農産物のブランド力強化で風評被害の払拭を! 幸福実現党 宮城県本部副代表 HS政経塾第5期卒塾生 油井哲史(ゆいてつし) 3月末、農林水産省が初めて福島県産農産物の流通実態について、調査を行いました。 東日本大震災から7年を経ましたが、風評が根強く残るとともに、他県産に取り扱いを変えた事業者が福島県産に戻す動きが鈍い現状が浮き彫りとなった結果でした。 このように福島県産農産物を取り巻く状況は、まだまだ好転していません。 ◆福島県産農産物の扱い減、安値が続く 首都圏の仲卸業者139社を対象にした福島県産青果物の調査では、原発事故後に取扱量が減ったと答えた事業者はアスパラガスが全体の33%、キュウリは29%、トマトは28%、リンゴは25%、あんぽ柿は24%、桃は23%を占めています。 理由として、「販売先による別産地の指定があるため」が43%、「販売先が福島産以外を希望していると想定されるため」が39%と風評被害の影響がみられます。 さらに取引価格も全国平均との差が開いたままです。 県産米は14年産で10.4%差から16年産では4.9%差と回復傾向にありますが、事故前の価格差が1%程度だったことを考えるとその差が解消されていません。 県産桃は価格差が42.8%から15年産の15.8%まで縮まりましたが、17年産は23.3%と再び拡大しています。 消費者アンケートでも、「安全性に不安がある」と2割近くの回答があったことから、福島県産の悪いイメージがぬぐえておらず、抵抗感が残っています。 福島県産農産物の安全性は、県が放射性物質検査の実施を徹底しています。 米については、「全量全袋検査」を実施しており、このような取り組みは世界でもまれであるため、世界一厳しい基準と検査といわれています。 政府は、県産品の安全性に関する周知を関係省庁と連携して進め、正しい情報発信によるイメージアップ戦略の強化で風評払拭に努めていくことが必要です。 ◆福島県産を選んで頂けるブランド力づくり 一方で、今回の調査から安全性のPRという従来の取り組みだけでは限界があることもわかりました。 「一度外した商品を棚に戻すことは難しい」「業者が福島県産に戻す理由やきっかけを見いだせていない」という回答があったことから、販売棚を取り戻したり、福島県産を選んで頂けるような理由が必要なのです。 つまり、風評被害を乗り切っていくためには、新規に開拓できる商品価値の向上も問われており、福島県産品の付加価値をさらに高めて、選んで頂けるブランド力づくりが求められているのです。 ◆ブランド力強化で風評被害に打ち勝つ 実際に、ブランド力の強化で風評被害からほぼ立ち直った農家も存在します。 福島県いわき市の施設トマト農家・助川農園は、12年産は他県と比較すると数百円程度安い状況だったのが、今ではトマトの産地・栃木県と比較して若干安い程度まで回復しています。 「私たちの努力の問題であり、風評被害のためとは言い切れないと思っています」と代表の助川氏は語ります。 助川農園のトマトは、1994年から「親バカトマト」というブランド名で品質の良いトマトを出荷。土づくりにこだわり、健康な土づくりを目指した結果、病気に負けない健康トマト栽培しています。 減農薬と減化学肥料を実現し、「特別栽培農産物」認証を取得し、一般的なトマトよりも約1.2~1.5倍程度も栄養価が高いのです。 安全性だけをアピールするのみならず、付加価値の高いトマトを作り、どんな気持ちで栽培しているのか実際に見て、感じて、食べていただく機会を増やしました。 その継続が生産者と取引先や消費者の信頼関係が深まり、ブランド力が強まっていきました。このような努力の結果、比較的早く立ち直れたといいます。 ◆ブランドを立ち上げることで風評被害と闘う 新しいブランドを立ち上げるということを通じて、風評被害と闘っている地域もあります。 産業廃棄物投棄事件の影響で「ごみの島」のイメージとなった香川県の豊島。問題が表面化し、その風評被害で地元の農業は大きな打撃を受けました。 地元農家は、正しい情報発信をして、安全性を訴えるとともに、質の良い商品を提供し続けています。 同時に、新たな特産品化を目標にイチゴ栽培を始め、「豊島のイチゴ」としてブランド化を進めています。 産廃の投棄現場からは遠く、安全性に問題はないのですが、「豊島のイチゴは産廃で汚染されていないのか」という問い合わせもあり、産廃のイメージを払拭するのは容易ではないです。 豊島でイチゴ農園を営む多田さんは、「豊島の状況を丁寧に説明することで、得意客もできてきた。」「豊島の名前から逃げたら駄目だ。産廃と戦ったことを伝えるのが島の住民の使命」と語り、イチゴで豊島の農業の再生に結び付けたいという強い決意をもっています。 イチゴの生産だけではなく、自家製イチゴジャムや菓子業者と共同でイチゴのロールケーキ等の開発を進め、多角的な経営に取り組んでいます。 風評払拭のためには安全性の発信を継続していくことが不可欠です。大きな困難を力強く乗り切るには、産地づくりやマーケティング対策、ブランド育成を通じて、新しい福島県産の価値を訴求していくことが求められているのです。 【参考】 河北新報 「福島産農産物/風評払拭へ問われる販売戦略」 2018年4月12日 日本農業新聞 「福島県産流通実態 震災前水準戻らず 安全性不安に2割 農水省初調査」 2018年3月29日 福島民報 「仲卸3割「県産扱い減」 首都圏で風評根強く」 2018年3月29日 福島民報 「【県産品全国調査】流通対策の強化を」 2018年4月4日 産経新聞 「風評払拭し“豊島”取り戻す 産廃撤去終えみかんなどブランド化へ 香川」 2017年6月25日 読売新聞 「風評被害は終わったか…続く被災地農家の挑戦」 2016年3月3日
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