このエントリーをはてなブックマークに追加

中東情勢の影響受ける北朝鮮包囲網

http://hrp-newsfile.jp/2017/3182/

幸福実現党 政調会外交部会 副部会長・彦川太志

先月より、北朝鮮に核兵器開発を放棄するよう、圧力をかけていた米トランプ政権ですが、5月は中東情勢の変化や韓国大統領選等の様々な問題に直面し、難しい舵取りを余儀なくされていました。

今回のニュースファイルでは、トランプ政権が直面していた「北朝鮮包囲網の切り崩し」と、日本外交に求められる役割について解説したいと思います。

◆イランが巡航ミサイルを発射――米国に与えたインパクトとは

朝鮮半島を巡る軍事的緊張が高まっていた5月2日、紅海で突如イラン海軍が潜水艦から巡航ミサイルの発射試験を実施し、各国の注目を集めました。

米FOXニュースの報道によれば、ミサイルを発射した潜水艦は、2010年に韓国の哨戒艦「天安」を撃沈した北朝鮮の潜水艦、ヨンオ級と同型であった事が報道されています。(※1)

ミサイル発射試験自体は失敗だったようですが、同艦は北朝鮮から技術供与を受けてイランが生産している事で知られています。

翌5月3日に米国が「ミニットマンIII」ICBMの発射試験を実施(※2)している事を考えれば、「北朝鮮製の潜水艦がミサイルを発射した」という出来事が、トランプ政権に与えたインパクトの大きさを図ることができるのではないでしょうか。

事実、FOXニュースの記事末尾には、北朝鮮が過去、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の発射試験に成功した事実が触れられており、この行間から「SLBMを発射可能な潜水艦技術も、北朝鮮からイランに渡っているのではないか」という懸念が暗に示されていると考えられます。

イランのミサイル発射をきっかけに、米国は北朝鮮ばかりかイランの問題にも直面し、アジアと中東を両睨みとする難しい舵取りを強いられる事となったのです。

◆イラン牽制を狙い、中東・ロシアとの関係を強化したトランプ大統領

しかし、トランプ大統領の優先順位はあくまで「北朝鮮に核・ミサイル開発を放棄させる事」にありましたので、イランに対しては中東諸国やロシアを巻き込んだ外交的圧力で対応する事を選択しました。

まず中東に対しては、トランプ大統領は5日、5月下旬からサウジアラビアやイスラエルなどを歴訪する事を発表し、イランの外交的孤立を意図しました。

サウジ紙の報道でも、トランプ氏が湾岸諸国(GCC)と共にイランやテロリズムの問題について討議する予定を伝えている(※3)ほか、イラン系メディアなどは明確に「トランプ氏の狙いはイランを孤立させること」だと反応しています(※4)。

また、中東諸国との関係強化に平行して、トランプ政権はロシアとも連携しようとする動きを見せています。

具体的には、イランが巡航ミサイルを発射した当日、トランプ大統領はプーチン大統領と電話会談を行ったほか、10日にはロシアのラブロフ外相と会談を行い、露外相に対して「ロシアがシリアやイランを制御するべき」だと力説した事が伝えられています(※5)。

◆得をしたのは北朝鮮、そして中国

以上のように、トランプ大統領は5月2日から約一週間に渡ってイラン問題にエネルギーを費やす事となりましたが、これで「得をした」のは間違いなく北朝鮮と中国です。

この間、韓国では「韓半島での軍事行動は、韓国の同意なしに実行することは不可能だ」と公言する(※6)、北朝鮮に融和的な文在寅政権が誕生しており、北朝鮮にとって有利な状況が生まれました。

この文政権に対し、中国はTHAADミサイルの配備撤回を働きかける(※7)一方、経済面では「一帯一路」会議への参加を急遽呼び掛ける(※8)ことで、北朝鮮包囲網からの韓国の切り崩しを図っています。

さらに、最近では10日のラブロフ外相との会談をめぐり、トランプ大統領に「機密情報漏洩疑惑」が浮上しておりますので、内政問題にトランプ大統領のエネルギーが削がれていくことが予想されます。

◆「北朝鮮包囲網」切り崩しを阻止せよ!日本に求められる役割とは

このような状況を見る限り、米国の北朝鮮包囲を、米国の内外から切り崩そうとする何者かの意図が働いていることは明確だと言えます。

北朝鮮の核ミサイル開発を巡る状況が長期化・複雑化するほど、日本の安全保障環境は悪化していきます。我が国としては米国が北朝鮮問題の解決に集中できるよう、外交・安保面からサポートを行うことが重要です。

具体的には、自衛隊に敵地攻撃能力の保有認めつつ、米軍の連携を緊密化させて行くことはもちろん、韓国を北朝鮮包囲網から脱落させないこと。そして米国のエネルギーが中東情勢に吸い込まれないよう、中東におけるロシアの役割を重視していくことだと考えます。

<参考・出典>
(※1)2017/5/3 FOX NEWS 「Iran attempted missile launch from submarine, US officials say」 
(※2)2017/5/3 Air Force Global Strike Command 「MALMSTROM TESTS MINUTEMAN III MISSILE WITH LAUNCH FROM VANDENBERG」
(※3)2017/5/7 Saudi Gazette 「The focus in the US -GCC summit would be the file of Iran and confronting the potential threats posed by it to regional security.」
(※4)2017/5/5 Pars Today 「トランプ大統領、初の外遊でサウジアラビアとイスラエルを訪問」
(※5)2017/5/10 White House 「Readout of President Donald J. Trump’s Meeting with Foreign Minister Sergey Lavrov of Russia」
(※6)2017/5/12 Tehran Times 「Trump’s North Korea policy just got more complicated」
(※7)2017/5/10 環球時報 「社评:希望文总统对改善中韩关系有所作为」
(※8)2017/5/12 NewsWeek 「韓国文大統領「一帯一路」会議へ代表団派遣 習近平が急きょ招待」

■5/26(金)19時~ 幸福実現党政調会・外交部会 特別セミナー開催!

テーマ:「韓国・文在寅新政権誕生後の半島情勢について」質疑応答

場所:ユートピア活動推進館3F大会議室  東京都港区赤坂2-10-8
会費:1000円(持ち帰り資料あり)
主催:幸福実現党政調会 外交部会
講師: 同 副部会長 彦川太志(HS政経塾一期生)

■お申し込み・お問い合わせ
ご参加のお申し込みは、【お名前】、【電話番号】、【所属支部(任意)】を明記の上、下記までメールをお送りください。

※件名に「5月26日セミナー希望」とご記入ください。
担当:彦川太志 【victory777dh@gmail.com】

彦川 だいし

執筆者:彦川 だいし

HS政経塾第1期卒塾生/党政調会・外交部会

page top