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イラン核開発 6カ国合意は平和への道か、混沌の始まりか

◆11月24日の暫定合意

今月24日、国連の安全保障理事会の常任理事国にドイツを加えた6カ国とイランが核開発問題で、合意を果たしました。

イラン側が核兵器への転用が容易な濃縮度5%以上のウランの生産を停止することを主軸として、6カ国側は貴金属や自動車、石油化学分野の禁輸措置を一時停止するなど、経済制裁の一部解除を決定しています。

イラン国内では、2006年から続く経済制裁によって、高インフレと失業が続いています。

国際通貨基金(IMF)の予測では今年の消費者物価上昇率は42%、失業率は13%を上回っているとされ、経済状況の深刻さが伝わってきます。

また、オバマ大統領も、オバマ・ケアへの批判が強くなってきたことを背景に支持率が低迷していることから、外交実績を作りたいという思惑もありました。

 「イランが核兵器を製造できないことを検証できる、今より安全な世界へと道を開いた」と、オバマ米大統領は声明で成果を強調していますが、両者に都合良く結ばれた合意には早くもほころびが見え始めています。

◆アメリカとイランで解釈が正反対の「ウラン濃縮の権利」

それが如実に現れたのが、「ウラン濃縮の権利」に関するアメリカ側とイラン側の解釈です。

合意が結ばれたあと、イランのロウハニ大統領は、「核開発の権利や濃縮活動の継続を認めるものだ」と合意内容を評価しました。また、イランのザリフ外相も「濃縮計画は合意の一部と確信する」と表明しています。

これに対して、アメリカのケリー国務長官は「合意文書のどこにも『イランにウラン濃縮の権利がある』とは書いていない」と反論しています。

しかし、米国家安全保障会議(NSC)が明らかにした「共同行動計画」の内容は、イランの核開発が平和目的と保障されれば、最終的にイランのウラン濃縮活動を認めることを示唆するものでした。

さらに、包括解決によってイランは核拡散防止条約(NPT)の下で「平和目的の核エネルギーの権利を享受できる」と明記されていることから、イラン側からNPTに沿った平和利用であれば「ウラン濃縮の権利がある」と主張されれば、反論するのは難しいのではないでしょうか。

◆イスラエルが強硬化する可能性

このような事態に危機感を募らせているのがイスラエルです。

イスラエルのネタニヤフ首相は今回の合意を「歴史的な過ちだ」と非難し、イランの譲歩はうわべだけであり、核兵器の開発を続けるだろうとの見方をしています。

イスラエルは自国を守るために、実力行使も辞さない構えであり、イスラエルが納得する形でイランの非核化が進まないようであれば、イスラエル独自で強攻策を取る可能性もあり得ます。

◆一時的な平和のあとの混沌に備えて

2008年の時点で、幸福実現党の大川隆法総裁は、オバマ大統領はイスラムに対し、妥協型、融和型の政策をとるだろうと予見していました。

そして、その結果「一時的には世界が平和になったように見えるかもしれませんが、世界のリーダーがいなくなる状況が生まれ、中心軸がなくなった結果、世界は混沌状態になっていきます。」と指摘しています。(『救世の法』p.105-106)

今回の合意によって、表面的には平和がもたらされるように見えるかもしれませんが、イスラエルとイランの対立は、さらに深刻になったといえます。

現在の日本は原発が停止している状態で、火力発電に頼っている現状ですが、中東情勢によっては、火力発電を動かす石油価格が高騰する可能性も否定できません。幸福実現党が原発の稼動を求める理由もそこにあります。

日本としては、エネルギー安全保障政策も含め、一時的な平和のあとに来る混沌状態に備え、さらに世界を照らす一灯の光となれるよう力を蓄え、信頼できる国家として国際社会に絆を強めていくことが求められているのではないでしょうか。(文責・伊藤希望)

伊藤 のぞみ

執筆者:伊藤 のぞみ

HS政経塾1期卒塾生

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