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中小企業の知的財産権が守られる社会をつくる

http://hrp-newsfile.jp/2019/3502/

HS政経塾スタッフ 遠藤明成

◆日本商工会議所が「知財防衛」のための改革案を提言

3月20日に、日本商工会議所(日商)は、「知的財産政策に関する意見」と題した政府への要望を発表しました。

そこには、お金に余裕のない中小企業でも知財(知的財産)を守れるようにするための具体策が並べられています。

心血を注いで生んだ知財が侵害され、「泣き寝入り」になる企業を減らすために、日商が改革案をまとめたのです。

◆なぜ、今、知財が大事なのか

この意見書は、いくつかのデータをあげ、中小企業の特許取得を支援すべきだと訴えています。

ここ10年間で、世界では特許出願件数が1.7倍になっているのに、日本では2割ほど減りました。

一国の特許出願件数のなかで中小企業が占める割合で比較すると、今や日本は15%しかなく、26%のアメリカ、70%を超える中国とは大きな差がついています。

そうした現状を踏まえ、トランプ政権の知財防衛策などを例に取り、日本政府は競争力を強化するために、法制度を整えるべきだと主張しています。

◆中小企業の特許取得が進まない理由

では、どうして中小企業の特許取得が進まないのでしょうか。

それは、手間がかかるわりには、知財を侵害した相手の罪を証明し、賠償金を得るのが難しいからです。

日商の意見書には、公開された特許を侵害するのは簡単だが、その証拠は加害者の手元にあるので、被害の証明が難しいとも書かれていました。

理屈上は知財侵害をめぐる刑事裁判もできるようにはなっています。

しかし、侵害の有無の判断が難しいため、実際は、なかなか起訴にまでは至りません。

結局、「労多くして益少なし」なので、特許を取らない中小企業も多いわけです。

◆知財を侵害され、「泣き寝入り」に終わる例も多い

しかし、それでも知財侵害は起きています。

日商の意見書はいくつかの例を上げていました。

○1:他社の特許を侵害しながら、見つかったらライセンス交渉をすればよいと開き直る

○2:特許侵害が判明したあとにライセンス交渉を引き伸ばし、逃げ切りを図る

○3:中小企業の人材難や資金の乏しさを見越して、裁判の長期化を図り、訴えを取り下げさせる

この場合、訴訟費が損害賠償額を上回ることが多いので、中小企業からは「泣き寝入りせざるをえないという声があがっている」とも指摘していました。

◆知財侵害を訴えても、うまくいくとは限らない

実際、この種の訴訟で、被害者が救われるとは限りません。

日商の意見書には、驚くべき数字が並んでいました。

まず、知財が侵害された証拠を手に入れるのが難しいために、被害者(原告)の6割以上が敗訴しています。

さらに、侵害者が「特許は無効である」と言って対抗してきた場合、37%もの特許が無効にされています。

そのうえ、特許侵害の裁判は専門性が高いため、債権回収の訴訟の約3.5倍の弁護士費用がかかるのです。

これで特許取得が進むわけがありません。

◆事態は深刻。日商の改革案とは

事態はきわめて深刻なので、日商は多くの改革案を出しています。

○1:損害賠償額の引き上げ(「通常の特許実施料相当額」以上にする)

○2:諸外国を参考にして、知財侵害者に利益が残らないようにする

○3:証拠集めを支援し、見込み違いの提訴を防ぐために、訴訟提起前にも査証を導入する

(※この査証で新たな証拠収集手続きが追加される)

○4:査証に一定の強制力を持たせ、証拠を侵害者に提出させる

○5:海外の侵害者を罪に問うことが難しいので、米中と同じく、懲罰的な賠償制度を導入する

○6:知財を持つ企業のために税制優遇制度や低金利の融資制度を設ける

○7:特許侵害者に訴訟費を負担させる

そのほか、「大学や研究機関の特許を中小企業が事業化評価をする間、無償開放し、事業化後に有償契約に移行する制度を整備する」という案も出ていました。

◆知財防衛なしに企業はメジャーになれない

知財は、企業が新たな発明を行い、ブランドを確立する際に、もっとも重要な価値の源です。

有名な例をあげれば、世界を制した「コカ・コーラ」も、1886年に一人の薬剤師(ジョン・S・ペンバートン博士)が1杯5セントの試作品を4軒の店(場所はアトランタ)で売り出したことから始まったのです。

その後、社業は別の経営者に委ねられましたが、コカコーラ社は、原液の作り方を秘密にし、それをブランドに高めることで、130年以上も巨大な価値を生み出してきました。

しかし、そうなるまでに「知的財産権」が守られなかったら、われわれは「コカ・コーラ」を違う名前で呼ばなければいけなくなったことでしょう。

◆知的財産権が守られなければ、天才や熱意ある個人は出てこない

知的財産権を守ることは、一人の発明が広まり、地域から国家を超えて人を潤していく歴史を守る行為でもあります。

一つの商品の中には、それを発明した人の、熱い願いが宿っています。

それが守られなければ、多くの人の幸福を願って、発明に心血を注ぐ天才が出てこなくなるのです。

かつて豊田佐吉は、日本にも特許制度ができたことを知り、発明の道を志しました。

「これから何かお国のためになるものを考え出さねばならぬ」

彼はそう心に誓い、豊田式織機を発明しました。

その後、織機から自動車に本業が変わるわけですが、特許が守られなければ、トヨタ自動車の礎が築かれることもありませんでした。

◆「知財」は経済の礎――これを守らなければ、国は衰退する

知財が守られなければ盗み放題なので、努力が報われない社会へと堕落していきます。

幸福実現党は「個人的自由、起業の自由、自由主義経済による繁栄に軸足を置いている」政党です。

我々は「国民がセルフ・ヘルプの精神を失った国家は必ず衰退していく」と信じています。

これが幸福実現党の創立者である大川隆法総裁が『政治の理想について』という著作で訴えた精神です。

その精神に則って、国民が心血を注いでつくった「知財」を守るべく、力を尽くしてまいります。

【参考】
・日本商工会議所HP「知的財産政策に関する意見」
・日本商工会議所HP「『知的財産政策に関する意見』について」
・日本商工会議所HP「知財紛争処理システムの改革を」
・日本コカコーラ株式会社HP「年表から見るコカ・コーラの歴史」
・楫西光速(著)『豊田佐吉』吉川弘文館
・大川隆法(著)『政治の理想について』幸福の科学出版

遠藤 明成

執筆者:遠藤 明成

HS政経塾

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