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岸田氏vs高市氏の財政再建論争!必要なのは、緊縮財政でも積極財政でもなく、健全財政

http://hrp-newsfile.jp/2022/4189/

幸福実現党 政務調査会 藤森智博

◆年初から盛り上がりを見せる財政再建論争

1月7日付の毎日新聞の報道が話題となっています。岸田文雄首相が財政再建を重視し、財政赤字に慎重であるのに対し、同じく自民党の高市早苗政調会長が噛みつきました。

高市氏は、積極財政を掲げ、コロナ禍を克服していくためには、政府がお金を出して、経済を回す必要があると考えています。

与党の政調会長と総理の路線対立が大きく表面化したのは珍しいと言えるでしょう。「背景にあるのは、単なる二人の軋轢でもなければ、政策論争でもなく、権力闘争の一環だ」という報道もあります。高市氏の背後に安倍元総理がいることを御存知の方も多いでしょう。

岸田氏は、総理就任後、安倍氏の言うことを聞かなくなったばかりか、盟友の麻生氏を取り込み、安倍氏を孤立させ追い込んでいると見る向きもあります。

これについて、ここでは深く立ち入りませんが、今夏の参院選に向けて、財政政策をめぐる議論が過熱していくことが予想されます。本稿では、あるべき財政政策について検討してみます。

◆緊縮財政の問題:経済を犠牲にしてでも、とにかく財政再建

岸田氏の「緊縮財政」から見てみましょう。この考えは、財務省の伝統的な考えと共通しています。先般の衆院選前に話題となった財務次官の「矢野論文」は典型的な緊縮財政論でしょう。

しかし、「緊縮財政」はともすれば嫌がられます。なぜ嫌がられるかと言えば、国民の生活よりも政府の財政再建を優先するからです。2010年代の2度の消費増税がその典型例でしょう。

財政再建の美名のもと、国民が貧しくなる増税を行いました。それにもかかわらず、日本の累積債務は減るどころか逆に増えてしまいました。

ここから緊縮財政論に言えることは、「国民あっての国家であって、その逆ではない」ということです。

マクロ経済でもって、「これだけ増税すれば、これだけ税収が増える」と計算しても、国民の生活が疲弊してしまえば、国力が落ち、やがて税収は減っていきます。

結局、税収増を目指すあまり、経済を犠牲にしてはならないのです。

◆積極財政の問題:ワイズスペンディング(賢い支出)が欠けている

次に高市氏の積極財政です。積極財政では、政府がお金を出して経済を回すことを考えます。特に日本は、長期にわたるデフレに苦しんでいるので、需要の不足を国家が補ってあげようと考えます。

積極財政については、昨年12月13日の衆院予算委員会で高市氏と岸田氏が舌戦を繰り広げました。

高市氏は「まずは、積極財政で皆様が働く場所、事業主体を守り抜き、成長への道筋を示すことによって、雇用と所得を増やし、消費マインドを改善させ、最終的には税収も増える形をつくる」と発言しました。

これは、令和三年度の過去最大となった補正予算についての見解ですが、積極財政の考え方がよく表れていると言えるでしょう。

積極財政は、国民生活のために国家が一肌脱いでくれるわけですから、一見素晴らしく感じます。増税や社会保障費などの歳出削減を言わなくてよくなるので、政治家としても大変ありがたい考え方と言えるでしょう。

しかし、積極財政派に決定的に欠けているのは「ワイズスペンディング」(賢い支出)の観点です。流行りのMMT論もそうですが、支出の中身の部分をなおざりにして、支出額のみに着目する傾向は強いです。

◆今の政府にワイズスペンディングはできない

もちろん、積極財政派の方もワイズスペンディングの大切さは訴えています。

先ほど紹介した高市氏も、同予算委員会で「ワイズスペンディングを前提に効果的な財政出動と成長戦略を大胆に講じていただき、雇用と所得と消費を増やし、結果的に税収増にもつながるお取組みをお願いしたい」と発言しました。ワイズスペンディングと言えば、誰も反対はできないでしょう。

しかし、ここには大きな落とし穴があります。それは「政府の自称『ワイズスペンディング』が本当に賢いのか」という問題です。

民間企業であれば、自由市場において、厳しい競争に晒されます。「売れるか売れないか」あるいは「倒産するかしないか」という結果をつきつけられるので、判断能力は磨かれていきます。

一方、行政の特徴は「無謬性」にあると古くから言われています。これは、「行政は間違った判断をしない」ということです。

つまり、官僚は昔から「ワイズスペンディング」だったことになります。しかし、現実は間違いだらけだったので、日本の借金は積み上がっていったわけです。

結局、民間企業のような競争も無く、間違いを認めたがらない政府にワイズスペンディングなどできるわけがないのです。それは、高市氏がワイズスペンディングを唱えた補正予算を見るだけで分かります。

補正予算では、岸田総理が掲げた「新しい資本主義」を名目にしたものが253項目ありましたが、「ごった煮」状態で、「ワイズ」とは程遠いものです。例えば、「新しい資本主義」を起動するために「良好で緑豊かな都市空間の形成等のための国営公園事業に必要な経費」として39億円近い予算がつけられました。

国営公園の整備は分かりますが、なぜ「新しい資本主義」につながるのかはさっぱり分かりません。これはあくまで一例ですが、このような問題は数多くあるわけです。

◆やらなくてよい仕事はやめて、国家は「健全財政」を目指せ

このように、多額のお金が政府にあっても、有効に使われないことが多すぎるのです。

これを改めるためには、やらなくてよい仕事を無くしていくと同時に、民間の経営の考え方を政府に入れていく必要があります。

ハンコのデジタル化も結構ですが、行政のハンコを押す判断スピードを上げて、許認可行政を改めない限り、生産性の向上は困難でしょう。そうした生産性の向上ができなければ、国家の経済成長も期待できません。

これらを言い換えれば、国家の「健全財政」を目指すということでもあります。

「自助努力により無駄を排し、優れた商品やサービスを提供することで発展していく」という民間では当たり前の考え方を実践することが今の政府に求められる財政政策です。

増税とケチで国民を苦しめる「緊縮財政」と、放漫経営で将来の危機を招く「積極財政」は採るべき道ではないと考えます。

政府は「やるべき仕事」として、国民の安全を守る「治安・国防」を中心に予算を集中すると同時に、規制緩和を通じて、政府の膨大な仕事を減量していくべきでしょう。

藤森智博

執筆者:藤森智博

幸福実現党 政務調査会

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