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崩れ去った信仰の優位――バチカンから中国共産党に売り渡された地下教会信者たち

http://hrp-newsfile.jp/2018/3445/

幸福実現党 HS政経塾1期卒塾生 湊 侑子

◆悪魔と合意形成をしたバチカン(ローマ法王庁)

10月3日からキリスト教カトリックの総本山バチカンにて行われている「世界代表司教会議」ですが、1967年の第一回開催以来のトピックがあります。中国の司教2人が初参加したことです。

フランシスコ法王は「今日初めて、中国から司教2人が出席している。温かくお迎えしたい」と歓迎の意を表したと言われています。

「世界代表司教会議」は数年に一度開かれ、信仰の重要性が話し合われます。

無神論を掲げる中国共産党は、1951年にバチカンと断交しました。その後、中国政府系の団体が独自に国内のキリスト教司教を任命してきました。

バチカンは、信仰の優位を訴え、司教の任命権はローマ法王が持つという考えの下、中国と対立していたのです。

しかしこの度、バチカンは中国が任命していた司教7名を追認する形で正当性を認め、司教の任命方法において中国と暫定合意したと言われています。

つまり、バチカンの上に中国共産党が立ち、共産党の意図の下に選ばれた司教をローマ法王に認めさせた、ということになります。

◆バチカンと中国共産党の関係修繕は相互利益?

今回の動きには、それぞれに思惑があります。

まず、中国共産党は蔡英文政権になってから反発する台湾に対する揺さぶりです。

現在台湾と国交を持つ国は、過去最も少なくなっており、世界に17カ国のみです。台湾と国交を持つ国は、中国とは国交を持てません。

つまり、相手にとっては、中国をとるか台湾をとるかの選択になります。中国は、今年に入って3カ国を台湾と断交させました。

ヨーロッパで台湾と国交を持つのは唯一バチカンのみであり、ここに中国は揺さぶりをかけたいのです。

今回の動きに対し、台湾は警戒感を強めています。

70年以上続いたバチカンとの外交関係が近い将来、解消される懸念がでてきているからです。蔡英文総統の特使が、14日にバチカンに派遣されることになっています。

バチカンにとっても中国共産党の関係修繕は利点があります。

カトリック教会聖職者による児童への性的虐待が全世界から報告され、法王への批判が集まり求心力が落ちています。信者離れも進んでおり、組織運営に危機感が出ているのです。

中国13億人中、公認団体のカトリック信者は約600万人。このほか数倍の信徒が非公認の地下教会信者だと言われているため、一気に信者を増やすことができるのです。バチカンにとって中国市場は魅力的です。

こうしたお互いのwin‐winの関係の下、この度の関係修復と暫定合意につながったものだと考えられます。

◆追い込まれる国内の地下教会信者

現在、中国には共産党が認めた公認教会と、認められていない地下教会が存在しています。

共産党は認められていない地下教会に対してはもちろん、公認施設に対しても統制を強めています。

複数の欧米メディアが最近、中国共産党が「7000以上の十字架を破壊し、数多くの聖書を燃やした」「インターネットやfacebook YouTubeでのキリスト教関連ページを表示禁止とした」と報道しています。

さらに、カトリック教会の破壊・礼拝中の信者への暴行なども報告されており、異常なほどの弾圧がエスカレートしています。

それは裏を返せば、宗教勢力を恐れているということです。

今回の合意により、共産党はバチカンのお墨付きを得た公認団体を通して、地下教会への管理を強化し、「服従」を迫るとみられています。

バチカンから中国へ地下教会信者のリストが手渡される可能性もあります。信仰者への弾圧や拷問がさらに広がることでしょう。

カトリック香港教区元司教の陳日君枢機卿は日本国内の新聞取材に対し、「中国はバチカンを利用して、信者を攻撃するだろう。ローマ法王庁は地下教会の信者を売り渡した。とても絶望している」「信仰に対する裏切りだ」と答えています。

◆バチカンは営利団体になってはならない

さらに陳日君枢機卿は「(バチカンに行った中国司教たちは)信仰がなく、外交官だ。外交が成功し、信者をだまして喜んでいる」と言います。

中国共産党にとって宗教・信仰とは単なる外交の手段です。それを分かった上での合意であれば、バチカンも根本は中国共産党とそう変わらないのではないでしょうか。

つまりローマ法王を頂点とする聖職者たちはイエスの声が聞こえない単なる組織の運営者なのだということです。

ドストエフスキー著『カラマーゾフの兄弟』の中に登場する「大審問官」は、復活したイエスに対し、「もしもお前が本物のイエスであり、現代に復活していたとしても、本物を偽物と称し、その事実を消すために火あぶりにする。そして民衆には一切知らせず、文句なく従える対象にし続ける」との旨を伝えました。

すでに1880年に教会批判として描かれている内容です。

残念ながらバチカンは長い歴史の中で教えも曲がり、現代人を救いきれていません。前述の陳枢機卿は「国家に隷属する教会など、もはやカトリック教会ではない」と言います。

既に信仰の優位は崩れ去っているのです。残念ながらこれが現代のバチカンです。

宗教の理念は国益を超えます。宗教が国家を導く指針となることはあっても、国家運営に利用されてはなりません。

まして信者の信仰心を見捨てる宗教などあっては相ならないのです。もしもそうなり下がっているのであれば、それはもう単なる営利団体なのです。

◆宗教者の信仰心を護りたい

「われわれはどんな圧力も恐れない。良心を売り渡したりはしない」という陳日君枢機卿の言葉に象徴されるよう、信仰は命よりも重く、弾圧や拷問により捨てさせることはできません。

しかし、それを捨てさせようとするのが中国共産党であります。これは地下教会に限ったことではありません。

チベットでは、チベット仏教への大弾圧、ウイグルでもイスラム教の棄教を目的とした「再教育キャンプ」への収容を大々的に行っているのです。

私たちは宗教政党として、このような状況を黙って見ておくことはできません。

また自由と民主を愛する国民として、信じがたい人権弾圧・宗教弾圧を行う中国共産党を許すことはできません。

日本政府には民主主義国家のリーダーとし、中国における信教の自由の確立と人権擁護の促進実現のため、解決に向けた働きかけを行うことを強く望みます。

そして正しい信仰を持つ人々が、内心の自由・信教の自由を保障され、信仰者が中国において笑顔で生きていける時代を創りたいと心から願います。

【参考】
日経新聞  「バチカンの司教会議 中国人司教が初参加」 2018年10月4日
東京新聞   バチカン 中国合意 香港教区元トップが批判「法王庁は信者を売った」 
2018年9月25日
産経ニュース 中国が「地下教会の信者らに『服従』迫るのでは」 香港枢機卿、バチカンとの合意で危惧表明 2018年9月23日
産経ニュース 「中国、宗教の締め付け強化 『歴史的』合意も思惑不一致」 2018年9月23日
産経ニュース  バチカン 中国に大きく譲歩か 宗教弾圧続く中「悪いメッセージ」の懸念 2018年9月23日
ドストエフスキー 『カラマーゾフの兄弟』

みなと 侑子

執筆者:みなと 侑子

HS政経塾1期卒塾生

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