米朝首脳会談――完全非核化の具体的道筋なし
http://hrp-newsfile.jp/2018/3387/
幸福実現党 外務局長 及川幸久
◆日本はトランプ大統領に頼るだけでいいのか
米朝会談の結果、金正恩委員長は非核化を受け入れ、トランプ大統領は、その見返りに金正恩体制の保証と経済繁栄の機会を約束しました。
ただ、金委員長の言葉は本当に信用できるのでしょうか。
また、日本は非核化と拉致問題の解決をトランプ大統領に依存しましたが、依存するだけではなく、日本独自でできることはなかったのでしょうか。
◆具体的内容に乏しい合意文書
今回の歴史的会談を評価するのは難しいでしょう。時間が評価を決めるからです。
昨日の米朝会談の場合は、金正恩が言葉だけでなく、行動で結果を出した時に初めて歴史的だったと言われることになるでしょう。
合意文書に、非核化の具体的内容は示されていません。非核化の手順は今後の協議に委ねられたといってもいいからです。
査察は徹底されるのでしょうか。非核化の膨大な費用は誰が払うのでしょうか。
それは、これから詰めるということですが、アメリカも国際社会も再び北朝鮮に騙される懸念が残ります。
やはり、北朝鮮の本音は、時間稼ぎなのかもしれません。
核の問題だけでなく、日本人の拉致や、北朝鮮国内にある強制収容所での非道な拷問という人権問題も大きいといえます。
トランプ大統領は会見の中で、人権問題について「長い時間をかけて話した」と触れましたが、詳細は不明です。
◆アメリカ人拉致に即動いたアメリカ議会
一年前の6月、22歳のアメリカ人大学生、オットー・ワームビアさんが、一年半に渡る北朝鮮での拘束から解放され、帰国の数日後に死亡しました。
北朝鮮の観光ツアーに参加しただけなのに、政府転覆罪による拷問で脳に損傷を受けていたのです。
この事件をメディアは連日報道し、アメリカ国民は心底怒りました。
そして、彼の死からわずか三カ月後に、アメリカ下院議会では、北朝鮮に対して過去最高の経済制裁を課す法案が可決したのです。
その名前は、「オットー・ワームビア北朝鮮核制裁法案」。
法案の趣旨は、「北朝鮮と取引をしたものは、アメリカとの取引ができなくなる」というものです。
例えば、中国の銀行や企業が隠れて北朝鮮に貿易取引をしたら、アメリカとの取引は一切行わせず、その銀行は米ドルが扱えなくなります。
アメリカは世界の基軸通貨であるドルを持っている。ドルの蛇口を締めると、どんな国も企業も生きてはいけなくなります。
◆日本の政治は拉致問題をどう扱ってきたのか
一人のアメリカ人が拉致され、死亡したことで、アメリカは北朝鮮に対して単独で制裁に出ました。
それでは、何百人の国民が拉致された日本は何をしてきたのでしょうか。
実は、拉致被害者の家族会は、日本単独でアメリカと全く同じように制裁を行うよう、何年も前から政府と政治家に求めてきました。
しかし、「日本が単独で制裁したら、北からミサイルで報復攻撃される」、「国際社会から非難される」という理由で実現しなかったのです。
日本の政治家、特に拉致問題に関係している大臣たちは、こういう言葉を使います。
「被害者とご家族の苦しみを思うと一刻の猶予も許されないという思いを共有し、この問題に最も効果的な具体策に取り組みます。」
その「取り組み」とは実際には、アメリカの国務省、国連、そしてトランプ大統領に「お願い」するだけだったのです。
◆他国に頼るしかない日本でいいのか
しかし、そのままで本当にいいのでしょうか。今こそ、日本は「自分の国は自分で守る」という大きな方針転換をすべきではないでしょうか。
北朝鮮問題の次は中国の脅威が問題になるのは必至です。平和を脅かす覇権主義に対して、日本は自由の砦でなければいけません。
そのためにも、日本は他国に頼ってばかりの姿勢を早急にやめ、自衛戦力を持つ必要があります。憲法の改正も急がねばなりません。
執筆者:及川幸久