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世界第2位の農産物輸出国オランダに学ぶ

http://hrp-newsfile.jp/2017/3155/

幸福実現党 宮城県本部代表 HS政経塾第5期卒塾生 油井哲史(ゆいてつし)

◆国際交渉の大きなテーマである「農業」

地方経済の核である「農業」は、国際交渉における大きなテーマとなっています。

米国が離脱した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に関して政府は、米国抜きによる協定発効を模索する方向で舵を切りましたが、農産物の関税が争点の的となっていました。

一方、米国のトランプ大統領はTPPからの離脱を宣言し、二国間の自由貿易協定に向けた協議を加速しており、日本へ更なる市場開放を求めています。その際の注目する市場として、農業分野をあげています。

◆日本の農業分野に市場開放を迫る米国

米国は農産物輸出国であり、多くの農業関係者や団体はTPPによる日本の市場開放を期待していただけに、TPPからの離脱は大きな波紋を呼び、落胆や懸念を表明しました。

米国食肉輸出連合会は「TPPを完全に受け入れてきた。市場アクセス利益が実現しなければ、深刻な競争不利状況が残る」と表明。

米国小麦協会と全米小麦生産者協会は「競争相手にTPP地域の市場シェアを奪われる」と懸念を示し、他の農業関係団体も反対のコメントを発信しています。

これらの意見を受けて、トランプ大統領はTPP交渉以上に農産物輸出の拡大に向けた市場開放を求めることが予想されます。

米通商代表部(USTR)代表に指名されているライトハイザー氏は、米議会上院の公聴会で農業分野の市場開放について「日本が第一の標的になる」としています。よって、日本はそれに立ち向かうためにも、農業の国際力強化は必須事項であります。

◆世界第2位の農産物輸出国オランダに学ぶ

農業の国際競争力を強化するためにオランダから学ぶべきです。なぜなら、オランダは日本の九州とほぼ同じ国土と人口ですが、世界第2位の農産物輸出国です(日本の農産物輸出額第60位)。

このように世界を代表する農産物輸出国になった背景として国の農業政策における明確なビジョンがあったことと具体的な戦略を実践したことがあげられます。

オランダは1950年代に政府や産業が協力して土地の集約化に取り組みました。

農家1戸当たりの耕地面積は27ヘクタール(日本は2.3ヘクタール)となり、生産性は飛躍的に向上しました。

また、国家プロジェクトとして食品や農業に関連する企業や研究機関、食や農の関連組織の一大集積拠点(フードバレー)を整備し、産官学の連携で情報や人材交流を進め、新商品開発や新しい付加価値を生み出すことに成功しています。

世界の農業科学分野において大きな存在感を示すとともに高い競争力を保持し、高度専門人材の育成にも繋がっています。

さらに、1990年代に今後10年で「世界で競争力を有するべき産業」を選定し、その筆頭に「施設園芸」が掲げられています。

この中で、国家戦略作物として主要生産品目(トマト、パプリカ、キュウリ、ナス等)を選出し、研究開発を集中していきました。その結果、これらの商品競争力は世界トップレベルです。

◆農業の仕事はオフィスで経営管理すること

オランダの農業は最先端分野に位置づけられています。

経営コンサルタントの大前研一氏はオランダの農業は農業を経営することであり、農業の仕事はオフィスで経営管理していると分析しています。

その主な業務内容として従業員の指導、労務管理、コスト管理、生産管理、販売管理などであり、このようなスキルは一般的な企業経営と同じです。

パソコンで気温や湿度、生育状態、集荷状況やコストなどモニタリング、データ管理しているのです。

◆農業は最先端分野/スマート農業、農業×「カイゼン」

実際に今の農業は様々な最新技術が導入されています。これまでの匠の技が情報通信技術によって、「見える化」され、他の農業者や新規参入者に継承されています。

また、農業ロボットや農業用ドローン、自動運転の農機などロボット技術や情報通信技術を活用し、省力化や高品質生産を進める新しい農業としての「スマート農業」が注目を集めています。

産業との協業も進んでおり、長野県はトヨタ自動車と連携し、農業の効率化を図っています。

トヨタが自動車製造で培った「カイゼン」のノウハウを農業に転化して作業を効率化する事業が進行しており、すでに導入実績がある愛知県の農業法人では労働時間が15%、苗の作りすぎも3割も削減する成果をあげています。

このように農業は時代の流れに合わせて高度化し、変化しています。産業と農業の連携は進み、新しい付加価値を生みだしています。

日本の農業の「伸びしろ」は大きい。農政改革を推進させることで、さらに農業は魅力あふれる産業になり、地方経済も活性化していくのです。

政府が先導役となり農業の最先端化や産官学連携を強化させて、国際競争に負けない強い農業を作っていくことが求められています。

【参考】
野村アグリプランニング&アドバイザリー 佐藤光泰「地方創生に向けた『地域型農業輸出モデル』の構築」2015.10
大杉武博 「米農業団体は猛反発、新体制の本格始動は半年後・・・「トランプ流」通商政策の今後を読み解く3つのカギ」産経WEST2017.1.30
大前研一 大前研一の特別講義「『スマートアグリ』の最前線」「温室よりもPC操作。オランダ農業がスマートアグリである理由」 2016.9.7
朝日新聞2017.3.15 WEB版
日本経済新聞2017.4.5 WEB版

油井哲史

執筆者:油井哲史

幸福実現党・宮城県本部副代表 HS政経塾5期生

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