後手にまわる円高対策
急激に進む円高に対して、日本政府の対応が後手後手にまわっています。 21日にようやく緊急経済対策において、2011年度予算の予備費を使用して輸出企業への資金支援をする方向で調整に入ったところです。
一方、日本銀行(以下日銀と明記)も22日以降、円高が進行した場合は追加金融緩和を政府に平行して行うことを明言しています。
政府が動いたことに対しては一定の評価はできますが、問題は、対応の遅さです。
円高基調は、3月11日以降から続いており、震災から5ヶ月が経過しても史上最高値を記録しています。トレンドとしては円高であることは明確なのですが、政府の「予想」に反して円は強くなっています。
日本政府は、「なぜ円高が進行しているのか」という根本原因を理解できていません。現在、円高が進んでいるのは、日本が他国と比較して通貨供給量を絞っているからです。
もちろん、欧米経済の不調により、資金の行き場がないためい、「少しはマシ」だという理由で円が買われている側面はありますが、国際金融市場の気まぐれさを考慮すれば、円高の根本原因ではありません。
根本原因が通貨供給量の不足にあるならば、通貨供給量を増やすことです。伝統的な金融緩和として、買いオペ(日銀が民間の債券などを購入すること)があります。ゼロ金利となっている今、日銀が出来ることといえば、買いオペか量的緩和です。その中には、国債の日銀直接引受もあります。
要するに、今政府がやるべきは財政金融政策です。予算の組み換えや小手先だけの市場介入では不十分です。
特に、円高と震災復興を克服しようとすれば、幸福実現党が「日本再建宣言」で主張している日銀直接引受です。
政府は、現時点では財源を小出しにして第三次補正予算まで見据えているようですが、早急に財源を確保したければ東日本復興債を発行し、日銀に買わせれば済むのです。規模としてはデフレギャップの20兆円分程度は必要ですが、この範囲ならインフレは心配不要です。
加えて、財政法5条の但書きにも明記されている以上、法律的根拠もあります。日銀が拒否をしていますが、震災のような「特別の事由」にあたる事象がある以上、彼らの反論は説得力を欠いたものと言わざるを得ません。
確保できた財源は、早急に東北の被災地復興のために投入するべきでしょう。
間違っても、デフレと不況が深刻化している今、復興財源を増税で行えばさらにデフレ基調となり、円高は止まりませんし、結果として不況が深刻化して復興が遅れる可能性が高くなります。
民主党の次期代表選が近づいていますが、円高対策や復興対策をきちんと対応できる方がならないと困ります。小手先だけの円高対策ではしのげないということを認識し、円高と震災復興の両方が可能となる、国債の日銀直接引受まで見据えた対応をするべきでしょう。
(文責:中野雄太)