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宇宙産業ビックバン――日本の経済成長を支える100兆円産業へ【前編】

http://hrp-newsfile.jp/2018/3410/

幸福実現党 広報本部チーフ 西野 晃

◆新たな宇宙開発の潮流が始まった―世界を驚嘆させたイーロン・マスク氏

タイ北部で、洞窟に閉じ込められていた13人の少年たちが7月10日に無事救出されました。救助活動が困難を極める中、協力を名乗り出て世界中で大きな話題となった人物がいます。

アメリカの実業家、イーロン・マスク氏です。電気自動車会社のテスラモーターズ社や、国際宇宙ステーションへのロケット輸送を担っているスペースX社のCEOとしても有名です。

マスク氏が作った宇宙ロケットは、NASAが作るロケットの10分の1ほどの費用で製造されています。通常のロケットは燃料がなくなると切り離されて地球に落下しますが、スペースX社のファルコン9ロケットは回収が可能で、最低でも10回は再利用出来る設計となっています。

そのため、大きなコストダウンに成功したのです。民間企業による宇宙進出を大きく前進させたマスク氏の偉業に世界中が驚嘆しました。

このような、「New Space」とも言われる新たな宇宙開発の潮流が世界で始まっています。

◆各国で進む宇宙産業への支援体制

この大きな流れが始まったのが2005年のアメリカ政府による政策変更です。

スペースシャトルの後継機の開発を民間に任せて、NASAは一顧客として民間ベンチャーから打ち上げサービスを購入するという大転換を行いました。

国家事業から民間主導へと進み始めた事により、商機を見出した投資家や事業家達によって市場が拡大し始めます。

米国の場合、ベンチャー企業が成長出来る素地があります。例えば、冒頭のマスク氏が呼びかければ、マスク効果と呼ばれるような、多くの資金や技術者が集まります。

起業したばかりのスタートアップ企業に対して、投資会社(VC)やエンジェル(個人投資家)による支援体制が整っているからです。

宇宙ベンチャー企業への投資額も全世界で伸びており、2014年に約500億円だったのが、2016年には約3000億円へと拡大しています。

アマゾン設立者のジェフ・ベゾス氏は、自身が設立した航空宇宙企業米ブルーオリジンに毎年1000億円の投資を行うと発表しました。

欧州・ルクセンブルクは、既に巨額のリスクマネーを供給し、法整備や規制環境などを整えて企業誘致を積極的に展開中で、今年には同国初となる宇宙機関の創設を計画しています。

石油依存型経済から脱却し投資収益と知識集約型産業に基づく国家建設を目指しているサウジアラビア政府は、宇宙旅行サービスを目指す米ヴァージン・ギャラクティックに1000億円の投資を行う予定で、宇宙エンターテイメント産業を構築することも視野に入れております。

オーストラリアでも宇宙機関が発足し、今後4年間で同機関の活動や国際協力のために約45億円の予算が計上されました。併せて宇宙利用の予算として同国の地球科学局にも約288億円が割り当てられています。

◆日本経済の主力エンジンに

2018年4月のIMFによる見通しでは、世界経済の成長率は2018年・2019年共に3.9%に達する見込みです。

一方、宇宙産業の世界での市場規模は、2010年に27兆円だったのが、2016年には38兆円へと拡大しており、成長率は5年間で5%に達します。このペースで進めば2030年代には約70兆円以上に達すると言われています。

100兆円市場に向かって成長する宇宙産業ですが、同規模の市場と言えば自動車産業やIT産業など様々です。

非常に大きな経済効果を発揮する産業が新たに誕生すれば、日本の経済成長を一段と加速させるチャンスでもあるため、日本も負けてはいられません。

日本では、2009年6月に策定された「宇宙基本計画」の中で、宇宙政策を「研究開発主導から高い技術力の上に立った利用ニーズ主導に転換」することが明示されました。

それを受けて、官僚システムの中心が、文部科学省から経済産業省に移管したことによって、ベンチャー企業やこれまで宇宙と関係のなかった異業種企業の参入が本格的に加速しています。

日本の宇宙関係の国家予算は3550億円、対して米国の予算は約5兆円と10倍以上の差があります。

国内市場規模は1.2兆円となっており、各種インフラ・金融・医療・物流などと比較するとまだ小規模と言えます。

日本政府は2018年度から5年間、日本政策投資銀行や官民ファンドの産業革新機構を通じて、1000億円規模のリスクマネーを民間宇宙ビジネスに投入する方針を明らかにしました。

宇宙産業に関わる日本のベンチャー企業は現在20社程度ですが、ボトルネックであった資金調達の環境も改善されつつあります。

日本の自動車メーカーや航空事業者・玩具メーカーといった「非宇宙系企業」が、スポンサーシップやパートナーシップ等で参画するといった日本独自の動きも起こり始めています。

国債の発行などによって宇宙産業への投資を集中的に行うとともに、国は一定程度を支え、民間主導の産業振興が行われる環境整備を急ぐべきです。

幸福実現党では、高付加価値の未来産業に対して、10年以内に100兆円を投資し、振興を図ることを提案しております。宇宙産業もその一つです。日本経済の主力エンジンの一つとして期待される成長産業として積極的に取り組む必要があると考えます。

(参考)
■竹内一正「世界をつくり変える男 イーロン・マスク」
■石田真康「宇宙ビジネス入門」
■大貫美鈴「宇宙ビジネスの衝撃」
■平成29年度宇宙関係予算案について―内閣府
http://www8.cao.go.jp/space/budget/h29/fy29yosan.pdf
■宇宙産業ビジョン2030について―内閣府
http://www8.cao.go.jp/space/vision/vision.html
■世界経済見通し―IMF
https://www.imf.org/ja/Publications/WEO/Issues/2018/03/20/world-economic-outlook-april-2018
■内閣府特命担当大臣記者会見要旨―内閣府
http://www.cao.go.jp/minister/1711_m_matsuyama/index.html#press
■成功者が語る「米国ベンチャー企業の必達条件」―PRESIDENT Online
http://president.jp/articles/-/13885
■「マスクがやるなら」 リスクに乗る者たち―日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31604420R10C18A6000000/
■宇宙政策、ビジネス重視に 政府の工程表見直し―日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31816140V10C18A6TJM000/
■宇宙ベンチャー、成功する?-奥平和行編集委員―日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32489600S8A700C1I10000/

西野晃

執筆者:西野晃

幸福実現党 広報本部チーフ

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