エネルギーは日本の安全保障と経済の基盤(2)電気事業の「ゲームチェンジ」
http://hrp-newsfile.jp/2019/3536/
幸福実現党 政務調査会エネルギー部会
◆現政権による「電力システム改革」
2011年の福島第一原発事故後、日本の電力業界のリーダーであった東京電力の国有化を契機として、電気事業への政府の関与が強まっています。
政府は2013年4月に「電力システム改革に関する改革方針」を閣議決定し、第1弾=広域系統運用の拡大(2015年4月施行)、第2弾=小売全面自由化(2016年4月施行)、第3弾=発送電分離(2020年4月施行)という3段階の改革のための電気事業法改正案を、2015年までに国会で成立させました(※1)。
このうち第1弾は、東日本大震災の教訓を踏まえて、原則として地域ごとに行われてきた電力需給の管理を、新設した「電力広域的運営推進機関」(※2)が地域を越えて行い、安定供給を強化するものです。
大川隆法・幸福実現党総裁は、震災直後の2011年4月の講演(※3)で、緊急時に電力を広域融通できる仕組みの強化を訴えており、この施策は我が党の考え方とも合致します。
また、第2弾の小売全面自由化については、電力会社の経営が短期志向になるものの、サービスの向上など一定の効果が期待できるため、現政権の方針を静観してきました。
◆発送電分離は、松永安左エ門氏による戦後の電気事業体制の解体
一方、第3弾の発送電分離は、送配電事業者を公的管理下に置く事実上の「電力国家管理政策」であることから、我が党はこれを見直し、発電・送配電・小売の一体経営(垂直統合)を維持したまま大規模化を図るべきと訴えてきました。
もともと日本の電気事業は、「電力の鬼」と呼ばれた松永安左エ門氏などの起業家による民営事業として、明治時代に始まりました。その後、1938年の国家総動員法に続く電力国家統制により、発電・送電は特殊法人の日本発送電に接収され、政府の管理下に置かれます。
戦後、松永氏は9電力会社への地域分割・民営化・垂直統合を強く主張し、日本発送電による全国独占体制の維持や発送電分離を主張する勢力と激しく対立しました。
しかし、最終的にGHQが反対派をねじ伏せる格好で、1951年に民営の9電力(その後、沖縄電力が加わり10電力)体制が発足し、現在に至ります。
松永氏は、送電部門を分離すれば必ずそこに政府が介入し、民間による自由で効率的な経営ができなくなることを見抜き、断固として発送電分離に反対しました。
よって、発送電分離は、日本の電気事業体制の約70年ぶりの大きな方向転換となりますが、さまざまな弊害も指摘されています。
例えば、電力会社はこれまで、発電と送電の設備の建設時期をずらし、キャッシュフローを融通することで巨額の長期投資を行ってきましたが、発送電分離により、供給義務を負わない発電会社は短期的な利益で投資を判断するため、安定供給に必要な発電設備が不足します。
また、送電会社はこれまで以上に公共インフラとしての役割を求められるようになり、より政治的な理由で投資を判断するようになります。
その結果、供給安定性の低下と電気料金の上昇が起きる可能性がありますが、実際に、電力自由化と発送電分離を実施したフランス以外の欧州各国では、こうした傾向が見られます。
このような理由で、我が党は発送電分離の見直しを訴えてきました。
◆「ゲームチェンジ」を受け入れ、電力システムを強化
しかし、もはや「電力システム改革」は後戻りできないところまで来ています。その理由は、再生可能エネルギーの急速な普及と低コスト化にあります。
今後は自由化された電力市場(kWh市場)に大量の再エネが流れ込んでくるため、このままでは火力などの大規模発電所は固定費が回収できなくなり、経営が困難になります。
仮に小売全面自由化と発送電分離を撤回したとしても、再エネを排除しない限り、大規模発電所の置かれた厳しい状況は変わりません。
しかし、低コスト化が進む再エネを排除して大規模発電所の経営を守ることは本末転倒であり、再エネを生かしつつ、供給安定性と経済性を確保できるよう、適切な制度設計によって電力システムを強化するしかないのです。
我が党は、このような電気事業における「ゲームチェンジ」をいったん受け入れ、2050年頃までは政府がこれまで以上に電気事業に関与することによって、再エネの大量導入と電力の安定供給を両立する体制を構築することとしました。
◎エネルギー部会では、ご意見・ご質問をお待ちしています。ご質問のある方は、energypolicy2019.hrpprc@gmail.com までご連絡ください。ご質問にはできるだけ本欄でお答えします。
参考
※1 電力システム改革について 資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/system_reform.html
※2 電力広域的運営推進機関 https://www.occto.or.jp/
※3 「『震災復興への道』講義」 大川隆法総裁 2011年4月24日
執筆者:webstaff