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「日本を再び偉大にする」ための法人税減税

http://hrp-newsfile.jp/2019/3504/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆法人税減税に消極的な自民党

本年は消費税の引き上げが注目されていますが、それ以外にも重要な税金があります。

その一つが法人税です。

前回の選挙で自民党は消費税増税を掲げましたが、公約では法人税減税を取り上げませんでした。

なぜかというと、当時、消費税増税に反対した野党が、大企業に増税をすべきだと訴えていたからです。

ここで自民党が法人税を減税したら、「庶民に増税、企業に減税」となるので、17年の選挙では、この話題は取り上げられませんでした。

ただ、その後、アメリカで法人税が減税されたので、安倍政権も対策を打ち出しました。

わずか3年間に限って「大企業は前年度比で3%、中小企業は1.5%の賃上げを条件にして減税する。IoTへの投資なども税から割引く」と決めたのです。

しかし、範囲が狭く、期間も短いので、「法人税が安くなった」とまでは言えません。

自民党は、2014年や16年の選挙で「法人税の実効税率を2割台にする」と公約したのですが、これに関して、現在は沈黙を守っています。

どうやら、最近は「29.74%」の実効税率でよいことになったらしいのです。

◆法人税の減税が必要な理由とは

しかし、法人税の減税は必要です。

それは、国をまたいだ企業の熾烈な競争が続いているからです。

例えば、シャープは2012年に経営危機に陥りましたが、当時、シャープとサムスン電子を比べると、日韓の税率差がサムスン電子に約1600億円の余裕資金を生み出していたと見積もられています(経済産業省「法人実効税率引下げについて」2010/10/28)。

1600億円は、シャープの亀山第二工場の投資額(約1500億円)を超える規模です。

こうした税率差が企業の重荷になり、法人税が高すぎると企業が海外流出したり、外国企業がやってこなくなったりします。

そのため、法人税の税率は、諸外国の動向も見ながら決めなければなりません。

◆主要国が減税にかじを切った

現在、主要国では法人税が下がっています。

アメリカでは、2018年から連邦が集める法人税が35%から21%に下がりました。

この上に各州の税率を足した平均税率は25.7%になります。

さらに、中国は25%の法人税に対して、控除の拡大や中小企業への優遇税制などの改革を行いました。

2020年までにイギリスの税率は19%から17%になり、フランスは33%から25%まで減税する予定です。

しかし、日本は約30%の税率のままなのです。

(※米国の平均値は米シンクタンク「TAX FOUNDATION」の記事を参照)

◆世界の法人税率の平均は23~24%程度

KPMGコンサルティング社の調査によれば、世界の法人税率の平均は23.8%です。

先進国が数多い「OECD」の平均は23.4%。

EU平均、アジア平均はどちらも約21%です。

中国以外のアジアの国々を見ると、韓国とインドネシアは25%、マレーシアは24%。

タイやベトナム、台湾は20%で、シンガポールは17%、香港は16.5%でした。

このあたりの国とは1割前後の税率差があります。

※本節の税率はKPMGの「Corporate tax rates table」を参照。正確には、世界平均は23.79%、OECD平均は23.38%、EU平均は21.16%、アジア平均は21.09%。

◆「世界で減税、日本も遅れて減税」でよいのか

安倍政権も、一応、法人税(実効税率)を35%から30%に下げました(34.62%⇒29.74%)。

しかし、減税幅は米国に比べると小さいのは事実です。

2000年以降、すでに減税した国々との税率差は、大きく変わらないでしょう。

OECDによれば、中央政府と地方政府を併せた税率の平均値は、2000年に28.6%でしたが、2018年には21.4%まで下がっているからです。

2010年代に日本も法人税を下げましたが、これに対して、評論家の大前研一氏は、「法人税率を戦略的に考える場合、外国企業の誘致を目的にするなら10%台、企業に国内から逃げられないことを目的にするなら20%台半ば」にすべきだと述べていました。

「ライバル国が10%台に引き下げて『我が国にいらっしゃい』と言っているのに、『30%まで下げました。ぜひ日本へ』と叫んでも誰も振り向かない」(大前氏)からです。

アメリカのムニューチン財務長官は、減税法案が成立したあと、「我々は法人税を引き下げる。それで多数の雇用が米国へ戻ることになる」とも述べていました。

こうした大胆な決断がなければ、企業経営者の心は動きません。

◆レーガン減税で「再び偉大になった」アメリカ

「減税後」の税収減を恐れる方も多いのですが、米国では、レーガン政権の大減税がその後の繁栄の礎となっています。

当時、所得税だけでなく、法人税も減税が行われ、1986年の改革で税率は46%から34%に下がりました。

法人税は12%も下がりましたが、その後、米国経済は復活。

「米国を再び偉大にする」というトランプ大統領のスローガンは、レーガンの先例にならったものです。

大胆な減税で繁栄の礎をつくることが大事です。

そのために、幸福実現党は「1割台まで」という大胆な法人税減税を掲げています。

◆米中よりも高い法人税で企業を競争させるのか

日本より市場規模の大きな米国と中国が2割台の税率なのに、我が国は約30%の税率を守り、高飛車に構えています。

しかし、今の日本経済に、米国よりも高い税率でも海外企業が集まるほどの魅力があるのでしょうか。

また、中国よりも高い税率で競争に勝てるほど、日本企業に勢いがあるのでしょうか。

今、米中の企業群が世界最先端を目指して、熾烈な競争を開始しています。

その中で、日本が両国よりも高い税金の上にあぐらをかいているのは危険です。

そのため、幸福実現党は、法人税の実効税率を10%台まで下げるべきだと訴えています。

これは、安倍政権のような「最低限の減税」ではありません。

幸福実現党は「最大限の減税」で「日本を再び偉大にする」ことを目指してまいります。

【参考】

・経済産業省「法人実効税率引下げについて」2010/10/28

・Kyle Pomerleau “The United States’ Corporate Income Tax Rate is Now More in Line with Those Levied by Other Major Nations”(TAX FOUNDATION2018,2,12)

・KPMGコンサルティング「Corporate tax rates table」

・大前研一「選挙目当ての税制論議はもう止めてほしい」(日経BPネット 2010/4/6)

・日経電子版「[FT]米国の法人税制改革、トランプ流なら企業行動激変」2016/12/2)。

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

HS政経塾

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