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国家ビジョンの策定に向けて――(1)「将来不安」を根本的に払しょくするための成長戦略を

幸福実現党政務調査会・成長戦略部会部会長・HS政経塾4期卒塾生 西邑拓真

◆はじめに

1月8日は、成人の日です。

新たに成人の日を迎える皆様に、心よりお祝い申し上げます。

大切に育てていただいたご両親へのご恩を胸に、新成人の皆さんが、これから社会人として大きく飛躍されることを、心からお祈りしております。

◆「アベノミクス景気」に実感はあるか

昨年12月、第二次安倍政権の発足から5年が経過しました。

政権発足時に始まった景気の回復基調の長さは、昨年9月に58カ月となり、戦後2位の「いざなぎ景気(65年11月~70年7月)」越えを果たしています。

しかし、「アベノミクス景気」に生活実感が伴っていると言えるのでしょうか。

平成28年の「国民生活基礎調査(厚生労働省)」によると、生活意識について全世帯のうちの57.2%と半数以上が「大変苦しい」または「やや苦しい」と答えており、昨年10月の実質賃金(「毎月勤労統計調査(厚生労働省)」)は前年同月比-マイナス0.1%を記録しています。

一部では「結婚はぜいたく品だ」とも言われるようになりましたが、こうした傾向は、少子高齢化をさらに加速させる可能性を有します。

したがって、「いかにして実感のある景気回復を果たしていくか」ということが重要となります。

◆ゼロ成長からのテイク・オフに必要な「将来不安の払しょく」

実感ある景気回復に向けて大きなカギを握るのは、「個人消費」の拡大です。

昨今の円安基調による影響で、輸出関連企業を中心に企業収益は好調を持続していますが、日本経済の6割を占める個人消費がここ数年伸び悩んでいます。

では、何が消費を停滞させているのでしょうか。その要因としてまず挙げなければならないのが、消費増税です。

幸福実現党は、経済への悪影響を懸念して消費増税の中止を声高に訴えていましたが、2014年4月に消費税率が引き上げられ、その結果として日本経済に大きなブレーキがかけられることになりました。

他の要因として、先ほど述べた「実質賃金」の水準に改善傾向が十分に見られないこともあります。さらに、もう一つ「将来に対する不安」も挙げることができるでしょう。

「あなたは、自分の将来について明るい希望を持っていますか」という問いに対し、「希望がある」と答えた各国の若者は、アメリカが91.1%、ドイツは82.4%、韓国では86.4%にそれぞれ達していますが、日本の値は61.6%にすぎず諸外国と比較しても低い水準となっています。

最近、「バブルを経験していない若者は、消費に関して堅実な傾向がある」とも言われていますが、確かにバブル期の30-34歳の1989年の可処分所得に占める消費の割合(すなわち「消費性向))は80%台後半にあったとされていますが、2014年時点で、同年代の消費性向は73.8%となっています。

これは各時代における将来に対する認識が、消費行動に影響を与えている一例と言えます。

では、どうすれば「将来に対する不安」を払しょくすることができるのでしょうか。

これに関し、吉川洋氏は、17年12月1日付日本経済新聞の「経済教室」欄にて、「政府が責任ある税・社会保障プランを明示する必要がある」とする旨を述べています。

確かに、年金制度などを含めて先行きが見通せない今の社会保障制度が、一定程度、国民の不安を呼び込んでいる面は否定できないでしょう。

しかし、HSU経営成功学部の西一弘アソシエイト・プロフェッサーは、「低成長が続いたまま『充実』した社会保障を確立させた場合、将来的に大増税が実行されることが予測され、結局は国民の間で将来不安が消えることはないのではないか」と述べています。

吉川氏の主張には、こうした観点が欠けているのではないでしょうか。

◆日本の「未来」を築く成長戦略を

アメリカでは、法人税や個人所得税の減税といった「トランプ減税」法案が成立し、現在、アメリカの株価も軒並み上昇しています。トランプ大統領は、先月13日、「米経済に新たな奇跡が起きようとしている」と述べており、経済成長率が年4%を超える可能性について言及しています。

一方、日本では給与所得の縮小やたばこ税の増税、「出国税」といった新税の導入など、「増税ラッシュ」が見られます。

2018年の日本経済は、好調な米国経済の恩恵を受ける面が大きくなると予想される向きもありますが、場合によっては日本の増税路線がゼロ成長からのテイク・オフの機会を損失させることにもつながりかねません。

やはり、「超高齢社会の到来の下、確かな社会保障制度の構築のためには、増税は行って然るべき」とする論調に待ったをかけるべきです。

幸福実現党はリニア新幹線を含めた「新幹線網改定案(注)」を発表していますが、将来の先行き見通しを明るくするためには、こうしたインフラ整備のほか、大胆な減税や徹底的な規制緩和、新しい基幹産業の創出、多数の有力な起業家輩出などに向けた、明確な未来ビジョンの策定が必要です。

日本は今、「低成長やむなし」といった前提を排し、マインド・セットを変えた上で、日本の未来を明るくする国家ビジョンについて、根本議論する必要があるのではないでしょうか。

(注)幸福実現党「2017年10月主要政策集」(p.21)参照
(http://publications.hr-party.jp/files/policy/2017/012/origin/all.pdf)

(参考)
吉川洋, 日本経済新聞2017年12月1日付「アベノミクス5年(中)消費回復へ将来不安払拭を 税・社会保障の将来像を示せ」
吉川洋他, 日興リサーチセンター2017年10月30日「低迷する消費」

西邑拓真

執筆者:西邑拓真

政調会成長戦略部会

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