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コロナを人にうつしたら罰金?都民ファーストの会の酷すぎる条例案【前編】

幸福実現党党首 釈量子

◆「都民ファーストの会」のトンデモ条例案

都議会の最大会派である「都民ファーストの会」が発表したコロナ対策条例が物議をかもしています。

これは「他人にコロナを感染させたり、クラスターを発生させた事業者に罰金を科す」という罰則付きの条例案を、全国で初めて制定しようとする動きです。

しかし、これは単に東京都の問題だけでは済まない様々な問題をはらんでいます。

条例案は「東京都新型コロナウィルス感染症対策強化に関する特別措置条例(案)」というもので、都民ファーストの会のホームページで公開されています。
https://tomin1st.jp/news/archives/1519/

そこには、「正当な理由なく検査を拒否する者に対して罰則」「PCR陽性者や事業者が要請に従わず感染を生じさせた場合に罰則」という条項が設けられています。

◆条例案のもとになったのはアンケート結果?

なぜ、このような条例を提案するのでしょうか。

「都民ファーストの会」が実施したアンケート結果によると「PCR陽性者が要請に従うよう罰則を科すべき」という回答が54.6%を占め、これが根拠になっているようです。(https://tomin1st.jp/

こうしたアンケートや世論調査の多数意見ということで罰則を設けようとしていますが、あまりにも粗すぎる内容であることから、都議会で反対意見が相次いでいます。

例えば、「感染経路の特定などは非常に難しく、外出が原因で『感染させた』ということを立証するのは困難」「都知事によって感染拡大防止のルールは確立されておらず、休業要請も任意なのに『それを破ったら罰則』というのはおかしい」といった批判です。

◆PCR検査陽性=感染ではない

それ以外にも、重大な問題点があります。

一つは、PCR検査を過信しているという点です。
 
この条例案は、PCR検査の陽性者に関して、その行動を制限し、ルールを制定しようとしていますが、PCR検査の陽性だけを重視することには大きな問題があります。

多くの医療関係者が指摘していますが、PCR検査の陽性者は、必ずしも感染者ではありません。(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75285?imp=0)

遺伝子の断片を検出する「PCR法」では、ウイルスのカケラが喉に残っているなど、「ウイルスの痕跡がある」というだけで陽性と判定されてしまうのです。

また、人に感染させるには、数百〜数万以上の個数のウイルスが必要と言われますが、この検査法では、ウイルスが数個でも陽性の反応が出ることがあります。

このように、PCR検査法では、陽性になった人が、他の人にウイルスをうつす可能性があるかどうか分からないということです。

◆ウイルスがいる状態=感染ではない

また、ウイルスが体内に「いる」という状態と、細胞の中に入り込んでいる「感染」とは厳密には異なります。

感染とは、細胞の中にウイルスが入り込んで初めて起こりますが、表面にウイルスがいるというだけで、PCR検査では陽性になり得ますが、それは感染とは違います。

また、健康で「免疫力」がしっかりしていれば、風邪やインフルエンザにかからない人がいるように、体内にウイルスが取り込まれても、粘膜や粘液など、細胞を守る機能が正常に作用し、自然に排出できるからです。

しかし、PCR検査では、表面の採取したサンプルの中にウイルスがいるというだけで、陽性と判定されてしまう可能性があるのです。

◆罰金の根拠とすべきではない不完全なPCR検査の技術

更に、感染することと、発症することも異なります。

感染しても、発症しない人もいますが、それは、少しの細胞にしか感染しなかったか、免疫系が作用して、感染を小規模で食い止めているケースです。

このように、擬陽性や偽陰性があると言われるPCR検査の技術自体、完全とは言えません。

また、新型コロナ対策分科会長の尾身茂氏が10月中旬に行われたイベントにおいて「感染後3日~3週間は陽性が続くが、実際に感染性を有するのは半分程度。つまり誰にでもPCR検査を行った場合、陽性者の約半分は感染性がない」と注目すべき発言をしました。

つまり、PCR検査で陽性が出たからと言って、その人の周辺で感染者が出た場合に責任を追及し、罰金を科すという根拠にはなりえないのです。

罰金という大きな責任の追及の根拠に、PCR検査を用いるのは、非常に不適当なのです。

◆インフォデミックによって生まれる悪しきポピュリズム

それ以外にも、感染者が特定された場合、またクラスターとなったお店・事業所が報道されることによって、インターネットやチラシ等で誹謗中傷を浴びせられ、脅迫文を送りつけられるような事例まで報告されており、社会問題になりました。

学校でも、感染者が出た家庭の子供にいじめが起きたということも発見されています。

こうした風潮を煽っているのがマスコミ報道です。

インフォデミックという言葉を発信される専門家もいらっしゃいますが「コロナをうつされる」という危険や、人々の不安を煽った結果、マスコミを通して情報を得る人にますます恐怖心を植え付けています。

都民ファーストの会は世論調査、つまり民意をテコにした条例案を主張していますが、不安に煽られた世論を受けて、それに迎合した政策を掲げて支持率を上げようとするのは、これは典型的な悪しき「ポピュリズム」そのものです。

こうした方向に政治が動けば、人々の間でますます不信が募り、感染者やその家族を「悪」だとして、排除するような動きが横行し、差別や人権問題になります。

こうした動きを本来、政治の側が煽るようなことは断じてしてはならないことです。

釈 量子

執筆者:釈 量子

幸福実現党党首

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