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自民も公明も連合の「お仲間」 今や企業に「賃上げ」を求める政党ばかり【前編】 

http://hrp-newsfile.jp/2022/4273/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆自民も公明も連合の「お仲間」 

4月から5月にかけて、労働組合と政党との交流が盛んになっています。

4月18日には、労働組合の中央組織である「連合」の芳野友子会長が、自民党本部の政策会合に出席し、「ぜひ自民党にも力を貸していただきたい」と訴えました。

5月13日には、公明党の竹内政調会長と連合の清水秀行事務局長が会談。竹内氏は「賃金を持続的にあげられる構造にもっていかないといけない」と述べています。

近年、自民党は賃上げに熱心なので、ながらく野党を支持してきた連合の会長が自民党本部の会合に参加できるようになりました。

公明党に対しても、連合は、昨年の衆院選では東京12区の公明党候補を支援しています。

連合は、もともと立憲民主党や国民民主党などを支援してきましたが、最近は、与党にも積極的に働きかけています。

今や、自民党や公明党も、連合の「お仲間」なのです。

◆与野党のほとんどが「賃上げ」を公約

実際に、自民党の麻生副総裁は、「連合の話を一番聞いているのは自民だ。賃上げを経団連や経営者に一番言っているのも自民だ」(3/27)と言っています。

野党よりも労働組合の声を聴いていると自慢しているわけです。

今や与党と野党が入り乱れて、「賃上げ」を競うようになったので、ほとんどの政党が労働組合の「お仲間」になりました。

賃金の水準は、市場における需要と供給と、企業経営の状況に応じて決まるものなのに、政治家がしゃしゃり出て、「私たちが賃金を上げる」と大きな声を上げています。

法律を使い、企業経営の状況にお構いなく、人気取りのために最低賃金を引き上げるのですから、経営者から見れば、迷惑な話です。

現時点(5月下旬)で、自民、公明、立民、国民民主、共産の5党が考える最低賃金についてのプランを見ると、時給1000円と時給1500円で二分されています。

【時給1000円】

・自民党:早期で1000円以上の実現(全国加重平均)、2020年代に全ての都道府県で最低賃金1000円に挑戦する(自民党雇用問題調査会が5/10に緊急提言)

・公明党:年率3%以上をメドに引き上げ、2020年代前半には全国で1000円超の実現(加重平均)、2020年代半ばには47都道府県の半数以上で1000円以上へと引き上げる(2021衆院選公約)

・国民民主:全国どこでも時給1000円以上を早期に実現(2021衆院選公約)

【時給1500円】

・立憲民主:最低賃金時給1500円を将来的な目標に(2021衆院選公約)

・共産党:時間額1500円の全国一律最低賃金の実現(全労連の評議員会が1/26に提言)

各党は賃上げを前回の参院選でも公約し、2019年に901円だった全国平均の最低賃金額は、現在、930円にまで引き上げられています(*加重平均額)

(※維新の党は最低賃金という仕組みに賛同していないので賃上げ公約がない。れいわ新選組は全国一律最低賃金1500円)

◆中小企業の多くは経営に苦しみながら賃上げに対応している

立憲民主党と共産党は最低賃金1500円を掲げました。

これは、今の1.6倍以上なので、あまりにも高すぎる数字です。

中小企業の負担にお構いなく、強制的な賃上げを一気に進めれば、人件費の負担増で企業の倒産が増えるでしょう。

自民党、公明党、国民民主党は早期に1000円を実現しようとしています。

これは、現在の賃上げ路線を加速しようとする動きです。

しかし、賃上げを推進する前に、最近の最低賃金引上げが、中小企業にどのように受け止められているかを知る必要があります。

全企業数のうち中小企業が占める割合は99%以上を占めているからです。

ここで、日商と東商の調査を見てみましょう。

(*日本・東京商工会議所「『最低賃金引上げの影響および中小企業の賃上げに関する調査』調査結果」2022/4/5 を参照。小数点以下の数字は四捨五入)

そこでは、「最低賃金は近年3%台の大幅な引上げが続き、多くの中小企業・小規模事業者から、経営実態を十分に考慮した審議が行われていない」という企業からの苦情が紹介されていました。

この調査では、以下の4点が明らかになっています。

(1)今の最低賃金が「負担になっている」(*)と答えた企業の割合は7割近く(65%)にのぼりました。特に、コロナで被害を受けた「宿泊・飲食業」では9割(91%)がそう答えています。(※「負担になっている」=「大いに負担になっている」と「多少は負担になっている」の合計)

(2)前回(21年10月)の最低賃金引上げの後、4割(40%)の企業が強制的に賃金を上げざるをえなくなりました。

(3)(賃上げなどで)人件費が増えても対策がとれない企業は4割(42%)にのぼります。

(4)2022年度に「賃上げを実施予定」と回答した企業の割合は5割に迫る勢い(46%)。「賃上げを実施予定」と答えた企業のうち、7割(69%)が、業績の改善がないことを認めています。

要するに、法律で最低賃金が引き上げられた結果、多くの中小企業は、経営に苦しみながら、賃上げに対応しなければいけなくなったのです。

(後編につづく)

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

HS政経塾

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