米英豪の新軍事同盟AUKUSオーカスで対中包囲網強化へ【前編】
https://youtu.be/XT3U-tpm-WM
(9月24日収録)
幸福実現党党首 釈量子
◆米英豪のAUKUSで中国包囲網強化へ
米英豪は9月15日、3カ国による新たな軍事同盟AUKUS(オーカス)創設を発表しました。
AUKUSとは、米英豪3カ国の頭文字から生まれた名称です。軍事面だけでなく、サイバーや量子技術など最先端技術の分野でも協力することになっています。
AUKUS創設のポイントは3点あります。
(1)クアッドを補強する「軍事同盟」
一点目は、日米豪印のクアッドを補強する「軍事同盟」です。
アメリカが主導し価値観を共有する英国やオーストラリアと連携して、安全保障面から中国を抑え込むことが狙いだということです。
中国包囲網の枠組みとして、日米豪印のクアッドがありますが、その中身は、コロナワクチンの安定供給や気候変動への対応に止まっており、軍事同盟まで至っていないのが現状でした。
中国が一番恐れているのは、クアッドが「アジア版NATO」として軍事同盟に発展することです。だから、中国はクアッドに関して、「古い冷戦思考だ」といつも批判しているのです。
今後、軍事同盟としてAUKUSが機能することによって、クアッドの弱点を補強し、中国包囲網を強化することができます。
日本やインドまで加盟国が広がれば、中国包囲網は一層強化されるだろう。日本も近い将来の加盟を見越して、より一層連携を強化すべきです。
(2)オーストラリアの「原子力潜水艦保有」
二点目は、オーストラリアの原子力潜水艦保有です。
AUKUS創設にあたり、豪国は米国からの原潜技術の支援を受けて、原子力潜水艦8隻を建造する予定です。
原潜技術は「機密の塊」「秘中の秘」と言われており、1958年、ソ連の核攻撃から防衛するために、米国が英国に技術供与したのを最後に、どの国にも技術を渡していません。
一から原潜を造るとなると、2030年にならないとできないので、現在購入やリースを検討しており、予想以上に早く配備されそうです。
潜水艦の動力源としては、原子力とディーゼル式の二種類あります。原子力潜水艦はディーゼル式に比べて、極めて優位性が高いのです。
原潜はバッテリーを充電するために頻繁に海面に浮上する必要がなく、ステルス性も高いので長期間潜航でき、南シナ海など広範囲の哨戒活動が可能になります。
また、オーストラリアは米国の「バージニア級原子力潜水艦」の保有を予定しているので、トマホークミサイルを搭載することができます。
オーストラリアは核弾頭を搭載する予定はないと言っていますが、いざとなれば搭載可能です。他にも、特殊部隊「シールズ」を海中から出撃させることもできます。
現在、原潜を保有している国は、米国、英国、フランス、インド、ロシア、中国の6カ国ですが、オーストラリアが7番目の原潜保有国になります。
米国防総省によると、米中が保有する潜水艦について、米国は52隻保有しており、全て原潜ですが、中国は62隻保有してはいますが、原潜は7隻だけです。
中国の残りの55隻はディーゼル式です。オーストラリアの原潜8隻増強は、米軍にとっても大幅補強になり、南シナ海などの抑止力が一段と高まります。
(3)英国の「インド太平洋回帰」
三点目は、英国のインド太平洋回帰です。
英国はEU離脱後、外交方針を転換し、インド太平洋回帰の立場を鮮明にしています。
自由貿易の枠組みである、環太平洋パートナーシップ協定TPPへの加盟申請、クイーンエリザベス号の派遣、香港弾圧に対する非難など、アジアの自由と民主主義を守るために、具体的な取り組みをしています。
AUKUSも、インド太平洋回帰の一環です。
英国のタイムズによれば、今年3月、原潜保有を目指すオーストラリアの海軍から技術供与の相談が英海軍に持ちかけられていました。
英政府は、この情報をコードネームで厳重に管理し、ジョンソン首相やウォレス国防相ら約10人のみが情報を共有し、オーストラリアを交えた米国との交渉を進めました。
ジョンソン首相は16日、「グレート・ブリテンのインド太平洋への関与がどんな意味を持つかと言えば、今回のオーストラリアと米国との協力が答えだ」と述べました。
EU離脱後に掲げた「グローバル・ブリテン構想」のもとに、英国だけで外交成果を上げたことに自信を深めています。
(後編につづく)