする成長戦略を空回りさせる可能性もあります。

もし首相の意志で、財務省等の圧力を抑え、減税路線・規制緩和路線に転じることができていたならば、その成長性が評価されて株価がさらに上がり、5番目の流行語大賞を受賞していたかもしれません。

◆外交・国防では着々とした布石

この秋、特定秘密保護法案や日本版NSCの設置が話題となりましたが、それらも含め、これまでの日本の制度の欠陥・不足部分を補おうとしています。

特に特定秘密保護法案の衆参可決に当たっては、非常に激しい批判が朝日・毎日・東京新聞などから加えられましたが、集団的自衛権の行使容認のための憲法解釈変更の際にも、大きな国民的議論がなされるでありましょう。

国家の安全のために必要な制度変更は、これからも着々と進めてほしいものです。

また、12月14日、東京にて、日本ASEAN特別首脳会議が開かれました。

安倍外交は、キャロライン・ケネディ駐日米大使の赴任にも象徴される「日米同盟の深化」のみならず、ASEAN諸国との親密な関係構築にも評価されるところはあると思います。

首相や外相自らが足を運び、直接会談し、インフラ輸出や円借款を含む経済支援を約束することで、日本と中国を天秤にかける東南アジア諸国に、日本の存在感を示すことができたのではないでしょうか。

ASEAN諸国との親密化を進め、特に、フィリピンやベトナムなど、中国と南シナ海で領土問題を抱える国々とは、国益を共有しているので、対中共同戦線にまで高めていくべきです。

◆日本政治の不甲斐なさを全く克服できていない

しかしながら、戦後日本の不甲斐なさは克服されず、戦略的思考、勇気が欠けたままです。

まず、首相はいつ靖国神社に参拝するのでしょうか。

「首相になったら…」「終戦の日には…」「秋の例大祭には…」と言っていた安倍首相の「約束の日」は霧の先のようです。

河野談話・村山談話の見直しについても、同じことが言えます。

対日姿勢を強める中国・韓国、日中韓の関係悪化を懸念するアメリカへの配慮があるのだとは思いますが、平身低頭の外交を続けることが、先週末、ASEAN首脳陣を前にして話した「和(WA)の精神」だとするなら、間違っています。

それではASEAN諸国の期待にも応えられません。

「現在の日中関係は、第1次大戦前の欧州に似ている」というような論考も、しばしば海外メディアで書かれています(英雑誌エコノミスト11月30日版やFinancial Times 11月28日)が、「現代中国は、軍事•領土政策を見る限り、第2次大戦前のドイツに似ている」のではないかとも思われます。

空と海で、日本の領域が侵されようとしているが、今年改正された自衛隊法の条文は、アルジェリアのテロのような場合に、車両を使った輸送ができるようになっただけです。

来年は、領空侵犯や領域警備を含めた自衛隊法改正を最優先に、できるだけ早く9条を改正すべきです。

(HS政経塾3期生 森國英和)

森國英和

執筆者:森國英和

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