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【党首討論】主な発言とその問題点

http://hrp-newsfile.jp/2019/3641/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

7月3日には、日本記者クラブで党首討論が行われました。

与野党7党の党首が議論したのですが、今までと同じく、減税や自主防衛の強化など、日本に本当に必要な政策は語られませんでした。

しかし、それでも、各党の主張と問題点がよくわかる機会ではあるので、主な発言を紹介してみます。

◆自民党:増税路線の固定化

安倍首相は、消費税の10%への増税後の財政を問われ、「今後10年くらいの間は必要ない」と答えました。

当面の間、10%の税率を維持し、その後、次の増税の可能性をほのめかしています。

つまり、過去の増税を間違いだとは認めず、現状の増税路線を維持することを決めたわけです。

◆立憲民主党:ついに消費税増税の間違いを認めた

いっぽう、枝野代表は、民主党政権の頃、三党合意で消費税増税を進めたことについて「結果的にあの判断は間違っていた」と発言。

意外にも「間違い」を認めました。

しかし、消費税に関する公約は増税凍結にとどまっているので、ほんとうの意味では反省できていません。

本当に間違いを認めたなら、8%の税率も撤回し、5%に戻すことを訴えなければいけないはずです。

◆公明党:憲法論から逃げて票を盗みたい

山口なつお代表は、記者との質疑で「公明党の本心は安倍さんの憲法改正は迷惑だと思っているのではないか」と問われました。

この質問は的を射ています。

山口代表は、自民党の改憲議論を「政党の立場」として認め、「もっと与野党の枠を超えて議論をしっかりと深めて国民の認識を広めることは大事だ」答えたのですが、これでは、公明党の立場がよく分かりません。

党としての主張は「改憲」「護憲」などの「中身」が必要なのに、公明党は「議論しよう」としか言っていないからです。

結局、支持母体の創価学会は護憲なのに、公明党は改憲派の自民党と連立しているという、矛盾を隠すための答弁に終始しています。

憲法論で立場を明確にしないまま、バラマキ政策で票を集めて逃げ切ろうという意図が伺えます。

◆野党連合の矛盾①:自衛隊の「合憲/違憲」、日米同盟の「維持/破棄」

安倍首相は、この討論で野党連合の政策の矛盾を強調しています。

「共産党は自衛隊は憲法違反だというのが明確な立場だ。枝野さんは合憲ということだろうが、もし枝野さんが福井県民だったら、この候補に一票入れるのか」

野党連合を見ると、現在、立民党と国民民主党は自衛隊を「合憲」、共産党は「違憲」としています。

(社民党は村山政権の頃、自衛隊を合憲としたが、現在、党HPにて「現状、明らかに違憲状態にある自衛隊は縮小を図り」と記載。態度は転々としている)

また、日米同盟に関しても、立民党と国民民主党は「維持」、共産党は「破棄」なので、立場が一致しません。

(社民党公約は「日米安保条約は、将来的に経済や文化面での協力を中心にした平和友好条約への転換をめざします」という謎の主張を記載)

討論で、枝野代表は「立憲民主党は明確に日米同盟堅持」とも強調していたので、立憲民主党が共産党と共闘しているのはおかしいのです。

結局、野党連合は「反安保法制」だけで結託しており、まとまった安全保障政策がありません。

こうした政党が政権を取ったところで「国民の生命と安全と財産を守る」という政治の責任を果たせるはずがないといえます。

◆野党連合の矛盾②:年金政策が不一致なのに年金不安をなくせる?

安倍首相と野党の論戦では、年金が大きな争点になりました。

「志位さんはマクロ経済スライドを廃止すると言っている。枝野さんは民主党政権時代も維持してきたから、維持するという考えなのだろう。もし基本政策が統一されていないのであれば、非常に不誠実だ」

その際に、年金における野党政策の不一致もやり玉にあがりました。

将来世代のために物価・給料水準に応じて今の高齢者への給付を減らす「マクロ経済スライド」に関しては、国民民主党も否定的な発言をしています。

「マクロ経済スライドを適用して世代間の公平を図ろうとすると、どうしても削らざるを得ない」(玉木代表)

国民民主党は、年金で所得の最低保障を行いたがっているので、この制度がその妨げになると見ているようです。

元民主党議員がつくった政党なので、昔に自分たちが維持した制度について「廃止」とは言えないのですが、国民民主党の年金政策は、かなり共産党寄りになってきています。

◆共産党:「減らない年金」?

共産党の志位委員長は「マクロ経済スライドは廃止し、減らない年金にすべきだ」と主張。

これに対して、安倍首相は「(その場合)今40歳の方が、もらう段階になって年金の積立金は枯渇する」と反論しました。

これは、安倍首相のほうに理があります。

年金は、今の高齢者に多めに給付されており、年を減るに従って給付額が次第に減るように設計されていますが、マクロ経済スライドは、物価や賃金の変動に応じて、直近の世代に払いすぎにならないよう、給付額を削減する仕組みだからです。

これを廃止した場合、今の世代は後の世代に比べると「もらいすぎ」になってしまい、「世代間不平等」が拡大します。

高齢者がどんどん増え、高齢者1人あたりの現役世代の数が減っていくわけですから、給付金が減っていくこと自体は避けがたいものがあります。

志位委員長の主張には無理があり、結局、今の高齢者のために年金の積立金をばらまくだけで終わってしまうでしょう。

◆日本維新の会:「身を切る改革」は何のため?

維新の会の松井代表は「身を切る改革」を提唱。

「大阪府と大阪市で行革をすることで教育無償化の財源を生み出した」

その結果、「教育無償化」の財源ができたと自慢し、これを全国に広げるべきだと主張しました。

維新に関しては「お金の使いみち」が妥当かどうかという問題があります。

今の教育無償化は、(消費税などで)全世帯から集めたお金を子供のある世帯に配る行為なので、必ずしも公平な政策ではありません。

子供のいない世帯からお金を集め、そのお金を子供のある世帯に移転させているからです。

国の予算を浮かせることができたならば、その分だけ減税するか、全国民に恩恵がある政策(例えば防衛費など)に回すのが筋です。

維新に対しては「何のために身を切るのか」という問題があります。

◆社民党:自己責任の否定=社会主義

社民党は党首が体調不良で欠席し、吉川幹事長が出席という体たらくでした。

吉川幹事長は「かたくなに憲法を守る」と従来の方針を表明。

特に注意を要するのは「国民に自己責任を問うのは政治の責任放棄」という発言です。

自己責任を否定した政治の行きつく先は、国が親方日の丸で企業や個人を養う社会主義の世界だからです。

政治は「最低限のセーフティネット」で苦しんでいる人を助けるべきですが、それは自己責任を否定することと同じではありません。

◆「減税と安全」の幸福実現党が今こそ必要

結局、党首討論では、本当に必要な「消費税5%への減税」や「自主防衛の強化」についての議論はありませんでした。

17年の北朝鮮のミサイル危機、18年以降の米中対立の本格化、19年のトランプ「同盟不公平」発言など、日本への警告とも取れる出来事が続いているのですが、それでも「自分の国は自分で守る」という議論は、議員から出てこないのです。

憲法9条の1項・2項を含めた全面改正の議論は、どこかへ雲散霧消しています。

また、米国も中国もイギリスもフランスも減税にかじを切っているのに、日本だけはなぜか増税路線です。

これでは、景気の先行きが思いやられます。

しかし、既存の政治家が動かないからこそ、新しい選択を訴える勢力が出てこなければいけません。

幸福実現党は、憲法9条の根本改正や、消費税5%への減税といった、本当に必要な政策の実現を訴えてまいります。

【参照】

・産経新聞 2019年7月4日付
・読売新聞 2019年7月4日付(朝刊)
・朝日新聞 2019年7月4日付(朝刊)
・毎日新聞 2019年7月4日付(朝刊)

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

HS政経塾

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