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緊迫する朝鮮半島情勢を読むーートランプ外交と日本の指針

http://hrp-newsfile.jp/2017/3153/

幸福実現党政調会・外交部会 彦川太志

◆緊張高まる朝鮮半島

4月初旬の米中首脳会談後、トランプ政権が空母打撃群を朝鮮半島沖に派遣する決定を行ったことで、北朝鮮情勢を巡る緊張が高まっています。

国際社会の注目は、北朝鮮が通算6度目となる核実験を強行するかどうか。また、トランプ大統領がこのような挑発に対して「先制攻撃」をも視野にいれた軍事行動に踏み切るかどうかという点に集まっていましたが、 15日時点では、両国の間に大きな衝突は見られませんでした。

まるで米ソ冷戦の「キューバ危機」を思わせるような緊張状態ではありますが、様々な報道から分析すると、今回の空母打撃群派遣等のトランプ大統領の強行姿勢は、「北朝鮮やその支援国である中国を交渉のテーブルにつかせるプレッシャー」としての側面が強かったようです。

◆トランプ大統領の強行姿勢に対する、各国の反応

例えば、ロシアのタス通信は、AP通信の記事を紹介する形で、「米国は軍事的手段による北朝鮮の非核化は行わない」とする記事を掲載しました。(※1)

その論点としては、以下の通りです。

・米国の最終目標は「北朝鮮の非核化」にあり、これを実現するため、北朝鮮最大の交易パートナーである中国をも巻き込んだ形で、北朝鮮にプレッシャーを与える。

・もし北朝鮮が核・ミサイル実験を実施するならば、これを主導した人物に対する国連の経済制裁を中国・ロシアと共に実施していく。

・米国が軍事的手段に訴えるのは、韓国や日本、米国自身に対して攻撃が行われた時である。

以上のような内容です。

◆「北朝鮮の非核化」で一致した、米露外相の認識

そのような見方を裏付けるかのように、4月12日に開催された米露外相会談においては、「北朝鮮の非核化」で両外相の見解が一致したことが報道されました。(※2)

「史上最低の米露会談」とも評される、ティラーソン国務長官とラブロフ外務大臣による外相会談でしたが、両国の主張がすれ違っているのはシリアのアサド政権の扱いの問題に関してであり、北朝鮮問題に関しては利害が一致している様子が浮かび上がったと言えるでしょう。

◆「北朝鮮の非核化」への同意を迫られる中国

一方、米中首脳会談の直前、トランプ政権は記者発表を通じて北朝鮮問題解決に向けた「答え」の一つを提示しています。

具体的には、「北朝鮮問題を平和的に解決したければ、同国の対外貿易の90%を占める中国が影響力を行使すべきである」と言う政府高官の発言です。(※3)

既に平壌行きの中国航空便が17日から全便停止(※4)となっていますので、トランプ政権が目論んでいる通り、中国をも巻き込みつつ、「北朝鮮の非核化」が進められようとしているのかもしれません。

そうした状況を反映してか、中国政府系メディアである「環球時報」の英字版、「Global Times」において、「中国の関与があれば、北朝鮮は核を放棄しても危険にはならない」とする論考が掲載されました。(※5)

北朝鮮に対して経済的影響力を行使し、核ミサイル開発の放棄へ誘導しようとしている、中国政府の様子が垣間見えるのではないでしょうか。

◆冷静かつ大胆、「二つの武器」を駆使するトランプ外交と歩調を合わせるべき

以上のような観点を踏まえれば、空母打撃群の派遣を中心としたトランプ大統領の決断が、単なる軍事的冒険主義でない事は明らかです。

ロシアや中国を巧みに巻き込みつつ、軍事・経済の「二つの武器」を駆使して北朝鮮の暴走に歯止めをかけようとするトランプ大統領の手腕には、学ぶべき点が多くあります。

北朝鮮の「暴発」による偶発的戦争の危機に備えるためには、自衛権の行使に関する憲法解釈を変更し、主権国家として国民を守るための当たり前の行動ができるよう、法整備を進めていくことが重要でしょう。

北朝鮮のような全体主義国の「脅し」に屈しないためには、軍事力における優越はもちろん、時には先制攻撃も辞さない「気概」を示す事が重要となります。

同時に、中国に進出した日本企業の「国内回帰」を促す経済政策を講じることを交渉の材料として、中国を北朝鮮包囲網の形成に巻き込んで行くよう、米国と歩調を合わせていくべきだと考えます。

(※1)AP: США не будут применять военные методы для денуклеаризации КНДР
(AP: US will not use military methods to denuclearize DPRK)
(※2)2017/4/12 TASS Lavrov-Tillerson meeting round-up
(※3)2017/4/4 Whitehouse Background Briefing by Senior Administration Officials on the Visit of President Xi Jinping of the People’s Republic of China
(※4)2017/4/14 時事通信 中国航空大手、平壌便の運航停止=経済的圧迫の見方も
(※5)2017/4/13 GlobalTimes With China’s help, it is not dangerous for DPRK to abandon nuclear weapons and open up

彦川 だいし

執筆者:彦川 だいし

HS政経塾第1期卒塾生/党政調会・外交部会

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