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中国「スパイ摘発」強化。相次ぐ日本人拘束。中国の人質外交に警戒を!【前編】

https://youtu.be/HKp9hlzAjVQ 

幸福実現党党首 釈量子

◆反スパイ法改正、7月1日から施行

4月26日、中国は2014年に制定した「反スパイ法」を改正し、摘発対象を拡大し、今年7月1日から施行されます。

中国でビジネスをしている方は戦々恐々で、今後さらに神経をすり減らすことになりそうです。

2014年11月1日施行の従来の「反スパイ法」では、取り締まりの対象となるスパイ行為とは「国家機密」を提供することと定義していました。

今回の改正法では「国家の安全と利益に関わる文書、データ、資料、物品」を提供や窃取(盗み取ること)、買い集めにも広げました。

困るのは、「国家の安全と利益」とは何か、定義を明らかにしていないため、中国当局による恣意的な運用がなされる可能性があります。

米中が対立している半導体、先端技術は当然のこと、当局が「国家の利益」に関わると見なせば何でもありです。

また、「スパイ行為」の定義も拡大され、例えば、レアアースなど資源に関わる場所を「撮影」、政府や国有企業関係者の「接待」、台湾や香港、中国共産党等に関する「雑談」レベル、ウイグルやチベットに旅行し現地の人との「会話」もスパイ行為と見なされる可能性があります。

国家組織や重要な情報インフラに対するサイバー攻撃も含まれるようになりました。

また、国家安全を担う部署の権限も強まり、スパイ行為の疑いのある人の手荷物や電子機器を、強制的に調査ができるようにしました。

さらには、スパイ行為を発見した個人や組織に「通報義務」を課しました。

「いかなる公民・組織も、スパイ行為を発見した場合、速やかに国家安全機関に通報しなければならない」として、黙っていると罪になります。

逆に、反スパイ法に貢献した個人らは表彰されるということです。

◆「密告」を奨励

思い起こすのは、中国で1966年から76年まで行われた「文化大革命」です。

政治闘争のなか、中国では友達や同僚、家族の間でお互いの監視と密告が数多く行われて、「自分の母親を密告したら2か月後に銃殺刑に処せられた」というようなこともありました。

習近平政権が「密告」を奨励して、学生が教授の講義内容を監視し、告発するケースもすでに起きています。

「反スパイ法」に伴い、当局は密告のための電話番号やメールを公開し、整備しています。企業内の会話や、知人との食事中の会話も監視され、通報される可能性はさらに高くなりました。

◆外国企業の摘発

7月の改正法施行前に増えているのが、欧米の外国企業の摘発です。特にコンサルティング会社や調査会社の摘発が目立ちます。

「デューデリジェンス」(Due Diligence)と言われますが、投資を行うにあたっては、投資対象となる企業や投資先の価値やリスクなどを調べないといけません。

特に、中国に進出している外国企業は、相手先企業のバックグラウンドとして、財務面を確認するのは当然ですが、

例えば、ウイグルの強制労働によって作られた製品は米国の制裁対象になるため、取引先がウイグルの強制労働に関わっていないことを確認する必要があります。

企業にとってこれらの確認作業は大きな負担となっていましたが、今後さらに「反スパイ法」への対応が加わります。

そもそも中国政府は、ウイグルの人権問題を国家の利益に関わる情報だと見なしているため、外国企業のこのような調査・確認作業自体が「スパイ行為」と見なされる可能性もあります。

すでに外国企業は一段とこうしたリスクに直面しています。

3月、米国の信用調査会社ミンツ・グループの北京事務所で働く中国人が拘束。

4月、米国のコンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーの上海事務所で従業員が取り調べを受け、さらに

5月初め、米国のコンサルティング会社キャップビジョンの拠点を、スパイ行為で一斉調査しました。

報道によると同社は、外国企業を含む1000社以上の顧客を持つコンサルティング会社で、従業員が人民解放軍関係企業の人物と頻繁に接触し、専門家という名目で高額の報酬を渡して「重要なデータ」を取得していたとのことです。

中国当局は、米国が、コンサル会社を利用して機密情報を得ている、と見なして摘発を強化しています。

中国の言う「重要なデータ」とは、欧米諸国では、ごくありふれた民間データだったりします。

例えば、ある地域のコロナの死者数を調査するだけで、国家の安全に関わる情報を不正に入手しようとしたと見なされるかもしれません。

◆相次ぐ邦人拘束

日本企業や日本人の拘束リスクも非常に高まっています。

中国に進出している日系企業の数は、3万2887拠点で第一位。二位のアメリカ8959拠点を大きく上回ります。

今年3月、アステラス製薬に務める50代の男性社員が、反スパイ法の疑いで拘束されました。

通常業務の一環として、政府関係者や業界関係者との交流を行っていたことが拘束の理由だと報じられています。

ただし、これは表面的な理由であって、日本が米国に足並みを揃えて、「半導体製造装置の輸出規制」を強化したことを受け、中国が「外交カード」として、日本人を拘束した可能性があると指摘されています。

昨年、釈放された鈴木英司さんは、スパイ容疑で6年3か月拘束されました。鈴木さんがスパイ容疑をかけられたのは、友人である中国政府の外交官と会食した際の何気ない会話です。

当時、日本ですでに報道されていた北朝鮮の張成沢氏の側近の処刑と本人の動向疑いについて「どうなのですか?」と聞いたら、相手は「知りません」と答えたということです。

これが罪だとされ、24時間監視付きの時計もない、テレビもない、太陽も見ることができない部屋に監禁されて取り調べを受け、有罪判決を受け、昨年22年10月、やっと帰国しています。

これまで、中国に拘束された邦人17名の中には、札幌市の男性のように日本の土を踏むことなく亡くなった方もいますし、今もなお、服役している方もいます。

残念ながら、各種の証言をみると、日本の外務省が釈放に向けて力を貸してくれることはあまり期待できないし、親中派の与党・公明党に近いと言っても、効果がないようです。

今後、「台湾有事」が起きれば、日本は日米同盟のもと中国と敵対関係になるので、中国駐在の日本人ビジネスマンは人質に取られたのも同然です。

(後編につづく)

釈 量子

執筆者:釈 量子

幸福実現党党首

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