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マイナンバーカードが24年秋から実質強制へ。迫りくる監視国家の靴音【前編】

http://hrp-newsfile.jp/2022/4360/

幸福実現党 政務調査会 藤森智博

◆2024年秋、既存の健康保険証は廃止へ

10月13日、河野太郎デジタル大臣が、いわゆる紙の健康保険証を2024年秋をメドに廃止し、マイナンバーカードに一本化することを発表しました。

同日、デジタル庁の担当者は「保険証の廃止は『原則』という断りなく実施する」と明言しており、政府の本気度が伺えます。運転免許証については廃止までは踏み込みませんでしたが、免許証の機能をマイナンバーカードに持たせる「マイナ免許証」の導入を前倒すことを検討し始めました。

あらゆる身分証をマイナンバーカードへと集約する流れが加速しつつあります。

◆事実上の「マイナンバーカードの義務化」に国民は猛反発

これに対して、国民からは反対の声が相次いでいます。既にネット上では、保険証廃止に反対する署名運動が展開されており、オンライン署名プラットフォームchange.orgでは13日23時時点で5万人近くの署名が集まっています。

今回の保険証廃止の問題は、大きな関心を集めていると言えるでしょう。

国民の反対の声が相次いだ最大の理由の一つは、事実上のマイナンバーカードの義務化です。

国民皆保険の我が国において既存の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一本化することは事実上のマイナンバーカード取得の義務化に他なりません。

マイナンバーカードの9月末時点での交付率は49%と低迷しています。

日経新聞なども一連の措置は「マイナンバーカードを一気に普及させる狙い」と指摘していますが、政府が健康保険証を廃止する真の目的は、国民に強制的にマイナンバーカードを申請させることだと言えます。

◆強引な事実上の義務化は、「法治国家」としては大問題

さらに「マイナンバーカードの義務化」を達成するための「手段」にも問題がありました。

もし政府が最初から堂々と義務化を発表していれば、望ましくはありませんがある意味で正直でした。しかし現実には、政府は、実質義務化の実現に向け、健康保険証の廃止という「からめ手」を用いたわけです。

「本音と建て前」という日本的な手法とも言えますが、こうした手法に反発を覚えた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

より踏み込んでこの問題を考えてみると、実は今、「法治主義」が危機的状況であることも指摘できます。少なくとも現時点では、既存の健康保険証の廃止について、「法改正を目指す」という話ではなく、「決定事項」として報道されています。

本来、真っ正面からマイナンバーカードの義務化を進める場合、マイナンバー法を改正し、義務化を明文とすることが筋となります。

しかし、既存の健康保険証を廃止し、仕様を変更するということであれば、法改正は必要ないという話にできます。つまり、「からめ手作戦」によって、本来必要な法改正という民主的手続きをスキップしたと考えられるわけです。

◆マイナンバー法制定時に明言されていた「カードの任意性」

また、マイナンバー法制定における国会審議を振り返ると、「マイナンバーカードが任意か、強制か」という問題は、間違いなく論点として存在していました。

例えば2013年5月23日の参議院内閣委員会では、以下のようなやり取りがされています。

民主党・新緑風会の藤本祐司議員が「マイナンバーの通知カードがあれば、マイナンバーカードは不要という人もいるでしょうが、それはそれで問題はないのでしょうか」という趣旨の質問に対し、時の内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)であった甘利明議員は「通知カードを番号カード(筆者注:マイナンバーカードのこと)に替えるのは、法律で強制的に全部、全員やりなさいということは言ってないわけですよね」と明言しています。

従って、マイナンバー法にマイナンバーカードの義務化が盛り込まれていれば、法案審議が違ったものになっていた可能性があるわけです。

◆マイナンバーカードが義務化されずとも、既にマイナンバーによる国民監視の体制となっている点には、要注意

もっとも、マイナンバーカードの義務化そのもので、政府の国民の監視体制に大きな変化は起きないでしょう。

全国民にマイナンバーが割り振られており、適法であれば、既に政府は国民の個人情報を集約することができます。また、マイナ保険証でも紙の保険証でも、診療情報がデジタル化されていれば、ハッキング等で悪用されるリスクは同程度でしょう。

そもそもマイナンバーという制度自体に大きな問題はあるのですが、今回の措置だけを見れば、国民が必ずしも大きな不利益を被るとは言いは難い面はあります。

逆に言えば、これをもって「マイナンバーカードの義務化は問題ないのだ」という意見もあることでしょう。

◆マイナンバーカードの実質義務化は更なる国民監視の強化を招く

しかし、ほとんどの国民がマイナンバーカードを所持するようになると、芋づる式にマイナンバーの活用が拡大しかねません。すると、マイナンバーによる国民監視体制は確実に強化されるでしょう。

現状のように国民の半分程度しかカードを所持していなければ、カードを前提とした政府施策は行えません。

一方で、ほとんどの人がカードを持つのなら、あらゆる政策にカードを利用することができるようになります。この辺りが、政府が「マイナンバーカードの実質義務化」を狙う理由でしょう。

このように、政府は国民監視を強めるために、からめ手まで使ったマイナンバーカードの義務化に乗り出してきていると考えられます。

次に後編では、マイナンバーカードの実質義務化によって、「どのような国民な監視強化に繋がるのか」を具体的に考えてみたいと思います。

(後編につづく)

藤森智博

執筆者:藤森智博

幸福実現党 政務調査会

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