北京五輪前に、やっぱり看過できないウイグル問題。中東イスラム諸国はなぜ沈黙するのか?【前編】
幸福実現党党首 釈量子
◆昨年末、英米で大きく動き始めた「ウイグル問題」
2月の北京五輪あと少しとなりました。その前に、開催国・中国に対して、断じて譲れない問題として、改めて注目されているのが「ウイグル問題」です。
ご存じの通り、新疆ウイグル自治区で強制収容所に入れられたウイグル人は、2017年から19年の2年間で少なくとも300万人と推計されています。
昨年末からこの問題がまた大きく動き始めて、英国では12月初旬、非政府組織「ウイグル・トリビューナル」が、ウイグルにおいて、強制収容や強制労働、大規模な不妊手術など、苛烈な人権侵害が行われていることが記された「新疆文書」を世界にリークしました。
内容としては、2014年から17年の間に、習近平国家主席や、他の共産党幹部が、新疆ウイグル自治区に関して行った最高機密レベルの演説が含まれており、今ウイグルで行われている強制的な同化政策の方向性を決定づけたとする、極めて重大な内容だとされています。
文書を公表した団体は、ウイグル族やカザフ族に対するジェノサイド、すなわち民族大量虐殺が日常的に行われており、習近平国家主席の重大な責任を国際社会に訴えています。
これに対して、中国は「新疆での取り締まりはテロを防ぎ、イスラム過激派を根絶するために必要だ」と断固否定しています。
12月中旬、米上院議会においても、新疆ウイグル自治区からの輸入を全面的に禁止する「ウイグル強制労働防止法案」が全会一致で可決されました。
輸入禁止は法成立から180日後に発効されますが、ウイグルに供給網を多く抱える日本企業にとっても、これは大きな分水嶺です。
◆ウイグル弾圧を正当化する根拠はなかった!?
そして、本年1月4日、トルコ在住のウイグル人が、新疆ウイグル自治区でレイプや虐殺など、人道に反する罪を犯しているということで、習近平を含む中国共産党の幹部112人を、トルコのイスタンブール検察当局に刑事告発しています。
告発したウイグル人は19人ですが、イスタンブールの裁判所の前には、およそ150人のウイグル人が家族の写真を掲げて抗議の声を上げていて、映像を見ましたが、胸が締め付けられるような思いになりました。
これに対しても、中国外務省の汪文斌(おうぶんひん)報道官は5日、記者会見で「人道に対する罪などというものは、反中勢力がでっちあげた、とんでもないデタラメであり、事実や法律的な根拠は何もない。うそに基づいて中国を攻撃し、中傷しようというたくらみは、絶対に成功しない」と反発しています。
ちなみに、これまで、中国がウイグル弾圧を正当化する根拠として挙げていたのが、イスラム過激派の存在で、中国当局はETIM(東トルキスタン・イスラム運動)という組織の存在を挙げています。
一方で、米国務省の調べによれば「ここ10年以上、ETIMが実在している十分な証拠がない」という結論が出ています。
要するに、さもありそうな敵を創作し、それを大義にウイグル人弾圧を行ってきたという手口をよく使うことを、日本人含めて、全世界の方は覚えておかなくてはなりません。
◆同胞の弾圧に口をつぐむ中東イスラム諸国
ここで疑問なのは、ウイグルの人々と同じく、イスラム教を信仰する国々が沈黙していることです。
特に、中国は彼らの信仰心を標的にし、「神を信じることが罪だ」として片端から収容所に入れています。その本質は宗教弾圧です。
英米など、欧米キリスト教国が、宗教の壁を超えて、唯物論国家・中国の魔の手から彼らを護ろうとしている一方、中東イスラム教国は、信仰の同胞たちへの苛烈な弾圧に対して、ダンマリを続けているのは残念でなりません。
様々な背景があるとは思いますが、「見て見ぬふり」ができる最大の理由、それは中東諸国が中国とズブズブの関係にあるからです。
(中編に続く)