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民間力を活かした働き方改革を!

http://hrp-newsfile.jp/2018/3346/

HS政経塾 第6期卒塾生 野村昌央

◆進む働き方改革の議論

政府は4月6日、今国会で最重要法案と位置付けていた「働き方改革関連法案」を閣議決定しました。

昨年(平成29年)3月には、安倍首相が議長を務めた「働き方改革実現会議」により、「働き方改革実行計画」がまとめられています。

この計画では「非正規雇用の処遇改善」「賃金引上げと労働生産性向上」「長時間労働の是正」「柔軟な働き方がしやすい環境整備」などの分野についての方向性が示され、現在まで様々な検討が進んでいます。

本稿では「柔軟な働き方」に注目してみたいと思います。

柔軟な働き方の主な内容は、「副業・兼業」「テレワーク」の促進です。(厚生労働省HPより)

副業・兼業を推進することで、一企業の仕事に捉われず幅広く能力を発揮し、同時にスキルアップを図りたいという労働者のニーズに応えることが目的とされています。

また、テレワークとは「情報通信機器を活用した在宅勤務」のことです。在宅での勤務を促進することで、育児や介護と仕事の両立をしやすくする目的です。

◆柔軟な働き方改革の問題点

これらの改革の、新たな働き方を提案している点については評価できるでしょう。しかし、「仕事の成果ではなく、就労時間に着目していること」に根本的な問題があるように感じられます。

これらの柔軟な働き方は、残業ゼロという考え方をベースとして、労働力を最大限活かすことを想定していますが、残業時間の規制を強化することによって生じる懸念点が2点あります。

1点目は超過した労働時間については嘘の報告をすること。2点目は残業がゼロになることによって、所得の減少が起きることです。

これを補てんするのが「副業・兼業」ということになります。企業自身の仕事の効率化がうまくいかないまま残業規制が強化されれば、被用者の所得は減少し、企業の業績も低下します。

そうなれば副業を余議なくされ、副業のために在宅勤務をしやすくするということになってしまえば、本末転倒といえるのではないでしょうか。

実際に、企業側からは「残業禁止は逆効果である」との意見も出ています。

◆民間の努力によってこそ多様な働き方ができる

働き方改革については、民間の努力によって成功している例もあります。

例えば、病院です。病院では、医師や看護師の地域偏在による人手不足に悩まされていますし、そもそも女性職員が多いため、一人一人の職員の事情に合わせた働き方のニーズに応えなければなりません。

そこで、フルタイム勤務のほか、就労時間帯や短時間勤務の要望に応えることで子育て中の女性医師が働きやすい環境を整えている病院も増えています。

短時間勤務を利用してもらうことが、子育てが落ち着けばまた戻ってきやすい環境にもなっています。

さらには、こうした働き方に対する周囲の職員の理解も重要です。職員のスキルアップの機会や、能力を発揮する機会を多く設けていくことで、働きやすい環境と同時に、働きがいのある環境も整える工夫がなされています。

◆規制緩和から民間の力を活かした働き方改革を

また日本の労働法は、正社員の解雇に対する規制が強くなっています。

しかし、この正社員の保護が、正社員として雇うことを企業に躊躇させている面もあるのではないでしょうか。

過去記事『「仕事は幸福」という価値観に立脚した労働法制を!』参照
http://hrp-newsfile.jp/2015/2108/

奴隷的な過重労働は無くしていかなくてはなりません。

しかし、一日8時間労働という言葉に囚われて一律に残業を無くし、経済を衰退させかねない本末転倒の規制強化を行うのではなく、様々な雇用形態を促進し、雇用の流動性を高めていくなかに働きやすい社会が実現されていくのです。

【参考資料】
厚生労働省HP「柔軟な働き方に関する検討会」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-roudou.html?tid=482129

野村昌央

執筆者:野村昌央

HS政経塾6期生

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