このエントリーをはてなブックマークに追加

G20で、日本は「拘束された日本人の解放」を中国に要求すべき

http://hrp-newsfile.jp/2019/3614/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆中国に拘束されたカナダ人解放で米国とカナダが連携

6月28~29日に大阪で開催されるG20首脳会談を前にして、各国の首脳は様々な「戦略」を練っています。

例えば、日本と同じく、米国の同盟国であるカナダは、米国と連携して、G20で中国に拘束されたカナダ人の解放を要求する方針を決めました。

トルドー首相は、6月20日の米加会談において、この件でトランプ大統領の合意を引き出しています。

「カナダを助けるためにできることは何でもやる」(トランプ大統領)

拘束されたカナダ人に関しては、ファーウェイ幹部の逮捕への見せしめとして、すでに死刑判決が言い渡されているので、米加首脳の双方が、何とかして取り返そうとしているのです。

◆「拘束された日本人」を放置している日本政府

しかし、何度もトランプ大統領と会談した安倍首相には「中国で拘束された日本人を、日米で連携して解放を求める」という構想がないようです。

北朝鮮の拉致問題で米国に力添えを頼んでいることは、たびたび報道されていますが、こちらに関しては、なしのつぶてに近い状態です。

5月20日には、拘束された日本人に対して懲役15年の判決が出されましたが、菅官房長官は「邦人保護の観点から、できる限りの支援を行っていきたい」としか述べませんでした。

本当に罪を犯したかどうかも明らかにされないまま、日本人が15年も刑務所に入れられているのに、はっきりと抗議していないのです。

◆相次ぐ「中国政府による日本人拘束」と実刑判決

近年、中国政府にスパイと疑われた日本人の拘束が相次いでいます。

2015年に5月20日には、温泉開発の調査をしていた50代の日本人男性に対して、中国の地方裁判所(海南省第1中級人民法院)が、懲役15年と10万元(約160万円)の財産没収の判決を言い渡しています。

この男性は、千葉県船橋市にある「日本地下探査」(地質調査を行う)の協力会社(※)の関係者で、17年3月、海南省で温泉開発の調査を試みた際に、拘束されました。

(※産経報道によれば遼寧省大連市にある「大連和源温泉開発公司」の社員)

「国家機密を窃取し、国外に違法に提供した罪」が適用され、男性のパソコンなどから地図を含む大量の資料が発見されたとのことですが、具体的に、何が「国家機密」の窃取にあたるのかは、定かではありません。

この会社に関しては、他にも取締りが行われ、山東省で温泉探査をしていた社員も拘束されています。

17日には同省の中級人民法院が、その日本人社員に対して、懲役5年6カ月と財産3万元(約48万円)没収の判決を言い渡しました。

また、北京市では、5月21日に、日中青年交流協会の鈴木英司理事長に、スパイ罪で懲役6年の実刑判決を言い渡しています(5万元の財産没収を伴う)。

さらには、18年2月には、伊藤忠商事の40代の男性社員が広州市で拘束され、公判が行われています。

2015年以降、9人の日本人が国家機密を盗んだ罪などで起訴され、8人に実刑判決が出されているのです。

◆安倍首相 日中関係は「完全に正常な軌道へと戻った」 そんな馬鹿な・・・。

これらの日本人に重刑が科されるまでの事実関係は、明らかにされていません。

そうした状態で懲役刑などの重刑が科されるのは、まともな自由民主国ではありえないことです。

中国では「共産党」が議会も行政も司法もすべて指導することになっているので、政権の意図から離れた裁判が期待できません。

そんなところで、日本国民が囚われ、重刑を課せられているのを無視することは、国家としての責任放棄です。

人間には、まともな裁判を受ける権利があるのですから、これは人権侵害を黙認しているのと同じことです。

4月15日の日中外相会談で、河野外相は、中国が拘束した日本人9人の早期帰国を要請しましたが、中国側は「国内法令に基づいて適切に対応する」と述べただけで終わり、結局は、重刑判決で終わったのです。

安倍首相は、3月6日に「完全に正常な軌道へと戻った日中関係を新たな段階へと押し上げていく」と述べましたが、実際には、異常な出来事が起きています。

「昨年秋の訪中で習近平国家主席と互いに脅威とならないことを確認した」はずなのに、日本人が人質のように囚われ続けています。

(※首相発言は参院予算委での発言)

◆G20で日本人拘束を抗議し、早期帰国を中国に要求すべき

日本は、6月末のG20で、日本人の拘束と実刑判決に抗議し、早期帰国を中国に要求すべきです。

こんなことをする中国の国家主席を国賓待遇でもてなすのは、馬鹿げています。

国民の声明と安全と財産を守るのが、国家の役割なのですから、日本人の拘束解除がなされ、帰国の道筋が立たなければ、国賓待遇を取り消すぐらいのことができなければ、日本は、国家とは言えません。

日本は明確に香港デモを支援すべきですが、そもそも、自国民の拘束に対して抗議ができない現状を改めるべきです。

それができないのは、選挙対策のために「日中友好」という人気取りの看板を掲げているからなのではないでしょうか。

既存の政党は、この問題をまともに取り上げていませんが、幸福実現党は、国民の生命と安全と財産を守るために力を尽くしてまいります。

そのために、拘束された日本人の解放を訴えてまいります。

【参照】

・日経電子版「トランプ氏、カナダ人拘束問題を提起へ 米中会談で」(2019.6.21)
・産経ニュース「『邦人保護の観点からできる限り支援』 菅氏、中国で実刑判決の日本人」(2019.5.21)
・AFP通信「日中交流団体役員に懲役6年=スパイ罪で、日本人今月4人目」(2019.5.21)

・時事ドットコム「邦人に懲役15年=50代男性、国家機密入手・提供-中国海南省」(2019.5.20)
・産経ニュース「東シナ海、中国に自制要請 拘束邦人の帰国も 日中外相会談で河野氏」(2019.4.16)

・産経ニュース「首相、日中関係『完全に正常な軌道に戻った』 参院予算委で」(2019.3.6)

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

HS政経塾

page top