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成長戦略ナレッジ(2)「地方独自としての消費減税の可能性」

政調会成長戦略部会は、地方独自としての消費減税の可能性について、「成長戦略ナレッジ」として論点整理を行いましたので、皆様にご紹介いたします。

成長戦略ナレッジ(2)「地方独自としての消費減税の可能性」(2020年2月3日)

http://hrp-newsfile.jp/2020/3810/

幸福実現党成長戦略部会長 西邑拓真
〇地方消費税の仕組み

・現在、消費税の標準税率は10%(軽減税率は8%)ですが、そのうち国税部分が7.8%(同6.24%)、地方消費税分が2.2%(同1.76%)となっています。現在の税制では、原則として地方消費税の税率は一律となっており、各自治体が独自に税率を設定できるわけではありません。

・消費税は、負担者が消費者で、納税者が事業者と、負担者と納税者が異なるという意味で「間接税」と位置付けられます。事業者は消費税を国税分と地方税分を併せて税務署に一括して納付し、その後地方税分については各自治体(都道府県、市町村)に払い込まれる仕組みとなっています。

・「消費税の最終的な負担は消費者であり、税収は最終消費者に帰属すべき」との考えにより、自治体に払い込まれる地方消費税額は、小売販売額や人口、従業者数などを基準に「精算」した上で配分されます。(*)

(*)「地方消費税の精算基準の概要」(https://www.soumu.go.jp/main_content/000481794.pdf)参照

〇地方自治体が独自として消費減税するには課題もある

・ここでは、地域活性化策として地方消費税の減税を実施するにあたっては、どのような状況が起こりうるか議論していきます。まずは、税制を変更して、地方自治体が独自に地方消費税の税率を変更することができるようにした状況を想定します。

・地域ごとに税率が異なることになれば、消費者や事業者などにとってもそうですが、消費税は小売段階だけでなく製造、卸売など中間段階にもかかることも考えれば、現状の「精算」機能を据え置いた場合などは、複雑な状況が起こることは避け難いと思われます。税率設定の自由化を行う際には、周辺の制度設計を見直す必要性が生じるなど、クリアすべき課題が多いというのが実際のところです。

・欧州や北米では、国家間や国内の州・地方政府間で付加価値税、あるいは売上税の税率に差が生じている時、自身が属する地域ではなく、あえて税率の低い地域に足を運んで商品を購入するという「クロスボーダー・ショッピング」が生じることが観察されています。これは、税を含めた商品の価格差が、移動に伴う様々なコストを上回る際に生じるものです。

・消費が行われる場が、税率が高い地域から低い地域へ移ることになれば、税率が高い地域はクロスボーダー・ショッピングが生じるのを避けるため、税率を低くしようとするでしょう。こうした動きが全国に広がれば、地域間で税率引き下げ競争が生じることも想定されます。

・税率が下がること自体は喜ばしい面が大きいですが、税収減が伴わざるをえない部分も否定できません。国の財政状況を考えれば、現状では地方交付税交付金を大きく増額することは考えにくいため、地方自治体が減税策を行う際には、公共サービスの提供のあり方を見直すなど、地方行政のスリム化を図らなければならないでしょう。

・また、地方消費税にかかる税率設定のあり方については現状のまま据え置くとした場合は、例えば、全国数カ所に「地域活性化のための特区」を設け、特区内の消費税は低く抑える、という方策も考えられます。ただ、人口減少に喘ぎ、地方活性化を急ぐべき地域は多く存在するほか、クロスボーダー・ショッピングが行われて特区周辺の消費が減退して不公平な状況が生じる可能性を含むため、特区の選定に向けては、一定の根拠が求められることになるでしょう。

〇地域活性化に向けて

・以上、様々な検討課題は残されてはいるものの、消費税の減税策については、「消費税の5%への減税を目指す」のを前提としながらも、当面の代替案として、「(a)地方消費税は地方が独自に設定できるようにするなど一連の制度改正を行い、地方消費税や交付税交付金に頼らない地方自治体(地方行政のスリム化や、企業や住民の誘致など他の地方活性化策による税収アップ)を目指しながら、地方自治体として消費税の地方税分を引き下げる、もしくは(b)全国に数カ所、地域活性化のための特区を設け、特区内で独自の消費税率(例えば5%)を設ける。」とするのも一つでしょう。

・その他、地域活性化に向けては、農業分野や都市開発などにおける規制のあり方の見直し、都市・地方間における物流・人的交流の活性化に向けたリニア新幹線の整備をはじめとしたインフラ整備、観光資源の最大限の活用など、様々挙げられるでしょう。

・地方を中心に少子高齢化が急激に進行するわが国にあって、地方独自として消費減税を実施するとの可能性を含めて、有効な地域活性化策の実施が急がれます。

(参考)
鈴木将覚「地方消費税の役割と課題」(みずほ総合研究所)(2015年2月4日)
深澤映司「地方消費税を巡る税制立設定の自由化に伴う経済的影響」(国立国会図書館レファレンス)(2014年4月)

以上

西邑拓真

執筆者:西邑拓真

政調会成長戦略部会

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