日本政府よ ギリシャのデフォルト危機を救出せよ
再びギリシャのデフォルト(債務不履行)が取りざたされています。
理由としては、ギリシャ政府の財政赤字削減計画が予想以上に遅れていることと、3月20日には144億ユーロ(約1兆4100億円)にのぼる国債償還日が近づいていることが主な原因です。
ギリシャは、「トロイカ」と呼ばれる欧州委員会、欧州中央銀行、国際通貨基金との債務削減交渉が合意に達しないと融資が受けられず、国債の返済もできなくなる恐れがあるのです。いわゆるデフォルトが現実感を増しているわけです。
昨年9月に実施する予定だった融資は三カ月後に先送りされました。こうした影響で、昨年末に予定されていた50億ユーロ(4900億円)の融資は再度3月に延期され、3月に予定されていた100億ユーロ(約9800億円)の融資も6月にずれ込むことが発表されています。
加えて、難航している交渉状況を鑑みると、上記の融資が実行されるかも依然不透明です。
欧州でギリシャ支援を積極的にリードするフランスのサルコジ大統領とドイツのメルケル首相は、ギリシャのユーロ存続を望みながらも、ギリシャ政府が債務削減交渉に合意する件に関しては、「もはや猶予はない」という発言をしており、いら立ちを示し始めています。
ただし、ギリシャ政府にとっても交渉をすんなり受け入れられない事情があります。労働者の最低賃金20%カット、年金削減、公的部門の整理による1万5千人のリストラ策に対して、労働組合が激しく反発。7日には、首都アテネでは労働組合による1万3000人が集まり、緊縮財政への抗議集会とストライキを敢行しています。
ギリシャ議会は、民衆の激しい抗議や経済状況もあり、債務削減に関する会合を結局延期しました。その結果、ユーロ圏の首脳たちを不安に陥らせています。
ギリシャは、融資を受ける代わりに厳しい財政削減を義務付けられていますが、これで問題が本当に解決できるのかは極めて疑問です。
ギリシャのシンクタンクIOBEのヤニス・ストウナラス氏によれば、ギリシャ経済は対前年度比でGDPは6%以上低下することが必至だと分析しています。
確かに、失業率も2011年の段階で19%と高く、このまま債務削減が継続されれば、一層高くなるでしょう。
ギリシャ経済が低調であれば、税収も減ります。同時に、支援しなければいけない国は、イタリアやポルトガルスペインと多数にのぼっており、ユーロ圏の経済に足枷をかけています。全体的にもユーロ圏経済が一層冷え込めば、ギリシャ支援どころの話ではなくなります。
「トロイカ」が求める財政赤字削減案は厳し過ぎるとの意見もあり、欧州から世界不況を起こす懸念があることを指摘する投資家もいます。実際、その可能性は否定できません。
さらに、経済学者の中には、ユーロの構造的欠陥を指摘しているハーバード大学のJ・フランケル教授がいますが、同教授は、ユーロ離脱ということも十分考えられるべきだと述べています。詳細はこちら→ 「EU離脱なし」のギリシャ救済は本当に可能か
日本政府は、国内の消費税増税法案に熱心ですが、欧州発の世界不況を回避するためにも、ギリシャ政府に対して直接融資をすることも検討するべきでしょう。
国際通貨基金(IMF)を通すことなく、直接融資することが大事です。金額は、「トロイカ」との交渉によって決めていく柔軟な外交を展開することも考えるべきでしょう。
少し論点はそれますが、昨日、財務省は覆面介入として1兆円強の為替介入をしたことが記事になりました。「為替介入をどう見るか」でも紹介した通り、円高是正のための為替介入自体を否定しませんが、金融緩和を同時に発動していなければ効果は限定的です。
また、わざわざ「覆面介入」という姑息な手段に対して資金を使う余裕があるのなら、同額程度をギリシャ政府に融資しても問題ないわけです。
さらに言えば、昨年から始まった日欧EPA(経済連携協定)を円滑に進めるためにも、今は欧州に恩を売っておくことも大事です。
また、中国が執拗に欧州に対して金融支援を行う意思表示をしている以上、外交・安全保障の観点からも欧州を味方につけることは極めて大事になるでしょう。
日本政府は、内政ばかりに目を向けず、上記のような国際的視点からの政策も視野に入れて行動するべきです。相応の努力を怠ると、最悪の場合は日本が孤立することになります。
日本は欧州の危機を救う力を持っているのですから、日本政府は、堂々とギリシャ支援を実施するべきです。
(文責・中野雄太)