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「周辺外交工作座談会」が開催。中国外交の新展開に備えよ!

◆中国の「周辺外交工作座談会」

先般、中国共産党中央が「周辺外交工作座談会」を開催しました。同座談会の開催は日本国内のメディアでも報道され、注目が集まっています。

今回は、人民日報や解放軍報の報道などを元に、「周辺外交工作座談会」から読み取れる中国政府の狙いについて、切り込んでみたいと思います。

◆「周辺外交工作座談会」の開催と目的

「周辺外交工作座談会」は、10月24日から25日まで北京で開催されました。

このような会議が開催されるということは、大国同士の関係に生じた変化に対応し、中国が周辺諸国に向けた外交方針を変更しようとしていることを意味します。

本座談会の内容を伝える記事によれば、座談会の主要任務は次の3点です。

①「経験を総括し、形勢を検討判断し、思想を統一し、未来を開拓すること」

②「今後5年から10年に至る周辺外交工作の戦略目標、基本方針、総体的な構造の確定」

③「周辺外交が直面する重大な問題の工作の筋道と実施プランの明確な解決」

◆国際環境に変化が生じた

同座談会において、習近平主席は毛沢東から胡錦濤に至る中国の指導者が「周辺外交を高度に重視し、一系列の重要戦略思想と方針政策を提出」してきたことを指摘しています。

習主席の発言は、冷戦中、中国の指導者が国際環境の変化に対応して「米国を敵とするか、ソ連を敵とするか」を常に変化させながら自国に有利な環境を作り出してきた事実を踏まえてのものと考えられます。

そしてここ1ヶ月ほどでも、中国の安全保障をめぐる大きな変化がありました。

◆座談会開催のきっかけは、「陸の国境問題」の進展か

その大きな変化とは、10月22日から実施された「ロシア、インド、モンゴル三カ国の中国同時訪問」にあり、中でもインドのシンハ首相との首脳会談にあると思われます。

すなわち、「中印両国政府は辺防合作協議に署名した」ことで「辺境地区の和平と穏定の推進に重要な意義があった」と報道されているため、両国間の国境問題について、踏み込んだ進展があったものと考えることができます。(10/24『解放軍報』「聚焦三国総理同日訪華」)

◆海洋進出がより加速する恐れが出てきた

さらにインド・モンゴルは中国とロシアが主導する「上海協力機構」のオブザーバー参加国であり、これら3国が中国に接近していくことは、中国にとって「陸上の国境にかかわる安全保障がより確実となる」ことを意味します。

このような変化によって、「後背地である陸上の安全保障環境が強固となったので、海洋覇権の確立により拍車をかける」ことを中国政府が考えたとしてもおかしくはありません。

◆「善隣外交」をPRしつつ、「日本の孤立化」を狙う意図がある

同座談会の中身について言えば、習主席の発言は「善隣外交のPR」に終始するものでした。

しかし、後日新華社に掲載された解説記事において下記の様に述べています。

「当然、釣魚島等の問題において、中国政府は対話での解決を堅持すると同時に、主権と領土を完整する決心と能力がある」(10/27『解放軍報』「中国推進周辺外交大戦略」※新華社記事の転載)

と、釘を刺していることや、中国政府が一貫して日本政府を非難する外交声明を発表し続けていることを考えれば、座談会での発言にわざわざ盛り込まなくとも、中国政府が「中国善玉、日本悪玉」のイメージを作り上げようとする魂胆が見えてきます。

折りしも、史上初めて中国の三大艦隊が集結した「機動-5号」演習が西太平洋で進行中です。

かつて、1980年初頭に、旧ソ連軍の北海道侵攻を想定し、北海道を中心に配置された自衛隊を、南西諸島(九州・沖縄)にシフトするなど、中国の海洋進出を阻止する具体的な防衛政策を打ち立てる必要はあります。

また同時に、すべてを日本の責任に転嫁する中国の「言論による包囲網」を突破できるだけの、情報発信力も強化していく必要があります。(文責:HS政経塾1期生、幸福実現党 神奈川第4選挙区支部長 彦川太志)

彦川 だいし

執筆者:彦川 だいし

HS政経塾第1期卒塾生/党政調会・外交部会

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