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「開国」から「経済建設」へ舵を切った北朝鮮――日本は勇気と気概を持った外交を!【前編】

http://hrp-newsfile.jp/2018/3393/

幸福実現党 宮城県本部統括支部長 HS政経塾第5期卒塾生 油井哲史(ゆいてつし)

◆世界が動向を注視した米朝首脳会談

先月6月12日、トランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長による史上初の米朝首脳会談がシンガポールで行われました。

両首脳は、北朝鮮が朝鮮半島の完全な非核化に取り組み、アメリカが体制保証を約束するとした共同声明に署名しました。

多くのメディアでは、いつまでに、どうやって、非核化を実現するのかが盛り込まれておらず、具体性に欠けた内容だったことから、「中身がない」という厳しい反応が見られます。

果たして、合意された「朝鮮半島における完全非核化」が実現されるか、世界が動向を注視しています。

共同声明だけ見ると、トランプ大統領が譲歩して、北朝鮮ペースで進んだようにも見えます。

当初、トランプ政権側は、「『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』がアメリカの受け入れられる唯一の成果だ」と述べていました。

それにもかからず、「『板門店宣言』を再確認したうえでの、朝鮮半島の非核化」となり、非核化の具体的な方法まで踏み込まれていません。

さらに、「北朝鮮に安全の保証を与えること」という約束までしました。

◆だまされ続けてきた「北朝鮮の非核化」

これまで北朝鮮における非核化の約束は覆されてきたため、今回の北朝鮮の対応に懸念するのも理解できます。

例えば、日本、アメリカ、韓国、中国、ロシア、北朝鮮の6か国が集い、外交会議にて北朝鮮の核問題の解決に向けた六者会合があります。

2003年8月に第1回目の協議が開催され、外交交渉で朝鮮半島の非核化を目指すとともに北東アジアの平和と安定の維持について話し合われました。

2005年に北朝鮮の核放棄などを盛り込んだ共同声明を採択しましたが、翌年の2006年に核実験を強行し、世界から非難を浴びました。

その後も、2009年、2013年にも核実験を行い、ミサイル発射実験を繰り返しています。

◆トランプ政権は「2年半以内」に非核化を実現したい

だまし続けてきた北朝鮮が今回の共同声明に対して揺るぎのない約束を果たせるのか、そして、金正恩氏を信用できるのか、トランプ大統領は記者会見で問われています。

トランプ大統領はこれまでの歴史を見て、まっとうな質問であることを認め、金正恩氏を「信頼している」と答えました。

金正恩氏の強い意志を感じており、包括的な文章に沿って行動することを期待しているといいます。

さらに、トランプ大統領を支えた交渉チームが今回の成果に大きく貢献しており、彼らの活躍を評価しています。

米朝交渉の当事者であるポンペオ国務長官は、平壌で北朝鮮側の交渉責任者らと面談し、核戦力や核・弾道ミサイル開発に関連する情報の全面開示を要請するなど、非核化の詳細を詰める作業を進めています。

彼は、トランプ大統領の1期目の任期が満了する2021年1月を念頭に「2年半以内」に「完全な非核化」の成し遂げたいという期限に言及しました。

ボルトン大統領補佐官も北朝鮮が核・ミサイル施設に関する情報を完全に開示し協力するなら、「1年以内」に大部分の達成が可能との見方を示しています。

まだ、予断を許しませんが、トランプ政権は強い意志を持って、非核化を成し遂げようとしています。

◆共同宣言すら出されなかった「マルタ会談」

また、米朝会談の共同声明が具体性を欠き、不備が目立つと批判する声もありますが、「冷戦から新時代へ」と新しい世界秩序形成の節目となった1989年の「米ソ首脳会談(マルタ会談)」では首脳がそれぞれ10分間程度ずつ声明を読み上げただけで、共同宣言は出されていません。

当時の反応も懐疑的なものもあります。「共同宣言がなく、今一つ合意内容がはっきりしない印象を受ける。」「これといった具体的成果も生み出さずに徹頭徹尾、米ソ両首脳の意見交換の場になった」という意見も出ていました。

しかし、マルタ会談で世界安定化に向け幅広いテーマが話し合われた後、数次にわたる外相レベルでの準備会談を経て、翌年、本格的な米ソ首脳会談が行われました。

この首脳会談で多くの文書が合意され、署名に至り、歴史的な大転換となっています。

ジャーナリストの高野孟氏は「首脳同士が合うこと自体が、時代の貴重な一大転換を象徴するという場面はあるものであって、シンガポール会談もその1つだったと言える」と評価しています。

◆米朝会談での異例な出来事

歴史的な米朝会談では、初めから1対1の首脳会談で始まり、異例ともいえる出来事がありました。

それが、4分間にわたる「ビデオ映像」と北朝鮮メディアの「積極報道」です。北朝鮮が新たな明るい未来に向けて第一歩を踏み出したということを感じさせるのです。

次回、【後編】では、4分間にわたる「ビデオ映像」がどんな内容であったのか、そこから米朝会談の本質に迫り、日本はどうあるべきかについて述べて参ります。(つづく)

油井哲史

執筆者:油井哲史

幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生

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